レコーディング定番モデルと最新モデルがガチンコ対決!
【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ペルーソP-87
【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ペルーソP-87
2017/12/15
倍音成分が強調された音楽的なトレブル感が持ち味
ペルーソ
P-87
¥148,000
㈱エレクトリ
TEL:03-3530-6181
http://www.electori.co.jp
試奏:原 朋信(カフェオレーベル)
定番モデル解説:篠崎恭一(SLOTH MUSIC)
本機はノイマンU87を再現したというモデルですが、現行のU87Aiよりも世代の古い、初期型のモデルをベースに開発されているそうです。私の手元にはビンテージのU87がないので音質を比較することはできませんでしたが、現行のU87Aiと比べてみました。実際に音を聴いてみると、U87Aiよりも少しトレブリーな印象がありました。しかし、このトレブリーさこそU87らしさを特徴付ける最も重要なポイントで、楽器や歌の中~高域が安定して前に出てきます。
それは、たんに高域をEQで持ち上げたような音ではなくて、各パートの倍音成分が美しく強調されている、きらびやかなのに痛くない、音楽的なトレブリー感なのです。この質感こそ、他の追随を許さないU87の真骨頂と言えるポイントで、今回チェックしたP-87もその特徴を見事に表現しています。
声の倍音が低音から高音まで常に気持ち良く聴こえてくるので、ボーカリストは自分の声の倍音成分を容易にコントロールできるでしょう。つまり、感じるままに自由自在に表情を付加することができるのです。試奏をしていて思ったのですが、もしかしたら本機は、本家の現行モデルよりもU87らしい仕上がりになっているのではないでしょうか。それほど完成度の高いマイクです。
【製品概要】
「P-87」は、アメリカの新進マイクメーカーであるペルーソが、世界中のスタジオでボーカルレコーディングに使われている名器「ノイマンU87」のサウンドを再現することを目指して開発したコンデンサーマイクだ。大口径のダイアフラムを搭載し、シンガーやプレイヤーの繊細なニュアンスを損なわずに、ナチュラルなサウンドで収音することができる。
定番モデル「ノイマンU87」の特徴
ソリッド感とウォーム感のバランスがいい世界的にスタンダードな名マイク
1928年に誕生し、世界で初めてコンデンサーマイクを量産したノイマン社が1967年に発表して以来、世界中のスタジオの定番としての地位を築いているのがU87です。生産時期によって様々なモデルがあり、音質も微妙に異なりますが、共通しているのは「ソリッド感とウォーム感の絶妙なバランス」であり、どんなプレイヤーのどんな楽器でも、後から処理のしやすい「いい音」で録れるのが特徴です。それゆえに、数多くのエンジニアが愛用し続けています。
実際、エンジニアが初めて録るアーティストに対して、まずU87をセッティングしてチェックをし、これを基準にして「ウォームな方向か、ソリッドな方向か」で他のマイクを選ぶというシーンも多々あるなど、まさにマイク界きってのリファレンス(基準)と呼べるのが、このU87なのです。
用途も多彩で、ボーカルでの使用が一般的ですが、ドラムのトップやアンビエンス、アコギなど、大音量のアンプの前などでなければ、様々なソースで使うことができます。
U87は様々なパートで使用されるが、男女問わずボーカル録音で使うことが多い
ギターアンプから少し離した位置に立てて、ブース内の部屋鳴りを収音しているところ。このマイクで拾った音をオンマイクの音に混ぜて、空気感を足す
定番モデルはどうして長きにわたり愛され続けているのか?
定番モデルと後継・復刻モデルを紹介する前に、プロのスタジオではどうして「定番」と呼ばれる機材が必ず導入されているのかについて考察してみましょう。エンジニアとしてだけでなく、プログラマーやPAエンジニアとしても活躍している篠崎恭一さんが、わかりやすく解説してくれました。
定番モデルは音が良くて、操作性が非常にシンプルなんです
クオリティの高いサウンドでレコーディングやミックスを行なうことができるプロのスタジオは、部屋の鳴りや導入している機材など、それぞれに個性や違いがありますが、その反面、どのスタジオにも定番の機材というものが置いてあります。定番となりうるその理由は様々あるのですが、まず何と言っても「音がいい」というのが大きなポイントとして挙げられます。例えば、マイクならシュアSM57やAKG C414、ノイマンU87、マイクプリならニーヴの1073、コンプでしたらユニバーサル・オーディオの1176あたりは、まさにド定番です。
それらの定番機材を使えば何もかも音が良くなるという訳ではありませんが、「この楽器をこの機材に通した音が最高」という実例が非常に多いのです。
スピーカーやヘッドホンなどのモニタリング機器に関しては、聴いて楽しい音でなく、演奏やミックスの時にリズムや帯域が見えやすい、フラットな音を持つものが使用されます。代表的なものは、スピーカーではヤマハNS-10M、ヘッドホンではソニーMDR-CD900STなどで、それらを置いていないスタジオを探す方が難しいほどです。
また、定番になりうるもうひとつの理由として、「操作性が非常にシンプル」という点も挙げられます。プロのスタジオは時間単位で使用料金が加算されるので、手早く音を作れるというのも実は重要なポイントなのです。また、シンプルな操作性は、多くのエンジニアが出入りするスタジオにおいて、誰でもすぐに使えるというメリットもあります。
定番機種は、そのような理由で需要が高く、姉妹品や後継・再現モデルの他に、プラグインも出ているので、今では宅録環境でも導入しやすくなっています。また、「シンプルで音がいい」というのは、宅録においても大きなメリットです。定番モデルや後継モデルの導入は、プロのサウンドに近づくための一番の近道と言えるでしょう。
手前はギターアンプの録音で必ずと言っていいほど使用されるシュアSM57(ダイナミックマイク)。奥は、アンプやアコギ、ドラムのオーバートップなどでも使われるAKG C414(コンデンサーマイク)だ
左のシュアSM57と並んでギターアンプのレコーディングで使用される、ゼンハイザーMD421(ダイナミックマイク)。アンプ以外にもスネアやタムなど、ドラムでも使うことが多い。通称「クジラ」と呼ばれている
世界中のスタジオでボーカルレコーディングに使用されている、ノイマンU87というコンデンサーマイク。非常に幅広い帯域を捉えることができ、シンガーやプレイヤーのニュアンスを余すことなく収音できる
こちらもモニタリングでは定番の密閉型ヘッドホン、ソニーMDR-CD900ST。ギターやキックなどの音の立ち上がりがとても速く、リズムに合っているかどうかの判断がしやすいため、特にミュージシャンが歌や楽器をレコーディングする際に使用される
上はユニバーサル・オーディオ1176(コンプ)。世の中に流れている音楽で、これを通していないものはないと言っても過言でない定番機だ。下はニーヴ1073という、これまたスタジオではスタンダードなマイクプリ。もともとはコンソールに組み込まれていたが、マイクプリ部を抜き出して使っている場合が多い
世界中のスタジオにセットされているヤマハのモニタースピーカーNS-10M。周波数特性がフラットで、音楽を制作するうえで不要な味付けがない
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