レコーディング定番モデルと最新モデルがガチンコ対決!
【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ウェス・オーディオBeta 76
【定番機の後継モデルと復刻モデルをレビュー】ウェス・オーディオBeta 76
2017/12/17
名器1176になかった機能を加えた、まさに現代版1176
ウェス・オーディオ
Beta 76
¥185,000
㈱アンブレラカンパニー
TEL:042-519-6855
http://umbrella-company.jp/
試奏・定番モデル解説:篠崎恭一(SLOTH MUSIC)
今回、試奏を行なったBeta 76は、見た目がほとんど1176と同じなのですが、機能面ではモダンモードとビンテージモードの切り替えができたり、サイドチェイン・フィルターを搭載するなど、オリジナルにはない機能が充実しています。
操作性はオリジナルの1176と同じく非常にシンプルで、レシオの選択肢と比率もオリジナルと同じです。アタックとリリースのタイムも、ツマミの数字が大きくなるほど早くなるというオリジナルの仕様をそのまま継承しています。
サウンド面に関しては、内部回路を設計し直しているためか、オリジナルの1176よりも現代的で、クリーンなサウンドになっているような印象です。少しサチュレーションが生じにくいような感じもありますが、そのあたりは現代のノイズレスな音作りに対応した仕様になっているのでしょう。
コンプ感自体はオリジナル同様に非常にナチュラルで、強烈にコンプレッションさせてもそれほど違和感は感じませんが、音がしっかりと前に張り出してくるようなニュアンスは、オリジナル1176と同じで、存在感のあるサウンドがすぐに作れました。歴史的名器を現代的にアップデートした、非常に使いやすいコンプです。
【製品概要】
「Beta76」は、ウーレイ1176に多くのモディファイを加え、さらにオリジナルにない機能を追加したモデルだ。モダン/ビンテージモードの採用により、音作りの幅が大幅に拡張。また、60Hz、90Hz、150Hzという3つの周波数で切り替えられるサイドチェイン・フィルターの搭載により、特定の帯域のみにコンプ効果をかけることが可能だ。
定番モデル「ウーレイ/ユニバーサル・オーディオ1176」の特徴
「これを通していない曲はない」と言われるほどの定番コンプレッサー
1967年の発売以来、世界中のスタジオの中心に鎮座し続け、現代のポピュラーミュージックでこのコンプを通していない曲はないと言われるほどの定番機が、ウーレイ/ユニバーサル・オーディオ1176です。
この機種が定番となり得ている理由は、音の張り出し感の強さと、絶妙なコンプレッション感にあります。操作性もシンプルで、レシオの設定は4通りしかありませんし、スレッショルドもありません。また、非常に早いアタックタイムを持つのも特徴のひとつです。1176を通すだけで、音が前に出て存在感のあるサウンドになります。また、回路設計上の理由で生じるサチュレーションが味わい深く、それが音に絶妙な味付けをして存在感を際立たせてくれます。なお、個体差が大きいので、自分の1176を持ち歩くエンジニアも少なくありません。
また、有名な裏ワザとして「レシオ全押し」があります。この設定にすると強力かつ素晴らしいコンプレッションとサチュレーションが得られ、もはや裏ワザと呼べないほどの定番手法として定着しています。
上から2&3段目の銀の2台がウーレイ1176、下の黒い2台がユニバーサル・オーディオ1176。ウーレイというのはユニバーサル・オーディオのブランドで、時期によってブランド名が異なる。なお、一番上はステレオ仕様のウーレイ1178だ
こちらはユニバーサル・オーディオ1176の現行モデルだ(¥218,000、問:フックアップ TEL:03-6264-1213 http://hookup.co.jp/)
定番モデルはどうして長きにわたり愛され続けているのか?
定番モデルと後継・復刻モデルを紹介する前に、プロのスタジオではどうして「定番」と呼ばれる機材が必ず導入されているのかについて考察してみましょう。エンジニアとしてだけでなく、プログラマーやPAエンジニアとしても活躍している篠崎恭一さんが、わかりやすく解説してくれました。
クオリティの高いサウンドでレコーディングやミックスを行なうことができるプロのスタジオは、部屋の鳴りや導入している機材など、それぞれに個性や違いがありますが、その反面、どのスタジオにも定番の機材というものが置いてあります。定番となりうるその理由は様々あるのですが、まず何と言っても「音がいい」というのが大きなポイントとして挙げられます。例えば、マイクならシュアSM57やAKG C414、ノイマンU87、マイクプリならニーヴの1073、コンプでしたらユニバーサル・オーディオの1176あたりは、まさにド定番です。
それらの定番機材を使えば何もかも音が良くなるという訳ではありませんが、「この楽器をこの機材に通した音が最高」という実例が非常に多いのです。
スピーカーやヘッドホンなどのモニタリング機器に関しては、聴いて楽しい音でなく、演奏やミックスの時にリズムや帯域が見えやすい、フラットな音を持つものが使用されます。代表的なものは、スピーカーではヤマハNS-10M、ヘッドホンではソニーMDR-CD900STなどで、それらを置いていないスタジオを探す方が難しいほどです。
また、定番になりうるもうひとつの理由として、「操作性が非常にシンプル」という点も挙げられます。プロのスタジオは時間単位で使用料金が加算されるので、手早く音を作れるというのも実は重要なポイントなのです。また、シンプルな操作性は、多くのエンジニアが出入りするスタジオにおいて、誰でもすぐに使えるというメリットもあります。
定番機種は、そのような理由で需要が高く、姉妹品や後継・再現モデルの他に、プラグインも出ているので、今では宅録環境でも導入しやすくなっています。また、「シンプルで音がいい」というのは、宅録においても大きなメリットです。定番モデルや後継モデルの導入は、プロのサウンドに近づくための一番の近道と言えるでしょう。
手前はギターアンプの録音で必ずと言っていいほど使用されるシュアSM57(ダイナミックマイク)。奥は、アンプやアコギ、ドラムのオーバートップなどでも使われるAKG C414(コンデンサーマイク)だ
左のシュアSM57と並んでギターアンプのレコーディングで使用される、ゼンハイザーMD421(ダイナミックマイク)。アンプ以外にもスネアやタムなど、ドラムでも使うことが多い。通称「クジラ」と呼ばれている
世界中のスタジオでボーカルレコーディングに使用されている、ノイマンU87というコンデンサーマイク。非常に幅広い帯域を捉えることができ、シンガーやプレイヤーのニュアンスを余すことなく収音できる
こちらもモニタリングでは定番の密閉型ヘッドホン、ソニーMDR-CD900ST。ギターやキックなどの音の立ち上がりがとても速く、リズムに合っているかどうかの判断がしやすいため、特にミュージシャンが歌や楽器をレコーディングする際に使用される
上はユニバーサル・オーディオ1176(コンプ)。世の中に流れている音楽で、これを通していないものはないと言っても過言でない定番機だ。下はニーヴ1073という、これまたスタジオではスタンダードなマイクプリ。もともとはコンソールに組み込まれていたが、マイクプリ部を抜き出して使っている場合が多い
世界中のスタジオにセットされているヤマハのモニタースピーカーNS-10M。周波数特性がフラットで、音楽を制作するうえで不要な味付けがない
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