注目のギター録音アイテム試奏レビュー
ブラックスター、ホットトーン、ポジティブ・グリッド、VOXのアンプを足立祐二(デッド・エンド)がチェック!
ブラックスター、ホットトーン、ポジティブ・グリッド、VOXのアンプを足立祐二(デッド・エンド)がチェック!
2018/05/14
デスクトップに置けるサイズで、音質に優れた高性能なギターアンプが多数発売されています。ここでは注目のモデルを4機種厳選してサウンドをチェックしてみました。試奏を担当してくれたのは、デッド・エンドや河村隆一(LUNA SEA)などのギタリストとして活躍している足立祐二さんです。
取材:布施雄一郎 写真:生井秀樹
歪ませてもピッキングのアタックが潰れないアンプらしいサウンド
ブラックスター
ID:Core STEREO 10 V2
¥19,800
問:㈱コルグお客様相談窓口
TEL:0570-666-569
https://www.blackstaramps.com/jp/
「アンプらしい力強さとガッツがある音」というのが第一印象ですね。一般的にモデリングアンプは“うまくまとめた音”になりがちなんですけど、これはどのプリセットにも硬質で男っぽいブラックスターならではの個性を感じました。中でもリードサウンドが突出して素晴らしかったです。ハイゲイン系のプリセットはミッドの削り方が絶妙で、歪ませてもピッキングのアタックが潰れないですね。どんな音作りをしてもボトムがしっかりと存在していて、トレブルを上げても音がうるさくならない点も気に入りました。
そのミッド感を調整できる「ISF」というツマミがユニークで、左に回すとミッドにファットさが加わってきて、右に回すとブリティッシュ的なタイトさが出てきます。そのバランスを連続可変で調整できるのがいいですね。僕は左に回し切ったファットなミッド感が好きですけど、メタルとかで速いピッキングをする場合は、右に回してブリティッシュに寄せるといいでしょう。
とにかく音がボヤけないので、内蔵の空間系エフェクトのかかり具合も良かったです。しかも、ステレオ感がすごくワイドで、本体の外側から音が鳴っているように感じたのには驚きました。エディターソフトもシンプルなので、誰でもすぐに使えると思います。
それと、ヘッドホン端子がスピーカーエミュレーター機能付きのアウトプットになっているので、これを利用してライン録音をしたり、自宅でモニタースピーカーを小音量で鳴らしてギターを練習する場合とかにも便利だと思います。
クリーン、クランチ、歪みがそれぞれ2種類ずつ、計6種類のサウンドを選べる。左上のミニ端子がスピーカーエミュレーター機能付きのアウトプットだ
一番右側にあるEQ(ISF)が優秀で、これを回すだけでギターの核になるミッドの質感が変わる。左にするとアメリカ系、右に回すとイギリス系の音になる
専用エディターソフトのINSIDERを使うと、アンプやエフェクトが視覚的に選びやすくなるだけでなく、本体では操作できないパラメーターも調整できる
この製品について
[製品概要]
「ID:Core STEREO 10 V2」は、USBオーディオインターフェイス機能を搭載した出力10Wのギターアンプだ。3インチスピーカーを2発搭載し、レンジの広いステレオサウンドを出力できる。1つのツマミで音色をイギリス系かアメリカ系に変えられるISFコントロールを搭載。また、MP3/ラインイン端子に接続した音楽プレーヤーのサウンドを、オーディオ装置のようなクリアなサウンドで再生してくれる。
[SPEC]
●出力:10W ●スピーカー:3インチ×2 ●アンプタイプ数:6 ●エフェクト数:12 ●入出力端子: インプット、AUXイン、ヘッドホン&スピーカーエミュレーターアウト、USB端子 ●電源:単3電池×8本、付属ACアダプター ●外形寸法:380(W)×185(D)×265(H)mm ●重量:3.7kg ●専用エディタ−ソフト:INSIDER
800gを切る超軽量ボディにパワーアンプを内蔵したフロアアンプ
ホットトーン
BRITWIND
オープンプライス(¥28,000前後)
問:オールアクセスインターナショナル㈱
pedal@allaccess.co.jp
http://allaccess.co.jp
今回試奏した中では唯一フロア型ですけど、パワーアンプとスピーカーアウトが搭載されていることと、本体の軽さに驚きました。あまりに軽いので試奏前は少し不安でしたが、音を鳴らした瞬間から抜群のサウンドが出てきて、2度驚きました。特にVOX系のCH Aが秀逸で、EQとかフィルター感が強いシミュレーターが多い中にあって、音がとてもクリアで、ドラムとベースの中に混ぜてもアンプらしい音で鳴ってくれます。
ギターのボリュームを下げた時の歪みの減り方がアンプとまったく同じなので、ブーストを12時より上げた時にローが膨らんでブーミーになったとしても、ギターのボリュームを7か8程度に下げれば一気に解決しますね。アナログのドライブペダルをつなげたら最高だと思います。
マーシャル系のCH Bは、あまり歪まない昔のマーシャル1959のニュアンスがとてもよく再現されています。ゲインを下げめにした音と、ゲインを少し上げてギターのボリュームを絞った音が、どちらもとても似ていました。1959ってミドルがほぼ効かないんですけど、このモデルのミドルは可変量がすごく大きくて、完全にビンテージに寄せるのではなくて、今の時代に合わせて音作りがしやすくなっている点は好印象です。歌もののコード弾きでは歌の邪魔をしないようにミッドを切って、プレーン弦で単音弾きする際はミッドを上げて音をプッシュするとか、様々な用途に対応できます。
僕は今、ライブでフロア型のプリアンプを使っているので、今度はこれを実際のライブでぜひ試してみたいですね。
ビンテージの1959と異なり、本機のミドルは非常に効きがいいので音作りの幅が広く、用途を問わずに様々なシチュエーションで使うことができる
本体にブースターを搭載しており、ソロなどでオンにすると自然に音圧が上げられる。オンにしたままギター側のボリュームで音質を調整するのもありだ
リアにはキャビネットシミュレーター・スイッチがあり、これをオンにすることでキャビネットの箱鳴りや自然なエアー感を加えた音質でライン録音ができる
この製品について
[製品概要]
「BRITWIND」は、小型のボディにVOXとマーシャルPlexi 1959という2タイプのプリアンプと、最大75Wという高出力のパワーアンプを装備したペダルタイプのアンプだ。入力段にスイッチでオン/オフが可能な+12dBのクリーンブースト機能を備えており、ソロなどで音をさらに前に出したい際に重宝する。また、スピーカーシミュレーター機能も装備し、宅録でライン録音する際もリアルな音質が得られる。
[SPEC]
●出力:最大75W(4Ω時) ●アンプタイプ数:2 ●エフェクト:リバーブ ●入出力端子: インプット、スピーカーアウト、ラインアウト、エフェクトセンド/リターン、バランスアウト ●電源:付属ACアダプター ●外形寸法:190(W)×118.5(D)×53.5(H)mm ●重量:792g
回路レベルでエディットが可能な、プロも納得する再現度の高さ
ポジティブ・グリッド
BIAS Amp DSP
¥129,000
問:㈱メディア・インテグレーション
http://www.minet.jp/
他のアンプにはない見慣れないツマミがいくつか付いていて、最初は操作に少し手間取ったんですけど、「TUBE STAGE」と「DISTORTION」というツマミをイジると音がすごく変わるんですよ。この2つのツマミは本機ならではの機能として、使いこなすうえですごく重要だと思います。
TUBE STAGEは右に回すほど歪みが増えていきます。DISTORTIONはエフェクター的な歪みではなくて、真空管にかかる電圧の負荷をコントロールしているような感覚で歪みを調整できます。マニアックですけど、自然に歪みが厚くなっていって、しかも音がペダルエフェクターのように引っ込まないのはすごいです! 僕は昔、マーシャルPlexiに変圧機を使って、電圧を下げることで歪ませていたんですけど、本機はツマミの操作だけで、それに近いニュアンスがリアルに再現できるのに驚きました。アンプ・リペアマンの仕事みたいな職人的なパラメーターなんですけど、音質の変化の仕方があくまでも音楽的なんです。
それと、通常アンプに付いているトーンで音作りをする際、例えばベースをイジれば必ずミッドとかにも影響が出てしまうんですけど、TUBE STAGEはトーンにはまったく影響を与えないんですね。だから、一度トーンで決めた音質のまま、歪みの調整に集中できました。
キャビネットシミュレーション・スイッチをオンにすれば、アンプをキャビネットで鳴らしたのと同じ音でライン録音できるので、より本物に近いアンプサウンドが欲しい人には特にオススメです。
アンプタイプは「CLEAN、GLASSY、BLUES、CRUNCH、METAL」の5つがあり、それぞれ5種類ずつモデルをセレクトすることができる
TUBE STAGEとDISTORTIONのツマミにより、本物のチューブアンプの真空管にかかる電圧や挙動を調整するようなイメージで歪み量を変えられる
エディターソフト「BIAS Amp professional」を使えば、アンプやマイクの選択以外に真空管を変えるなど、アンプのあらゆる部分をカスタマイズできる
この製品について
[製品概要]
「BIAS Amp DSP」は、有名アンプのサウンドを忠実に再現し、さらにキャビネットやマイクの特性まで徹底してシミュレートしたアンプヘッドだ。真空管などのパーツレベルまでカスタマイズすることができ、付属のパソコン用ソフト「BIAS Amp professional 」や、iOSアプリ(別売)を使えば、詳細にエディットができる。また、専用サイト「ToneCloud」を経由して、世界中のユーザーが作ったサウンドデータを共有することも可能だ。
[SPEC]
●アンプタイプ数:25 ●入出力端子:インプット、ラインアウト(標準フォーン×2、XLRバランス×2)、エクスターナルペダル×2、エフェクトセンド/リターン、ヘッドホン、USB、ワイヤレス、MIDIイン/スルー/アウト、Bluetooth ●電源:AC100V電源 ●外形寸法:314(W)×153(D)×190(H)mm ●重量:5.3kg ●専用エディタ−ソフト:BIAS Amp professional
高解像度でクリアなサウンドとアンプらしい挙動を高次元で両立
VOX
Adio Air GT
¥37,800
問:㈱コルグお客様相談窓口
TEL:0570-666-569
http://www.voxamps.com/
僕の周りのギタリスト仲間が、声を揃えて「気になる」と噂をしていた評判の通り、試奏してみてその音の良さに驚きました。サウンドの印象は、とてもレンジが広くて、オーディオ的なクリアさがありますね。普通のアンプだと、サイズの大小に関わらず、正面で聴くときらびやかなハイエンドが耳に飛び込んできて、横にズレるとマイルドな質感になりますけど、これはどの位置で聴いても音質がほぼ変わりません。そういう意味でもオーディオ的なんですけど、そのうえで音がアンプらしいのがおもしろいですね。
これだけの高解像度で音が再生されながらも、フィルターとかで無理矢理に音を作った印象が一切ないですし、ゲインを上げるとアンプ特有のコンプ感が加わってきて、しかもまったくこもらないんですよ。逆に、ゲインを下げるとプレーン弦のパリッとした感じが出せます。個々のアンプモデルを試してみましたが、AC30は小型サイズとは思えない箱鳴り感がありますし、メサブギ—系のプリセットはゲインを絞っても音が痩せないのがいいですね。5150タイプにしてトレブルとプレゼンスを上げると、ピーヴィー5150のように音が前に出てきてくれました。5150は本物よりいいかも!
基本的にどのプリセットも音がクリアでハイまでキレイに鳴ってくれて、クリーンやクランチで巻弦を弾いた時のタッチがしっかり出るところも秀逸です。エディターソフトも視覚的にキャッチーで扱いやすいですし、USBオーディオインターフェイス機能も内蔵されているので、宅録でも使いやすいと思います。
エフェクトは2系統内蔵している。FX1はモジュレーション系、FX2は空間系で、ツマミを右に回すと効果が強くなり、回し続けるとエフェクトが切り替わる
本体にBluetooth機能を装備しているので、スマホなどに入っている音楽を鳴らしながらギターを弾くこともでき、両者の音量を独立して調整できる
専用エディタソフト「ToneRoom」を使うと、パソコンの大きな画面でエディットが行なえる。エフェクトをオフにしたい時は、ドラッグで上にズラせばOKだ
この製品について
[製品概要]
「Adio Air GT」は左右360mm/高さ163mmとコンパクトにも関わらず、50Wという出力を誇るアンプだ。最大23種類のアンプタイプを搭載しており、独自のモデリング技術「VET」でアンプの特性を忠実に再現。2基の3インチスピーカーを搭載しており、心地よいステレオ感を得ることができる。また、Bluetooth経由でスマホなどに入っている音楽を高音質で再生でき、それに合わせてセッションも行なえる。
[SPEC]
●出力:50W ●スピーカー:3インチ×2 ●アンプモデル数:11(Tone-Room使用時は23) ●エフェクト数:19 ●入出力端子: インプット、AUXイン、ヘッドホン、USB端子 ●電源:単3電池×8本、付属ACアダプター ●外形寸法:360(W)×165(D)×163(H)mm ●重量:2.9kg(電池含まず)●専用エディタ−ソフト:ToneRoom
試奏者プロフィール
関西ヘヴィメタル・シーンを代表するバンド、デッド・エンドのギタリスト。最近では、河村隆一や玉置成実といったアーティストのレコーディングやツアーでも活躍している。数多くのアンプとエフェクターを使った経験を持つマニアとしても知られており、その正確な技量に裏打ちされた独特の旋律と、こだわりの音作りで高い評価を得ている。
今回の試奏方法
今回の試奏は、足立氏が普段愛用しているカスタムメイドのフェルナンデス製オリジナルSTタイプを使用し、ダイレクトに各アンプに接続した状態でチェックを行ないました。
スピーカー内蔵モデルは本体の出音を中心に確認し、スピーカー非搭載モデルに関してはラインアウトやUSB端子の信号をオーディオインターフェイス(スタインバーグUR22mk2)を経由して、ジェネレック8030Aというモニタースピーカーを鳴らしてチェックを行なっています。
足立氏自身の音の好き嫌いは排除して、ギタリスト目線で各モデルからどれだけ「本物のアンプらしさ」が感じられるかという観点から、各モデルを評価してもらいました。
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