進化したオーディオインターフェイス12選

【アポジーElement 24レビュー】ツマミを一切なくし、ソフト上で操作するシステムを採用

【アポジーElement 24レビュー】ツマミを一切なくし、ソフト上で操作するシステムを採用

2018/07/13


パソコンでレコーディングをするには、DAWソフトとパソコン、そして「オーディオインターフェイス」が絶対に必要です。中でもオーディオインターフェイスは、サウンドを高音質な状態でパソコンに入出力するという重要な役割を担っています。現在発売されている機種は、メーカーごとに独自の進化を遂げており、そのクオリティや機能は製品によって千差万別。本特集でその違いを明らかにしていきます。

アポジーElement 24(文:谷口尚久)

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フロントパネルにはマイク/ライン(インスト対応)のコンボイン×2を装備

本機の一番の特徴は、本体にツマミ類が一切ないということです。これなら持ち運びの時に、ツマミが破損するなどのトラブルに気を遣わずに済みます。では、どうやって操作するのでしょうか?

方法は複数あり、ひとつは「Element Control」というソフトウェアを、コンピュータ上に立ち上げて操作する方法です。これは他のオーディオインターフェイスでもお馴染みの方法です。

2つ目の方法は、「Apogee Control Remote」という専用のリモートコントローラー(ハードウェア)を使う方法です。リモコンはオプション製品なのでその分の出費は必要ですが、「購入すれば各機能を手元で操作することができる」という点では実に合理的です。他のメーカーでもこの方式は増えてきています。

3つ目が、iPhoneやiPadからアプリ「Apogee Control for Element Series & Ensemble Thunderebolt Control」を使ってワイヤレスで操作する方法です。これによりブースにいるシンガーの側で、マイクプリのゲイン調整やモニターバランスの調整、モニタースピーカーのミュートなどが可能になります。レベルメーターも搭載しているので、iPhone やiPadからリモートでレベルを確認できる点も重宝します。日々、作業を行なうプロユーザーが想定されている設計です。 

アポジーはアップルと技術面での連携をはじめ、その関係は密接。アップル純正のDAWであるLogic Pro Xとの連携が強いことも、本機の売りのひとつです。「Logic Pro X Integration」と呼ばれる技術を採用し、ソフトウェア(Logic)とハードウェア(Element)をシームレスにつないでくれます。例えばLogicでオーディオの録音をするとしましょう。Logic上でチャンネルのインプットをElementのch1やch2にすると、これまでLogicでは見られなかったボタンが現われます(下画像)。マイク入力とインストゥルメント入力(ライン)を切り替えたり、コンデンサーマイクであれば48V電源の供給もここでオン/オフすることができます。また、入力レベルの上げ下げはもちろん、ローカットや位相反転の操作も可能です。

つまり、Elementシリーズはその名の通り、基本要素のみを提供し、ハードウェアとしての存在感を極力小さくすることで、「ユーザーが音楽制作に意識を集中できるようにする」という考え方が貫かれているのです。言い換えれば「ハードやソフトを操作している」のではなく、「音楽制作ツールを操作している」と感じられるようにするための配慮なのでしょう。

今回は専用のリモートコントローラーを使用せず、かつElement 24とモニタースピーカーの間にミキサーなどを挟まずに作業をしてみました。すると、ハードウェア上のコントロールがないため、自然とモニターレベルが安定した状態で作業することとなりました。音量が一定であることは、的確でブレない判断が可能になります。そういった点からも、プロスタジオが信頼を寄せるアポジーの設計思想を感じました。

音質は、ニュートラルかつきらびやかとでも言いましょうか、スッキリと淡麗な印象です。高域周波数の細やかな震えのような部分がよく感じられます。音像のワイド感も十分にあり、ポップスのみならず劇伴の仕事にも適しています。音量を上下させた際も、極めて正確なモニタリングが行なえました。

また、同社のThunderboltドライバはDMA (Direct Memory Access)という技術を有しており、CPU負担を低減してくれます。これによりプラグインの数を節約せずに済むという恩恵が得られます。そして、本機はMacのスリープに連動してスリープ状態になるのですが、これは実はとても珍しい機能で、マメなユーザーには精神衛生上極めてうれしいポイントと言えるでしょう。

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リアパネルには、ステレオのメインアウトとデジタルイン/アウト(ADAT、SMUX、S/P DIF)、ワードクロックイン/アウトなどの入出力を装備している

スペック

価格:¥78,000
​接続方式:Thunderbolt
アナログ入出力:2イン/4アウト
デジタル入出力:8イン/8アウト
対応OS:Mac OS(10.10-10.13)
音質:32ビット/192kHz
重量:1.14kg

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