【デジグリッドDiGiGrid Dレビュー】堅牢な筐体と太いサウンド、抜群の安定感が魅力

進化したオーディオインターフェイス12選

【デジグリッドDiGiGrid Dレビュー】堅牢な筐体と太いサウンド、抜群の安定感が魅力

2018/07/13

パソコンでレコーディングをするには、DAWソフトとパソコン、そして「オーディオインターフェイス」が絶対に必要です。中でもオーディオインターフェイスは、サウンドを高音質な状態でパソコンに入出力するという重要な役割を担っています。現在発売されている機種は、メーカーごとに独自の進化を遂げており、そのクオリティや機能は製品によって千差万別。本特集でその違いを明らかにしていきます。

デジグリッドDiGiGrid D（文：谷口尚久）

上面パネル

デジグリッドというブランドは、ロゴから見てわかる通り、デジコ社とウェイヴス社がコラボレーションしたブランドです。このロゴを見るだけでも、信頼感が湧いてくるのではないでしょうか。ドライバのインストールも「Waves Central」から行なうことになるので、ウェイヴス製品の高いシェア率を考えれば、慣れているユーザーも多いはずです。

本機の筐体はガッシリと重く、堅牢です。アポジーのシンプルなElement 24とは対極で、本体にはボタンやツマミが多数付いています。いかにもゴツい手で操作しそうな、日本のメーカーなら考えもつかないような面構えです。ボタンの配置も独特ですが、それぞれの機能自体は特別なものではないので、操作にはすぐに慣れるでしょう。ひとつだけ特徴的なのは、インプットごとに搭載されている「MIX」というボタンです。これはすべての信号をバイパスして、入力した原音を直接確認することができるボタンで、ダイレクトモニタリングが必要な時に押します。

操作性の面では、ボリュームノブの左右にインジケーターがあり、緑→黄→赤という色の変化でアウトプットレベルが表示されます（左右のインジケーターはステレオのLRを意味します）。アウトプットレベルは通常、DAWソフトの画面上で確認することが多いかもしれませんが、常にインターフェイス上でチェックできるのは意外と重宝します。

モニターボリュームノブの上には、同じ大きさのヘッドホンボリュームノブがレイアウトされています。スピーカーとヘッドホンを行き来して作業することを想定しているのでしょう。「どちらのモニタリングもないがしろにできるわけがない」という、作り手の強い意志が感じられます。

そんな本機を、今回はアビッドPro Toolsに接続して試してみました。気になるそのサウンドは、ごまかしのない強い音で、“太い音”とも言えるかもしれません。それはまるで筆圧の高い文字を見ているようなイメージです。昨今はハイレゾ対応の音源を求められることが多いので、32ビット／96kHzの環境で作業してみたところ、業界標準の音質が体感できました。マイクプリの音質も極めてニュートラルです。

ところで、本機には独自の「ネットワーク・オーディオインターフェイス」という考え方があります。これは、複数のオーディオインターフェイスを追加したり、ミキシングコンソールに接続したり、DAWをDSPサーバーに接続することができるというもの。イーサネット接続だからこそ実現するシステムだと言えます。非常に優れた拡張性があり、例えば、DiGiGrid D1台に対して、2台以上のMac／PCを接続して同時に作業することが可能です。また、例えばスタジオやフロアが2つ以上に分かれている場合や、演奏者とエンジニアが離れた場所で作業をしなければいけない時に、それぞれの場所にインターフェイスを設置して、各自でコントロールを行なえるというメリットがあります。

さらに、本機を中心とした制作環境に、SoundGrid対応のプラグインを処理するサーバ「WAVES Impact Server」を導入するのもオススメです。これによりCPUに負担をかけずにプラグインを処理することができる、強力なサーバ環境を構築できます。その処理性能はウェイヴスSSL-4000 G-Channelを170個以上もインサートできるほどで、かけ録りを行なう際のレイテンシーが低減されるという効果もあります。

イーサネットでの接続は初めての経験でしたが、様々な規格や仕様がコロコロと変わる昨今においては、むしろ将来的に安心なのかもしれません。ややボディが大きいという印象はありますが、サウンドと機能面の両方で非常に安定感のあるオーディオインターフェイスでした。