宅録ビギナーにもオススメな注目モデルの音質をチェック!
フォーカル・プロフェッショナル、ヌー、マイクテックのヘッドホン徹底レビュー
フォーカル・プロフェッショナル、ヌー、マイクテックのヘッドホン徹底レビュー
2018/09/16
レコーディングやミキシングの作業では、ヘッドホンが欠かせません。ここでは音のバランスやエフェクトのかかり具合を判断するのに最適な、密閉型のモデルを3機種セレクトして、それぞれのサウンドをチェックしてみました。試聴を担当してくれたのはSTUDIO 21で手腕を振るっているエンジニア/プログラマーの堀 豊氏です。
試聴・文:堀 豊(STUDIO 21)
同社のスピーカー譲りのフラットな音質と、耳が疲れない柔らかい高域と低域が特徴
フォーカル・プロフェッショナル
PListen Professional
¥38,000
問:㈱メディア・インテグレーションMI事業部
TEL:03-3477-1493
http://www.minet.jp/
本機は折りたたみも可能な密閉型のヘッドホンで、手に持った時の質感やイヤーパッドの感触が素晴らしく、しかも高級感にあふれています。イヤーパッドは厚めですが、柔らかくて独特の弾力感があります。装着感はかなりしっかりしていて、前述のイヤーパッドのおかげでズレにくいので、外の音を遮断してヘッドホンの音に没頭できました。
サウンドは同社のスピーカー譲りで、フラットかつ各パートの帯域の情報量が多いので、正確なモニタリングが可能です。高域の印象も痛い感じがなくて柔らかく、リバーブの広がりや定位感をしっかり感じることができます。低域も柔らかい印象ですが、200〜400Hzあたりのベースの音程を司る帯域がわかりやすく前に出てくる印象です。
筆者は同社のモニタースピーカー「SHAPEシリーズ」で作業をしたことがありますが、音の印象はそれに近いです。高域の柔らかな感じが、長時間作業していても疲れない要因のひとつだと思いました。
スペック
●型式:密閉ダイナミック型
●ドライバ:φ40mm
●感度:122dB SPL
●周波数帯域:5Hz〜22kHz
●インピーダンス:32Ω
●重量:280g
●付属品:5mカールコード、1.4mマイク付きリモコンケーブル、ステレオミニ→標準変換アダプター、専用ハード・キャリングケース
輪郭や音程をしっかりモニタリングできる高域の伸びが特徴の低価格モデル
ヌー
HX-6000
オープンプライス(¥4,000前後)
問:イースペック㈱
TEL:06-6636-0372
http://e-spec.co.jp/
本機は密閉式のモニターヘッドホンですが、本体重量が200gと非常に軽いのが特徴です。イヤーパッドは薄めで柔らかく、質感がサラサラしているバブルレザーというタイプの素材が採用されています。イヤーカップの耳への締め付け具合もかなり軽いので、長時間の使用でも負担が少ないのが特徴です。
肝心のサウンドですが、高域がしっかり伸びており、どちらかというと硬めの音質ですが、細かい定位感や空気感もしっかり感じることができました。女性ボーカルの楽曲も声がキンキンせず、伸びのいいハイを再生することができます。アタックのハッキリしたアコギやエレキギターとも相性は良くて、音色の輪郭や音程をしっかりとモニタリングすることができました。
EDM系などのベースやキックのローエンドを強調した曲よりも、ロックやポップスなどの制作に向いていると思います。実売価格が4千円前後と、コストパフォーマンスにも優れているモデルです。
スペック
●型式:密閉ダイナミック型
●ドライバ:φ50mm
●感度:101dB±3dB@1kHz
●周波数帯域:10Hz〜25kHz
●インピーダンス:32Ω
●重量:200g
●付属品:ステレオミニ→標準変換アダプター、専用ポーチ
色付けが少ないクリアな音像を持っている、ミックスでのモニタリングに最適な音質
マイクテック
DH90
¥13,200
問:日本エレクトロ・ハーモニックス㈱
TEL:03-3232-7601
http://www.electroharmonix.co.jp
本機はメタリックでスタイリッシュな筐体が印象的で、重量が276gと軽く、イヤーパッドの肌触りがなめらかなのが特徴です。
サウンドの第一印象としては、色付けがかなり少なくて、音像もクリアです。ダイナミックレンジも広く、モニタリング用としてかなり優秀だと思いました。
音量を変えた時も印象の変化が少なく、膨らむ帯域もありません。質感がタイトで、各パートの音のスピード感を正確に感じることができます。また、ボーカルにかけたEQを調整する際、自分の中の「1dBの上げ下げで変わってほしい」というイメージと出音が一致します。
“色付けが少ない”というのがポイントで、リスニング用途としては派手に広がる感じがないので、多少は物足りなさを感じてしまうかもしれません。ただ、シビアにミックスを確認する場合は、「このヘッドホンをしっかりと鳴らしきれば、他の環境でも音が破綻しにくい」という安心感があり、心強く感じました。
スペック
●型式:密閉ダイナミック型
●ドライバ:φ40mm
●感度:98dB
●周波数帯域:10Hz〜20kHz
●インピーダンス:68Ω
●重量:276g
●付属品:1mストレートコード、3mストレートコード、ステレオミニ→標準変換アダプター
多機能で高性能なヘッドホンアンプに注目!
スピーカーを聴いているような、耳への音の回り込みを電気的にシミュレート
グレース・デザイン
m900
¥64,000
問:㈱アンブレラカンパニー
TEL:042-519-6855
http://umbrella-company.jp/
本機はコンパクトな筐体を持つ高音質なDAコンバーター/ヘッドホンアンプです。S/P DIFのデジタルインプットの他にUSB 2.0での接続が可能で、モニターコントローラー内蔵のオーディオインターフェイスとして使用することもできます。
今回はUSBでパソコンと接続し、現在制作中のソングデータを再生して、ヤマハHPH-MT220というヘッドホンでチェックしてみました。そのサウンドは同社の上位機種譲りで、色付けが少なく、ハッキリとした輪郭が感じられるのが特徴です。レンジ感も申し分なく、ミックスで音の細部を正確に把握するのにも最適です。
また、「クロスフィード回路」という機能があり、これをオンにすることで、部屋でスピーカーを使ってミックスする時のような、耳への音の回り込みを電気的にシミュレートすることができます。実際、スピーカーで聴いているような空気感があるサウンドを、密閉されたヘッドホンでも感じることができました。大きな音でスピーカーを鳴らせないという人にもオススメです。
試聴者プロフィール
堀 豊
(ホリ ユタカ)
レコーディングエンジニア、コンポーザー、アレンジャー、サウンドクリエイターとして、作・編曲からレコーディング、ミックス、マスタリング、そして本誌での製品レビューまで、幅広く手掛けるマルチクリエイター。これまでに数多くのプロアーティストの作品の制作に参加している。
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