レコーディングの重要エフェクター

初めてのリバーブの使い方&人気ペダル型リバーブ・レビュー

初めてのリバーブの使い方&人気ペダル型リバーブ・レビュー

2018/10/15


残響を再現するリバーブは、ミックスでの空間表現はもちろん、パート別の音作りや、レコーディング時のモニターを演奏しやすくするためにも使われるなど、様々な場面で活躍する重要なエフェクターです。リバーブを使いこなすための基本を紹介していきます。
 

画像はフラックスIRCAM Verb
 

リバーブは「レコーディング」と「ミックス」の両方で使う!

文:平沢栄司


リバーブを使う場面は、大きく分けて2つあります。ひとつは「ミックス」です。おそらく、宅録初心者の人が最初にリバーブを使うことを意識する場面のひとつでしょう。各パートに残響を加えることによって、奥行きや広がりを表現します。リバーブの効果は、コンプやEQなどの他のプラグインと比較してもわかりやすいと思います。

もうひとつの場面は「レコーディング」です。録り音にリバーブをかける「かけ録り」と、演奏時のモニターにリバーブをかける「モニターがけ」という2つのパターンがあります。前者の場合はミックス時の使い方に近く、ギターなどの音作りの一環としてリバーブを使います。後者はボーカルなどを録る場面で、自分の声をモニターする時に用います。軽くリバーブをかけた方が生声をモニターするよりも聴きやすくなり、また、気持ち良く歌えるという効果も期待できるからです。

このように、リバーブを使うことでレコーディングの環境を整えたり、音作りやミックスの幅を広げて、作品の質をアップすることが可能となります。
 

かけ録りとは、リバーブをかけた状態で録音をすること。例えばギターを録る時には、ペダルリバーブをかけた状態でレコーディングを行なうことがある

モニターがけとは、演奏時のモニター音にだけリバーブをかけること。録音される音にはリバーブはかかっていない
 

録りの時のリバーブのかけ方

リバーブ 

 

僕がボーカルをレコーディングする時は、プレートリバーブとディレイを組み合わせて、モニターにかけることが多いですね。ディレイはそんなに聴こえなくてよくて、うっすらとかける程度。これによって歌の本体が見えるようになります。

そのディレイの後ろにリバーブを軽く乗っけるような感じでかけて、声を伸ばしてあげると、歌い方がよくわかるし、エコー感もよく聴こえるようになります。ボーカリストも歌いやすくなって、「自分の声が聴き取りづらい……」といった問題も解消するでしょう。
モニターのリバーブの長さは、どんな曲調の場合でも、そんなに変えていません。どちらかというと、リバーブがモワモワしないように、後ろに伸びていくようなタイプをかけてあげることが大切です。

ボーカリストから「リバーブを多めに返してほしい」というリクエストがあったら、ボーカリスト自身に手元で調整してもらいますが、上げ過ぎには注意が必要です。なぜならリバーブ量を上げ過ぎると、気持ち良くは歌えるのですが、ピッチが取りづらくなるんです。なので、その塩梅を考えながらリバーブ量を決めることが大切です。
ボーカリストが「何を意識してリバーブ音を聴いているか?」ということも大事ですね。エコーを聴いて自分のピッチを確認しているのか、歌を切った時の伸び方を聴いているのか、たんに気持ち良く歌いたいだけなのか、そういったことでリバーブの付け方も変わってくるんですよ。

他には、ギターやサックスなどを録る時も、リバーブをよくかけます。ピアノやリズム隊を録る時には演奏しづらくなるので、あまりかけません。

解説:青野光政

リバーブで調整できる主な要素

要素①:空間の大きさや形状

まず、どんな場所の残響を再現するかを決めるのが「リバーブタイプ」と呼ばれるパラメーターです。代表的なタイプは「ホール」と「ルーム」の2つ。前者はコンサートホールのような大きな会場、後者はスタジオや部屋などの小さなスペースの残響を再現します。

アナログ時代のリバーブを再現したタイプもあります。「プレート」はスタジオで使われていた大きな鉄板を利用したリバーブ、「スプリング」はギターアンプでお馴染みのバネを利用したリバーブの効果です。

また、同じタイプの中に効果の異なるものがいくつか用意されている場合もあります。ドラムなど、効果がわかりやすいパートにリバーブをかけてみて、タイプを切り替えながら、それぞれの残響の特徴を覚えておくといいでしょう。

他にも、逆回転のような効果の「リバース」や、残響を途中で断ち切る「ゲート」など、特殊効果が用意されているリバーブもあります。

タイプを選ぶ時のポイントは、まず豊かな響きと広がりを持つホール系をメインにすることです。そして、例えば生々しさやタイトな響きが欲しい時はルーム系、ボーカルを美しく聴かせるならプレート系というように、特徴に合わせて使い分けるようにするといいでしょう。
 

要素②:残響の長さ

リバーブ音の長さは「リバーブタイム」や「レングス」、「ディケイ」といった名称のパラメーターで調整します。

ほとんどの場合、リバーブ音が減衰するまでの時間を「ms」(ミリ秒)単位で調整することができます。よく響く場所ほど残響は長くなるので、あまり響かない空間を表現したい時はタイムを短くし、逆にもっと響く空間を表現するならタイムを長くしてみましょう。

数値の目安としては、ルーム系など残響が短めのリバーブにしたい時は「1s」(1秒)前後、ホール系など残響が長くてよく響くリバーブが欲しいなら「2s」(2秒)前後くらいでしょうか。これらのリバーブタイムの値やプリセットの設定値を基準に、曲のテンポや曲調も意識しながら調整を進めるといい結果が得られます。

例えば、リズミカルな曲やアップテンポな曲なら短めの歯切れ良い響きがマッチしますし、スローな曲やアンビエント感を大切にする曲では、長めにして空間を埋めると音像が豊かになります。なお、リバーブによっては、極端にタイムを短く/長く設定すると音がバリバリと荒れることもあるため、意図がない限りは適正なタイムの範囲で設定しましょう。
 

要素③:初期反射

リバーブ音が鳴り始める部分をコントロールするのが初期反射関係のパラメーターです。代表的なものが「プリディレイ」で、原音が鳴ってからリバーブ音が鳴るまでのタイミング(遅れ)を調整します。

プリディレイを長くしていくと原音よりも遅れてリバーブ音が鳴るので、音源と壁までの距離感(空間の広さ)をコントロールすることができます。まずは、ルーム系の狭い空間ならばプリディレイは短めに、ホール系の広い空間なら長めに設定してみましょう。また、深くリバーブをかけた時、長めのプリディレイで原音とリバーブを分離させることで、立ち上がりをハッキリと聴かせるような効果も得られます。このようにプリディレイは、リバーブタイムと合わせて使う、調整のキモになるパラメーターなのです。

一方、高性能なリバーブには「アーリーリフレクション」と呼ばれるパラメーターを備えるものがあります。これは、残響成分の元になる最初の反射音を調整するものです。この反射音の密度やレベルの設定によって、その後の残響の響き方や密度が変わってきます。上級者向きのパラメーターなので、とりあえずはプリセット値のままでも問題ありません。
 

要素④:質感

リバーブの残響は、繰り返し壁に反射した音が幾重にも重なって作られたものです。そのため、壁の材質(硬い/柔らかい)によって反射する音の質感も変わり、リバーブ音が減衰していく過程の音色変化に違いが出てきます(主に高域の減衰感)。そのニュアンスを調整するのが「ダンピング」というパラメーターです。

ダンピングが効いた状態にするほど高域の減衰が速くなり、柔らかな質感のリバーブになります。「長めのリバーブタイムが欲しいけど、目立ち過ぎたり、余韻がゴチャついて気になる」といった時に調整してみるといいでしょう。

また、時間経過ではなく、リバーブ音そのものの音質を直接的にコントロールする「EQ」を備えているものもあります。ハイを強調して明るくハデな響きにしたり、モコモコしたローをカットしてスッキリさせるなど、通常のトラックの音作りのような感覚でリバーブの音質が調整できます。楽曲の雰囲気や、リバーブを使うパートの特性に合わせて微調整を加えると効果的です。なお、EQを持たないリバーブでも、その直後にEQをインサートすれば、同じようにリバーブの音質を調整できます(センドリバーブの場合)。
 

要素⑤:原音と残響成分のバランス

リバーブには、原音とリバーブ音の「ミックスバランス」や、それぞれの音量を調整するパラメーターが用意されています。例えば、「Dry/Wet」といった名前のパラメーターでは、1つのツマミで原音(ドライ)とリバーブ音(ウェット)のバランスを調整できるようになっています。ドライ側(原音のみ出力)からウェット側に回すほどリバーブ効果が深くなり、回しきるとリバーブ音のみが出力されます。リバーブをセンドエフェクトとして使う場合は、このツマミをウェット側に回しきるのが鉄則です。

また、原音とリバーブ音の音量を、別々のツマミで調整できるものもあります。インサートで使うなら原音はイジらずに、リバーブ側のツマミで深さを調整します。センドで使う時は原音を0%、リバーブ音を100%に設定しましょう。

ギターアンプの内蔵リバーブやペダルタイプのリバーブの場合、「Reverb Level」というツマミで調整する機種もあります。これは、原音の音量は100%に固定で、リバーブ音の音量のみを調整する形になります。このような原音をミュートする機能がないものは、センドエフェクトとして使うには不向きです。
 

上記要素に該当するパラメーター(プリソーナスRoom Reverbの場合)
 

上記要素に該当するパラメーター(ウェイヴスRenaissance Reverberatorの場合)


 

人気のペダルモデルを徹底チェック!

ロックバンドのwash?で活動する傍ら、木村カエラやクリープハイプなど、有名アーティストのレコーディングやライブに参加している奥村 大さん。これまでに数多くのペダルエフェクターを使ってきた彼が、人気モデル9台のサウンドを試聴してくれました。

取材:平沢栄司 写真:小貝和夫


チューブアンプとの相性が抜群なミッド寄りの残響

エレクトロ・ハーモニックス
Holy Grail Max

¥30,000
問:問:㈱キョーリツコーポレーション
support@kyoritsu-group.co.jp
http://kyoritsu-group.com
 

 

まず、操作がすぐに理解できるシンプルな見た目がいいですね。サウンドには独特の個性があって、若干レンジが真ん中に寄って狭めなんですけど、それがチューブアンプと抜群にマッチして、アナログライクな暖かさがあるために残響が太く感じます。自然とロックな音になるので、弾いていてすごく楽しかったです。ギタリストの気持ちをよくわかっていると思いました。

特に、本機の手前に短いタイム設定にしたスラップっぽいディレイをかました時のスプリングリバーブの音は最高ですね。それと、リバースの感じもすごくいいです。歪みエフェクトとの相性もいいですし、ブレンドのツマミを最大にすれば、シューゲイザーごっこが永遠にできます(笑)。

ロック系のギタリストが、少ないペダルでサウンドに色気を出したい時に使うのにも最適ですし、最初に買うモデルとしてもピッタリな、スタンダードとして長く使えるいいリバーブだと思いました。

【SPEC】
●タイプ:スプリング、ホール、プレート、リバース
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V DCアダプター(付属)
●外形寸法:91(W)×118(D)×50(H)mm
●重量:350g
 


残響の解像度が高く、クールで澄んだ響きが得られる

フェンダー
MARINE LAYER REVERB

¥18,000
問:フェンダーミュージック㈱
TEL:0120-1946-60
http://fender.co.jp/
 

フェンダーなのでスプリング系なのかと思っていたら、いい意味で裏切られました(笑)。音の印象はクリアで、すごく上質でクセがないですし、残響の解像度が高いですね。中でもホールが気に入りました。名前は「MARINE」ですけど、高原の澄んだ空気みたいに爽やかでカッコいい! どのタイプも音に雑味がないので、宅録で歌やアコギに使ってもいいと思います。汎用性が高いですし、このクオリティのリバーブが2万円しないことに驚きました。

プリディレイの設定で音の印象が変わるので、それでイメージ通りの響きになるところを探してから、ダンピングを12時の位置にして、そこを基準にハイを調整するのが音作りのポイントです。あと、スイッチをオフにしてもいきなり音が切れずに前の残響が残る「ホールド機能」も搭載されています。エグくかけるような用途には向かないですけど、クールで澄んだ響きが欲しい時にはかなり使えると思います。

【SPEC】
●タイプ:ホール、ルーム、スペシャル(シマー)
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V DCアダプター、9V乾電池
●外形寸法:101(W)×125(D)×62(H)mm
●重量:540g
 


質の高いリバーブとレトロなトレモロを組み合わせた複合モデル

ストライモン
FLINT

オープンプライス(¥35,000前後)
問:オールアクセスインターナショナル㈱
pedal@allaccess.co.jp
http://allaccess.co.jp
 

 

これは左がトレモロで、右がリバーブという複合タイプなんですけど、最小限のツマミで構成されているので扱いやすいですね。リバーブは、「'60s」(アンプのスプリング)、「'70s」(スタジオのプレート)、「'80s」(デジタルリバーブ)の3タイプで、それぞれの特徴が忠実に再現されています。音はいかにもストライモンらしい、弾いていてウキウキする明るさがあって、特にアナログを再現したモードが本当にリアルで、気持ち良く弾けました。

リバーブとトレモロの相性もいいです。気に入ったのは「'70s」と「'61 harm」というトレモロの組み合わせで、『ツインピークス』のテーマを延々と弾いちゃいそうな怪しげな雰囲気がすぐに作れました。ダークなのに音のヌケが良くて、ギターとエフェクトが混然一体となるというか、とにかく響きが音楽的です。海外アーティストのボードによく入っているんですけど、試奏をしてみてその理由がわかりました。

【SPEC】
●タイプ:トレモロ(ハーモニック、パワーチューブ、フォトセル)、リバーブ(スプリング、エレクトロニックプレート、ホール)
●入出力端子:インプット、アウトプット×2、エクスプレッション
●電源:9V DCアダプター(付属)
●外形寸法:102(W)×117(D)×67(H)mm(突起物含む)
●重量:450g
 


本体に本物のスプリングを内蔵し、2系統の設定が可能

カール・マーチン
HEADROOM

¥35,000
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
https://hookup.co.jp/
 


 

このモデルは筐体に本物のスプリングが入っているんですよ。なのでバネ臭いのかなって思っていたんですけど、スプリングらしさがありながら、それを忘れちゃうくらい響きが上質なのには驚きました。いい意味で主張し過ぎない使い方もできますし、バネ感を強調したければアンプを歪ませればOKです。スプリングは、ミックスの中でギターの音が浮き上がって聴こえてくるのも魅力ですね。それと操作も簡単で、レベルでリバーブの長さと深さを調整して、トーンで明るさを決めるだけです。ちなみに、蹴ると「ビャーン!」っていう、スプリングリバーブ特有の音がします(笑)。

それと、リバーブを2系統使えるというのがポイント高いですね。例えば、「薄めと深め」とか、「明るめと暗め」という違う設定にして、バッキングとソロで使い分けたりもできます。「アンプ内蔵のリバーブは好きなんだけど、音質が気に入らない」という人には、ぜひ使ってほしいです。

【SPEC】
●タイプ:スプリング
●入出力端子:インプット、アウトプット、リモートセレクト、リモートバイパス
●電源:9V DCアダプター(別売)
●外形寸法:260(W)×140(D)×70(H)mm
●重量:1.1kg
 


踏むだけで変化球的なリバーブ効果が出る個性派モデル

アースクエイカー・デバイシズ
Afterneath

オープンプライス(¥31,000前後)
問:ヤマハミュージックジャパン お客様コミュニケーションセンター ギター・ドラムご相談窓口
ナビダイヤル:0570-568-808
https://www.earthquakerdevices.jp
 

 

馴染みのないツマミが多かったので、とりあえず全部を12時にして1音だけ弾いてみたんですね。すると、「テテテテテ……グワーン」みたいなショートディレイっぽい響きが追いかけてくるんですよ。試しにアルペジオを弾いてみたら、このモデルでしか出せない独特の残響が加わって、すごくいい感じになりました。Dragというツマミがキモで、これで「テテテテテ……」の量が調整できます。

とにかくこれを踏むだけで、勝手に変化球的なリバーブ効果が出ます。プレイとしては速く弾くよりも、アルペジオをゆったりめに反復させるような感じで使った方が本機の個性が活かせますし、不思議な世界観が作れます。自分ならこれを手元に置いて、ギターを弾きながらツマミを回して特殊効果を加えるような使い方をしたいですね。例えるなら、使いやすい絵の具ではないですけど、これじゃなきゃ描けない絵が描ける。そういう唯一無二のモデルです。

【SPEC】
●タイプ:アンビエント
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V DCアダプター
●外形寸法:63.5(W)×117(D)×57(H)mm
●重量:300g
 


リバーブの概念を覆す幻想的な空間が作れる1台

オールド・ブラッド・ノイズ・エンデヴァーズ
Dark Star Pad Reverb

オープンプライス(¥35,000前後)
問:㈱LEP INTERNATIONAL
nfo@lep-international.jp
https://www.lep-international.jp/
 

 

音を出した瞬間、「何じゃこりゃ!?」って思いました。今回試した中でも一番飛び道具感が強くて、人と違う個性的な音を出したいのなら、間違いなくオススメですね。

モードは3つあります。まず「PITCH」はシマー系(※ピッチシフトしたリバーブ音が加わるリバーブ効果)なんですけどエグさがあって、CTRLツマミで不協和音が鳴るようにすれば、ホラー映画みたいな怖い効果が出せます。「CRUSH」はシマーとビットクラッシュが混ざった感じで、リスナーを絶望の淵に叩き落とすのに最適な音ですね(笑)。でも、どちらもCTRL1と2のツマミを絞るとダークでいい感じのリバーブになります。もうひとつの「DELAY」モードでは叙情的な空間が得られました。

シマーの不協感が絶妙で、どうイジっても幻惑的な音になりますし、例えば「だんだん音が壊れていって徐々に狂気の口が開いていく」というような、映像的な表現もできると思います。ギター以外に、ループ素材とかにかけても面白そうですね。

【SPEC】
●タイプ:ピッチ、ディレイ、クラッシュ
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V DCアダプター
●外形寸法:71(W)×125(D)×55(H)mm
●重量:310g
 


4種類のタイプが選べるアナログ感が持ち味のモデル

マストロバルボーラ
Area

オープンプライス(¥26,667前後)
問:キクタニミュージック㈱
TEL:0561-53-3007
http://www.kikutani.co.jp/contact
 

これは中域の太さが特徴で、アナログ感がいい感じですね。アンプの歪みとの相性も良かったです。タイプは全部で4つですが、自分は「mod」と「shim」が気に入りました。「mod」(モジュレーション)はトレモロとは違う暖かみと懐かしさがあって、クランチ気味に軽く歪ませた音を揺らすと気持ちいいですね。「shim」(シマー)は1オクターブ上の音を足すモードと、さらに5度の音を足すモードが選べて、前者は繊細で澄んでいます。後者は残響が力強くなって、パッド的な厚みを作れました。

それと、タイプで「reverb」を選んだ時にPreDelayのツマミを動かすと、ピッチが揺れるんですよ。僕は弾きながら音を変化させるのが好きなんですけど、これは“使える!”って思いました。他にもこのモデルは設定をプリセットして、それを切り換えられるので、ライブでの使い勝手が非常にいいのもポイントです。ジャンル的にはロック系に合っていると思いました。

【SPEC】
●タイプ:リバーブ、モジュレーション、シマー+8度、シマー+8度&+5度
●入出力端子:インプット、アウトプット
●電源:9V DCアダプター
●外形寸法:90(W)×115(D)×70(H)mm
●重量:500g
 


豊富なアルゴリズムを備えた、ミックスでも使える高音質モデル

エンプレス・エフェクツ
Reverb

¥58,000
問:㈱アンブレラカンパニー
TEL:042-519-6855
http://umbrella-company.jp/
 

 

さすがは高級機だけあって、中域に密度がありながらも音の解像度が細かいところが素晴らしいですね。入出力が共にステレオですし、ミックスでアウトボードとしても使えるクオリティを持っています。

スタンダードなものから個性的なものまで、かなりの数のアルゴリズムが内蔵されていますが、選ぶのは左上のツマミを回すだけと簡単です。とりあえず全部のツマミを12時にしておけば、どれを選んでもすぐに使える音が鳴ってくれます。

それと、EQのローとハイのポイントが的確で、なおかつ効きがいいので、幅広い音作りができます。outputツマミもあるので、ウェットとドライのバランスを変えずに音量が調整できるのも便利ですね。さらに、キャビネットシミュレーター機能を搭載しているので、宅録でギターをライン録りする人は重宝するはずです。プロの間で話題になる機会が多いブランドの製品ですけど、それも納得です。

【SPEC】
●タイプ:ホール、プレート、スプリング、ルーム、スパークル、モジュレーション、アンビエントスウェル、ディレイ+リバーブ、リバース、ゴースト、Lo-Fi、ビール
●入出力端子:インプット×2、アウトプット×2、コントロールポート
●電源:9V DCアダプター
●外形寸法:145(W)×95(D)×57(H)mm(突起物含む)
●重量:680g
 


音質と機能の両面で他の追随を許さない究極のリバーブマシン

ストライモン
BigSky

オープンプライス(¥57,000前後)
問:オールアクセスインターナショナル㈱
pedal@allaccess.co.jp
http://allaccess.co.jp
 

僕は普段、ストライモンのBlueSkyというリバーブを使っていますけど、さすがはその上位機種ですね。音のクオリティと解像度が高くて、ノイズが少ないうえに立体感があります。形がペダルなだけで、もはやスタジオに置いてあるラック型のアウトボードと同じレベルだと思いました。
リバーブタイプは定番のものからユニークなものまで12種類と豊富で、他に即戦力のプリセットも多数用意されているので、操作に不慣れな初心者でも本機の高品位なサウンドをすぐに体験できます。
それと、他のペダルリバーブでは作り込めない部分が細かく調整できる点も大きな魅力ですね。例えば、自分がよく使うシマー系では、ピッチシフト幅を28種類から選べるので、自分がイメージした通りの音にストレスなく近づけられました。
これを買ったら他のリバーブは要らないんじゃないかと思うくらい、あらゆる機能を網羅した究極のリバーブです。

【SPEC】
●タイプ:ルーム、ホール、プレート、スプリング、スウェル、ブルーム、クラウド、コレイル、シマー、マグニート、ノンリニア、リフレクションズ
●入出力端子:インプット×2、アウトプット×2、エクスプレッション、MIDI IN/OUT
●電源:9V DCアダプター(付属)
●外形寸法:172(W)×130(D)×49(H)mm(突起物含む)
●重量:664g
 

今回の試奏環境

今回は、奥村氏がライブやレコーディングで使っているシステムをそのまま使い、ボードの左下に入っているストライモンblueSkyをデモ機に置き換える形で試奏をしてもらいました。ギターは1961年製のフェンダーのジャズマスターがメインで、クリーンサウンドやアームでピッチを揺らす場合など、違ったニュアンスを試したい時にはSago製のJMタイプのモデルを使っています。

アンプについては、フェンダーBassmanのヘッドに12インチのスピーカーが2発入っているというレアなモデルを使用。音作りはクリーンが基本で、チューブ感がギリギリ出てくるくらいに音量を調整して、ピッキングのアタックが強い時だけ、少し歪む程度の設定にしています。

 


 

試奏者プロフィール

 

奥村 大(オクムラ ダイ)
ロックバンドwash?のボーカル&ギターを担当。並行して2000年頃より上田 現 in ELEに参加。ファズや空間系エフェクトを多用するギターサウンドは評価が高く、杉本恭一、HiGE、a flood of circle、木村カエラ、クリープハイプ、Go!Go!Vanillas、辻 仁成など、数多くのアーティストのライブやレコーディングで活躍している。
 

この記事は、月刊サウンド・デザイナー2018年10月号に掲載されています

ここで紹介しているリバーブに関する記事は、ギタリストのためのレコーディングマガジン「サウンド・デザイナー2018年10月号に掲載されています。

リバーブは、ただ音を響かせるだけでなく、様々な表情や味わいを楽曲に加えてくれるエフェクターです。10月号の大特集「リバーブを知る。」では、宅録の必須エフェクト「リバーブ」を61ページに渡って徹底紹介。本特集では20世紀の名盤を彩ってきた様々なリバーブの魅力を紐解くと共に、宅録での音作りに役立つ様々な活用法を紹介しています。

また、プロのレコーディングスタジオに行かないと実物を見ることができない、EMTのプレートリバーブ140やAKGのスプリングリバーブBX20など、普段皆さんがDTMで使っているプラグインに入っているプリセットの、元になっている歴代の名リバーブも多数紹介しています。

リバーブの知識を深めたい方、リバーブを効果的に自分の楽曲で使いたい方は必見の特集です。

【主なコンテンツ】
・リバーブヒストリー〜年代別タイプとサウンドの特徴〜
・“粋な”リバーブが聴ける名盤14選
・時代を彩ってきたハードウェア・リバーブ展覧会
・行方洋一(エンジニア)が惚れたリバーブの名器
・NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS)インタビュー
・リバーブプラグイン12機種をチェック
・注目のペダルリバーブを徹底試奏 by 奥村 大(wash?)
・初めてのリバーブ使い方講座
・“名曲の響き”をプラグインで再現!

 

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