規格外の低音が出る小型モデルが日本上陸。

異色の8面体モニタースピーカー、reProducer Audio「EPIC 5」徹底レビュー

異色の8面体モニタースピーカー、reProducer Audio「EPIC 5」徹底レビュー

2019/03/15


2015年に設立されたドイツの新興ブランド「リプロデューサー・オーディオ」から、まったく新しいデザインのニアフィールド・モニタースピーカー「EPIC 5」が発売されました。早速、音楽プロデューサー/作・編曲家/エンジニアとして活躍する鈴木Daichi秀行氏(以下Daichi)に、EPIC 5の試聴を依頼。そのサイズと価格帯を優に超えるポテンシャルの高さが見えてきました。

reProducer Audio EPIC5
3年をかけて開発された同社初の製品。フラットな周波数特性、全帯域における速いトランジェントレスポンス、広大で自然なダイナミックレンジ、低ノイズ、低歪みという、正確なサウンドをもたらすための条件を備えている。周波数特性は45Hz〜46kHz(±10dB)、ウーファーサイズは5.25″、寸法は310(H)×190(W)×240(D)mm(スパイク装着時)、重量は5.2 kg(1本)。オープンプライス(¥150,000前後/ペア)

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鈴木Daichi秀行 作曲やアレンジ、プロデュースなど、多岐に渡って才能を発揮する他、ギターやベースなどのマルチプレイヤーとしても活動。モーニング娘。をはじめ、YUI、絢香、瀬川あやか、家入レオ、SMAPなど、数々の大物アーティストの楽曲の他、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」などのアニメソングも手掛けている。


パッシブラジエーターのおかげで小型なのに低音が結構出る

──このEPIC 5はすごく個性的なルックスをしていますよね。

Daichi:不思議な形ですし、フロント面にちょっと上向きで角度が付いていますね。説明書によると、この角度を変えずにスピーカーを耳の高さに合わせるのがベストなセッティングみたいです。そうすることで、高音と低音の耳に届くスピードの差を合わせているのだと思います。

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EPIC 5のフロント面はやや上向きに角度が付いている。この傾斜を保ったまま、顔の高さにくるようにセットするのが、本来のサウンドでモニターするためのポイントだ

──設置はスムーズにいきましたか?

Daichi:底面にスパイクを付ける必要がありますけど、その代わりインシュレーターは必要ありません。説明書を見ると、ニアフィールドで使うことを想定していて、左右の距離を離し過ぎない方がいいみたいです。で、少し上を向いているけど、それを垂直にしてはいけないんですね。確かに、スピーカーの角度によって音の印象が変わって、指定された位置で聴いた方が低音が出るんですよ。スイートスポットがそんなに広くないから、まさに自分専用のモニタースピーカーという気がします。

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EPIC5を浮かせるためのスパイク(6本)と、スパイクの受け皿となるシリコンパッド(8個)が付属する


──しっかりと計算されている製品なのですね。その他に特徴的なところは?

Daichi:パッシブラジエーターが底面に付いているところですね。パッシブラジエーターが付いているモニターは、サイズが小さくても低音が結構出るんですよ。だから、今時の打ち込み系の音楽とか、キックがバシバシ出るような音楽もしっかり再生できます。通常、これくらいコンパクトなモニターだと、低音が十分に聴こえないのが普通なんですよ。

──「パッシブラジエーター」とは、どういうものなのでしょうか?

Daichi:大抵のモニタースピーカーには「バスレフ」という穴が空いていて、そこから低音を逃すことで、実際に出ている以上の低音感を出したり、音の振動を逃したりするんです。ただ、バスレフは大体モニターの背面にあったりするので、壁とスピーカーの距離をある程度離さないと音が反射しちゃうんです。それに対して「パッシブラジエーター」は、低音を外に逃がすのではなく、吸収する働きがあるらしくて、壁の近くでも問題なく設置できるという最近の技術なんです。

──作業面でのメリットもありますか?

Daichi:バンドのミックス作業でEPIC 5を使ってみましたけど、リズム作りがしやすいですね。ベースとドラムのレンジの兼ね合いとかがよくわかります。通常、このくらい小さなスピーカーだと、キックがどこまで出ていて、ベースがどこまで出ているかが判断しにくいので、サブウーファーを加えたりするんですけど、逆に低音が出過ぎるとブーミーになって、アタック感がモワッとなるという難点があるんです。でも、EPIC 5は全体的にタイトなのに低音が見えるという、理想的な音ですね。

──補正用のEQも付いていますね。

Daichi:低音がかなり出るので、今はローを目盛り2つくらい下げています。これは設置環境にもよりますけど。

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パッシブラジエーターはEPIC 5の底面に装着されている。そのため、使用時には付属のアルミ製スパイクを装着する。これにより接地面との距離を稼ぐと共に、ラジエーターを保護してくれる

高域がかなり上まで出ているし、低域も出ているからバランスがいい

──サウンドのキャラクター的にはどんな傾向でしょうか?

Daichi:わりと万能な感じだと思います。個性がすごくあるわけではなく、生っぽい音を聴いても気持ちいいし、聴こえる音域が広い。あと、結構大きな音が出せますね。そのへんもパッシブラジエーターが活きているのかな。ウーファーで低音を鳴らすモデルは、音量をデカくすると歪んでしまうけど、EPIC 5は低音が歪むことなく大きな音が出せます。

──音量を大きくする場面というと?

Daichi:音圧感や全体のレンジ感を確認する時でしょうか。音量を大きくした方が、やはり低音が見えやすくなりますから。スピーカーって、ある程度大きな音量を出さないと、アンプとかの性能が十分に発揮できないんですよ。このEPIC5は、ボリュームを大きくすることもできるし、小さくしても聴こえ方のバランスがいい感じですね。

──高域も十分に出ていますか?

Daichi:高域もかなり上まで出ていますけど、低域がしっかり出ているからバランスがいいんですよ。低音が出なくて高域だけがよく出るモニターだと、音がシャカシャカして耳が疲れちゃうんです。でも、EPIC 5はドンシャリではなくて、ちゃんと低音も出ているので疲れにくいですね。この価格帯の製品としては、すごくよく出来ています。こういう製品は意外となかったなという印象です。

──どういう人にオススメですか?

Daichi:今って、自分1人で完結するタイプのクリエイターが多いですよね。例えばダンスミュージック系の人とかは、楽曲を作るところから、ミックスして完成させるところまで全部1人でやるじゃないですか。そういう人には、とても使いやすいスピーカーだと思います。楽曲制作/レコーディング/ミックスの、どの作業でもバランス良く使えます。

──持ち運びもしやすそうですね。

Daichi:そうですね。フライトケースが付いていますし、持ち運びも想定されていますね。重量が軽めなのもいいですね。

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