新進気鋭のマイクブランド
Roswell Pro Audioが開発したコンデンサーマイク「mini K47」「Delphos」「Colares」徹底レビュー
Roswell Pro Audioが開発したコンデンサーマイク「mini K47」「Delphos」「Colares」徹底レビュー
2019/02/15
ラージダイアフラムのコンデンサーマイクを次々と発表しているロズウェル・プロ・オーディオ。中でもコストパフォーマンスに優れた同社の3モデルを、2018年にMAMALAID RAG「三日月の夜」でプロ音楽録音賞優秀賞を受賞した、スタジオハピネスの平野栄二氏にチェックしてもらいました。
〈L to R〉
mini K47 コストパフォーマンスに優れたコンパクトなモデル。バランスのいいサウンドが特徴で、耳障りな高域の周波数成分を抑えつつ、ボーカルを録音した際の歯擦音やリップノイズも低減してくれる。また、エレキやアコギに使うと、重量感のあるローを収音できる。オープンプライス(¥38,000前後)
Delphos コンデンサーマイクの名器ノイマンU67型のカプセルを使用。欧州産のコンデンサーと未使用の貴重なビンテージパーツによるトランスレス回路を採用。ニュートラルな周波数特性と高い入力感度、低セルフノイズ、透明感のあるサウンドを実現している。オープンプライス(¥110,000前後)
Colares ビンテージマイクの名器であるテレフンケンELA M251にインスピレーションを受けて開発されたモデル。251が持つビンテージトーンを継承しつつ、現代の音楽にマッチした音色と、セッティングやメンテナンスにストレスがない扱いやすさを実現した。オープンプライス(¥156,000前後)
平野栄二(ひらのえいじ) 1990年代にパーカッション奏者として、ラヴ・タンバリンズやCOOL SPOONといった渋谷系を代表するバンドに参加。その後、Happiness RecordsとStudio Happinessを設立し、Saigenjiや流線形など数多くのアーティストの作品をリリースする。その傍らでプロエンジニアとしても活動しており、メジャーとインディーズなどのフィールドを問わず、多くの作品を手掛けている。
誇張が少なくて扱いやすい素直な音が魅力の「mini K47」
「mini K47」はサスペンションが非常に使いやすいですね。しかも本体が意外とズッシリしていて、セッティングがラクでした。見た目の印象からコンパクトな音像を想像していたんですけど、上から下までしっかり収音できて、破綻のない使いやすい音ですね。周波数グラフを見ると、2〜6kHzあたりが張り出していますけど、そんなに誇張されてはいません。この価格帯のマイクって、いい音っぽく聴かせるために、あらかじめ周波数帯域を誇張しているようなものが多いんですけど、mini K47にはそういった要素が感じられませんでした。
サウンドは柔らかい印象で、むしろもうちょっとハイが出ていてもいいんじゃないかなと思いました。ですが宅録で使うなら、mini K47の音は後からミックスで処理がしやすいと思います。
色付けはさほど感じられませんでした。原音再生という点では少しクセがありましたが、アコギのストロークやキックの外音に使ってみたら、これが意外とハマります。mini K47を2本揃えて、ドラムのオーバーヘッドに使ったら、ノイマンU87より柔らかい音で録れそうですね。ピアノとかのオンマイクにステレオで使っても、音がそんなに暴れないんじゃないかな。メインパートに使うよりは、アンビエンスだとか、オケの後ろに混ぜたいものに使うといいかもしれません。オケに入ると、いい意味でナローというか、落ち着いた感じの音になります。
向いているのはポップス、ロック系かな。ボーカルなら、しっかり声を張って歌うタイプに合うと思います。破綻せずに音を拾ってくれるし、高域が耳障りにならないのがいいですね。
mini K47とDelphosは、いずれも同じタイプのサスペンションホルダーを採用。セッティングがラクなうえに、音源に対してダイアフラムをかなり近づけることができるというメリットもある
スピード感が早くてヌケがいい、メインパートに最適な「Delphos」
「Delphos」(デルフォス)はナチュラルな音で、ハイがキレイに伸びてくれます。低域はノイマンU87と比べると若干少なめですけど、トランジェント特性も良くクセがなくて、U87よりナチュラルに録れる感じがしますね。リップノイズが乗りにくい点もいいです。
今回はCM音楽の歌録りで使ってみましたけど、上の帯域が素直に録れて気持ち良かったです。無指向性にしてバイオリンを録ってみても、イヤ味がなくてすごくいい感じでした。
周波数帯グラフを見ると、5kHzあたりの耳に痛い部分をうまく抑えてくれていますね。音に色付けは少なく、かといって無機質でもなくて、高域が耳に突かなくて使いやすいです。一聴して、僕らエンジニアが現場で聴き慣れている音であるように感じました。音のスピード感も早くて、ものすごく良かったです。ペアで揃えて、ドラムのオーバーヘッドやパーカッションに使ってみたいですね。ピアノにもいいと思います。
オケに入れた時のヌケも良かったです。今回録ったCM音楽は、ボーカルの声質が明るめのハッキリした感じで、オケがわりと柔らかいアレンジだったので、むしろ声が抜け過ぎちゃうくらいでした。存在感のある音で録れるので、メインで聴かせたいパートにいいかもしれません。他社のハイクラスのマイクに匹敵する感じです。初心者で、ちょっといいマイクに挑戦してみたい人にオススメです。
音の歪み感もないですね。ドラムのルームマイクとして、正面3mあたりに立ててみたら、シンバルからキックまでまとまりのいい、フォーカスの合ったサウンドに捉えてくれました。
Delphosは単一指向性と無指向性の2パターンを使い分けられるのが特徴でもある。左は単一指向性と無指向性を切り替えるためのスイッチ。右は−10dBのパッドスイッチ
ローのボトム感をしっかり捉えるチューブライクな音質の「Colares」
「Colares」(コラレス)ではボーカルとアコギを録ってみましたが、上から下までたっぷり拾ってくれました。チューブマイクではないのに、真空管っぽいサラサラした高音の質感があります。ダイナミックレンジは広くて、AKG C12やテレフンケンELA M251の高域の伸びに近いですね。
スモーキーな雰囲気のジャズボーカルに使ってみましたが、とても気持ちいいボトムが録れるのに驚きました。ノイマンやAKGのビンテージマイクにちょっと寄せているのかな。Colaresはチューブサウンドで録れるのに、実際には真空管を搭載していないので、真空管のコンディションに左右されずに使えるところがいいんですよ。ビンテージの良い点を踏襲しながら、モダンなエッセンスも付加された素晴らしいマイクだと思います。
アコギのアルペジオにもすごく合います。あまり密度が濃い音ではないのですが、ローのボトム感をしっかり捉えてくれて、高級なマイクのようです。高級なマイクというのは、低域をうまくキャプチャできるんですよ。
あと、−10dBのパッドが付いているんですけど、これがたんなるパッドではなくて、オンにすると2次倍音を減少させて、質感が全然変わるんです。オフだとチューブライクなビンテージサウンドで、オンにするとよりクリアでモダンなサウンドになります。音量が下がる分、マイクプリ側で音の色付けができるのも便利ですね。
3段階のフィルターも、たんなるハイパスではなくて、独自のロールオフ式を採用しています。シェルビングEQのような感じで、バッサリとカットしない分、中低域の質感をほど良くコントロールできるのが便利だと思いました。
左が2次倍音を減少させる働きを持つ−10dBのパッドスイッチ。右はローをロールオフさせる3段階のフィルター。一番上がオフで、真ん中が150Hzを起点に低域をカット、一番下は60Hzを起点に低域をカットする
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