ユニバーサル・オーディオのDSPプラグイン

UAD-2がv9.8でmacOS Mojaveに対応。
新登場のプラグイン3モデルを徹底レビュー

UAD-2がv9.8でmacOS Mojaveに対応。 新登場のプラグイン3モデルを徹底レビュー

2019/04/15


Apollo XやApollo Twin、ARROWなど、人気のユニバーサル・オーディオ製品で使える人気のDSPプラグイン「UAD-2」。同ソフトの最新バージョン9.8が先ごろ発表されました。早速その中身をチェックしていきましょう。

文:堀 豊(STUDIO 21)

$149

今回のUADソフトウェア v9.8では、最新macOSの「Mojave」に対応しました。Mojaveにインストールする際には、手動で許可が必要な項目が増えているので、必ずサポート情報を確認してからインストールを行ないましょう(サポート情報はhttps://hookup.co.jp/support/posts/27250で公開中)。

便利な機能としては、Consoleアプリケーションが画面前面に立ち上がっている時でも、DAWソフト側のコントロール(再生/停止など)が可能になりました。これにより、Consoleアプリケーションでゲインやモニターバランスを調整しながら、トラックのパンチインができるなど、複数のディスプレイがなくても今まで以上に快適なオペレートができます。

また3つの個性的なUADプラグインも同時にリリースされました(UADプラグインはUniversal Audioのホームページより購入できます)。以下からはそれぞれをレビューしていきます。

V76 Preamplifier

アビーロードスタジオや放送局のプリアンプのリファレンス


1950年代に、ドイツのラジオ放送局用に設計・開発された数々のプリアンプの中でも、非常に人気のある機種のひとつであった、真空管式のテレフンケン「V76」をモデリングした製品です。

実機はヨーロッパ中の放送局や、アビーロード・スタジオのような一流の音楽スタジオに導入されて、長らくプリアンプのリファレンスモデルとして扱われてきました。ローインピーダンスの信号をノイズレスで扱うために、3~76dBのステップ式のゲインと、ローパス/ハイパスのブロードバンド・フィルターを備えています。メーターユニットであるU70は画面右側に配置され、こちらでアウトプットボリュームを調整することが可能です。

まずは男性ボーカルで試してみました。低音の太さとハイミッドのヌケが抜群で、スピード感もしっかり感じることができました。ゲインを上げていくと、音楽的で独特のバリバリとした飽和感が出てきます。

次に、エレキギターのアンプ録りに使ってみました。アンプにマイクを立てて、このV76をUnison(プリアンプなどにおいて重要なインピーダンスやゲイン、アナログ回路のふるまいなどを忠実にエミュレートし、オーディオインターフェイスのマイク/Hi-Zインプット回路を制御する技術のこと)プリアンプとして立ち上げてみます。オフマイク気味にして、V76のフィルターを組み合わせることで、いい意味で「枯れた」ビンテージ感のある音作りをすることができました。

ストリングスにも効果的です。ただそのまま通すだけではなく、原音と歪みを強くしてパラレルで混ぜることでサウンドに立体感が出せます。

最後に、音とは関係ないですが、画面の金属のバーをクリックすると、パラメーター表記がドイツ語になります。こういう遊び心も素晴らしいと思います。

Antares Auto-Tune Realtime Advanced

遅延なくピタッとかかる、ライブで使える反応の良さ

$299

「Auto-Tune Realtime Advance」プラグインは、今や欠かすことのできないボーカルエフェクトの定番となった「オートチューン」効果を、極小のレイテンシーでリアルタイムでかけることができるプラグインです。本来はピッチの補正目的で開発されたAuto-Tuneですが、あまりにも直し過ぎると独特の「荒れた」ロボット声のようになることから、「ケロる」という言葉が生まれました。当時エンジニア的には「なるべくケロらないように自然に直す」のが腕の見せどころでしたが、あえて強く補正をかけることでエフェクティブな効果が出せるので、いつの間にかそれが定番となりました。その後、技術的にも自然な音質になっていったのですが、逆にエフェクティブに「エグく」かかる、その当時(バージョン5)のサウンドが、クラシックモードとしてこのプラグインにも搭載されています。

実際にマイクを片手にAuto-Tuneをかけて、RETUNE SPEEDを「100」、スケールを半音ではなく「マイナー」にしてみると、処理の遅れをほぼ感じることなくピタッとAuto-Tuneがかかります。ApolloやArrowがあればライブパフォーマンスでも十分使える処理速度です。キモは、音域に合わせてインプットタイプを合わせることで、これが合っていないと本領が発揮できません。

その他、ADVANCEビューに切り替えると、ビブラート時のレイトやフォルマントのキツさ、スケールの指定など、細かい設定をすることができます。

Diezel Herbert Amplifier

熟練のエンジニアが作るギターサウンドを手軽に得られる

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$149

「Diezel Herbert AMPLIFIER」プラグインは、ディーゼルの3ch仕様のモダンなギターアンプ「Herbert」を、忠実にモデリングしたプラグインです。その素晴らしいギターサウンドを、レイテンシーを感じることなくプレイすることができます。

チャンネル1はクリーン、2がクランチ、3がハイゲインという構成です。この1台で幅広い音色をカバーすることができ、特徴的なミッドカットコントロールも備えています。特にクリーンチャンネルは、カッティングからアルペジオまで、レンジが広い音で、弦のアタック感がキレイに鳴ってくれます。内蔵のディレイとの相性も抜群です。

ハイゲインなch3では、ドロップチューニングや7弦ギターのヘヴィな低音でも、音程や輪郭をしっかり感じることができます。テンポが早く、音数の多いオケに入れても存在感が出せますね。

同社のアンプシミュレーション・プラグイン全般に言えることですが、キャビネットのIRシミュレーションが非常に優秀です。熟練のエンジニアがキャビネット、マイク、アウトボード、部屋の環境など、様々な要素を組み合わせて作るギターアンプ・サウンドを、このプラグインなら手軽に得ることができます。

使用するギターと相性のいいキャビネットモデルを選ぶことができれば、かなりのサウンドバリエーションを作ることができるでしょう。ちなみに、中央にある「RC info」をクリックするとキャビネットの種類、使用したマイク、プリアンプ、EQの種類が確認できます。

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