ユニバーサル・オーディオ

UADプラグインがかけ録りできる、ギタリストのためのオーディオインターフェイス「Arrow」徹底レビュー

UADプラグインがかけ録りできる、ギタリストのためのオーディオインターフェイス「Arrow」徹底レビュー

2019/04/15


ユニバーサル・オーディオのDSPプラグイン「UAD-2」が利用できる、人気のオーディオインターフェイス「Arrow」。人気の理由のひとつが、ギター録音向けの機能が充実していることです。Arrowを普段使いしているギタリストの小川悦司さんに、その魅力を教えてもらいました。

文:小川悦司

Universal Audio Arrow オープンプライス(¥58,000前後)

Universal audio arrow

コンパクトな筐体にUnison対応プリアンプを2系統、ヘッドホンアウトとモニターアウトをそれぞれ1系統ずつ搭載した、Thunderbolt 3対応のオーディオインターフェイス。Realtime Analog Classics Plug-inが付属する。

もう何台目になるでしょう……。筆者が今まで30種類以上のオーディオインターフェイスを使ってきて思ったのは、結局求めるところは「音の良さ」と「利便性」でした。今でも私のスタジオにはオーディオインターフェイスが10台ほどあり、それらを用途によって使い分けています。特に使用頻度が高いのは、Pro Tools用のアビッド「192  I/O」と、ユニバーサル・オーディオ「Apollo」、そしてここで取り上げる「Arrow」です。

Arrowはクラス以上のサウンドクオリティがありますし、特にギター録音に便利なので、いつもツアーに持って行きます。理由は、DAWソフトのバッファサイズに関係なく、本体のみでアンプやエフェクトが使えることと、Thunderbolt3接続だけで電源アダプターが必要ないこと。そして、可搬性に優れていて筐体が丈夫だからです。実際、これまでMacBook ProとArrowだけで何トラックものギターを録ってきました。ちょっとしたメモやデモ曲はもちろん、実はCDになっている作品もこれだけで済ませているものが少なくないのです。

また、Arrowには最初からUADプラグインが付属します。ギターアンプとしてはマーシャルのPlexiが、またチューブ・プリアンプのUA 610-Bやスタジオコンプの定番1176も入っているので、エレアコやアコギのマイク録りもこれだけで対応できます。

また、ライブで同期演奏が必要な場合も、ArrowならPA送りの回線とヘッドホンで別々の出力がアサインできます。ドラマーにはクリック入りの2ミックスを送りつつ、PAにはクリックなしのオケを送ることも簡単にできます。しかも電源がいらないのでセッティングとバラシが早い!! 外使いの話になってしまいましたが、ここから先はArrowの魅力をかいつまんで紹介しましょう。

Unisonテクノロジーを採用したHi-Z端子

universal audio arrow

ギター録音にArrowが便利な理由は、先に挙げた「手軽さ」という部分もありますが、もう少しスペック的な理由もあります。ハイインピーダンスのギターをそのまま接続できるHi-Z端子が前面に装備されていて、しかもUnisonテクノロジー(プリアンプなどにおいて重要なインピーダンスやゲイン、アナログ回路のふるまいなどを忠実にエミュレートし、オーディオインターフェイスのマイク/Hi-Zインプット回路を制御する技術)によって、アナログの実機に極めて近い挙動をする仕様になっている点がギターの音作りに向いているからです。

Unison対応のギターアンプ・シミュレーター

marshall plexi

付属するUADプラグイン「Marshall Plexi」は、パネルにJMPというロゴがあるので、おそらくは1967年後半以降のモデルをエミュレートしたもののようです。Arrowでは通常、DAWソフトに送る前にこれを使って録音する「かけ録り」をするのが一般的です。これもUnisonの実力がなせることなのでしょう、ギターのボリュームに対するアンプの挙動が実機に近いと言えます。

ビンテージ・ディストーションのモデリングも標準装備

uad raw

ギターサウンドを歪ませるのに、ペダルタイプのコンパクトエフェクターを使っている人は少なくないでしょう。アンプで歪ませるのとはまた違った良さがあるものです。Arrowの標準バンドルプラグインにはプロコ「RAT」のモデリングが用意されています。これはPlexiと組み合わせて使うと、かなり幅の広い歪み系サウンドを得ることができ、なかなかのグッドチョイスかと思います。

パソコンからのバス電源で動作

universal audio arrow

最初にも書きましたが、私がArrowの最も便利だと思っている点がここ、Thunderbolt3(以下T3)からのバス電源で動く点です。気をつけなければいけないのは、Thunderbolt2からの変換アダプターやハブを使ってはいけないということです。それと、USB3.1の端子にも同じ形のものがありますが、それもNGです。必ずT3端子に直結しましょう。私の場合はArrowをMacに直結し、他のT3端子にハブを付け、Macへの電源の供給やUSB端子の増設をしています。

ギター録音の定番コンプ「1176」をかけ録りできる

uad 1176

録音時にコンプやリミッターを薄くかけておくのはレコーディングのセオリーです。Arrowではスタジオの定番コンプ「ユニバーサル・オーディオ1176」をプラグインで使うことができます。これ、実はダイナミクスを抑えるだけではなく、音自体もいい感じに変わるのです。今でもこの実機がスタジオの定番として使われているのは、やはり原音が「魅力的なサウンドに変化する」からでしょう。


An Ever-changing Scen

小川悦司(オガワエツジ)

DTMのスペシャリストとして、これまでに関わった出版物の総発行部数は1000万部を超える。音楽プロデューサーとしても数々の作品に関わっており、4月24日には最新プロデュース作品、米澤美玖『Exotic Gravity』をキングレコードより発売予定。また、ギター以外をすべてDTMで制作したアルバム『An Ever-changing Scene』(写真)もAmazonにて好評発売中!

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