ペダルエフェクトの達人 YOU(デッド・エンド)が徹底試奏!
音ヌケが良くなる歪みコンパクトエフェクター9台レビュー
音ヌケが良くなる歪みコンパクトエフェクター9台レビュー
2019/04/15
試奏をしてくれた足立祐二氏
ギターをレコーディングする際にポイントとなるのが、バックトラックに負けずに、いかにギターの音が前に出てくるかということです。そこで編集部が、ギターの音を引き立たせてくれる歪み/ブースター系のペダルを計9台セレクト。エフェクターマニアとしても知られるデッド・エンドのギタリスト、YOUさんが徹底的に音質を検証してくれました。また、この試奏で使用した、新世代の真空管「Nutube」を搭載しているVOXのアンプ「VX50 GTV」も特別にチェックしてもらいました。
ピックアップに合った最適な音が得られるドライブペダル
カール・マーチン
DC Drive(オーバードライブ)
¥13,800
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
https://www.hookup.co.jp
これは低価格なのに、すごく良かったですね。ゲインは高めですが、ドライブを上げていっても芯がちゃんと残っています。歪みが多めのオーバードライブが欲しい人に向いていますね。ドライブを下げてブースターとして使ってもバランスが良くて、原音が崩れません。トーンの効きがアンプっぽいところもいいですね。思い通りに変化するし、可変幅が広過ぎないので音作りがしやすかったです。
FATとREGの切り換えスイッチがあって、ギター1本で弾いていると、心情的に800Hzあたりが太くなるFATを選びたくなるんですが、ギターが太過ぎるとオケの中で抜けてこなくなることもあるので、そういう時はREGにするといいと思います。ディマジオとかハイパワーのハムバッキングならREGで、シングルコイルならFATがオススメです。
スペック
●入力インピーダンス:1MΩ
●出力インピーダンス:560Ω
●電源:9V DC/40mAパワーサプライ(センターマイナス)
●寸法:60(W)×115(D)×50(H)mm
●340g
原音が崩れず、芯のある優秀なドライブサウンド
ボス
SD-1W(オーバードライブ)
オープンプライス(¥15,000前後)
問:ローランド㈱お客様相談センター
TEL:050-3101-2555
https://www.roland.com/jp/
これはボスのクラフトマンシップの結晶、「WAZA CRAFT」シリーズからの1台です。今回試した中では一番芯が残ってくれるタイプで、原音が崩れないから、歪ませずにブースター的に使うのにも向いています。その場合はミッドが厚くなって、単音で弾いてもオケの中でヌケる音になります。あと、ブースターとして使う場合、ギターのボリュームを下げると、ナチュラルにゲインが下がってくれて、そこも使いやすかったです。
トーンで様々な音作りが可能で、12時から13時側へ回せば歪み感が増して音が食いついてきますし、逆に11時側にするとマイルドになります。モード切り換えはC側に倒すと少しパワフルになりますが、その変化が極端ではなくて絶妙なところも扱いやすいですね。今回試奏して、久しぶりにエフェクトボードにボスのペダルを入れたくなりました。
スペック
●入力インピーダンス:1MΩ
●出力インピーダンス:1kΩ
●電源:アルカリ電池(9V)またはマンガン電池(9V)、ACアダプター(別売)
●寸法:73(W)×129(D)×59(H)mm
●430g
演奏のニュアンスがダイレクトに出せる高品位なペダル
TDC-you
008 MILD BLUES(オーバードライブ)
¥40,000
問:スタジオユー㈱
TEL:06-6383-8565
http://www.tdc-effector.com/index.html
これはまるでアンプのグレードが上がったような気にさせる、まさに“Theクランチ”っていう感じの良質な音で、ドライブを高めにしても解像度が高くて、しかも押し出し感がすごくあります。ピッキングのニュアンスも豊かに表現してくれて、本当に弾いた音がダイレクトに出てくる感じですね。基本的にはミッドが出ているペダルなので、特にシングルコイルのギターと相性がいいと思います。
EQの効きも良くて、ミッドは周波数帯を変えられるので、音作りの幅が広いところも強みです。アンサンブルの中でボーカルとかとぶつかる中域を調整できるのは、レコーディングで有利だと思います。あと、ノイズが圧倒的に少なかったです。今回の中ではピックアップの音が一番素直に出ていて、値段が高いだけのことはあるなと思いました。
ピッキングに対するレスポンスが速いクリーンブースター
ライムトーン・オーディオ
irodori(ブースター)
¥27,500
問:東京エフェクター
TEL:03-6804-2591
https://tokyo-effector.jp
ものすごくクリーンなブースターですね。ブーストがゼロの状態でもオンにすると、音がプッシュされてハリが出ます。音量を持ち上げるだけでなくて、レベルを上げるとほんの少し歪むんですが、僕はゼロから9時くらいの間がちょうど良かったです。それと、ピッキングに対する反応がすごく速くて、ニュアンスがちゃんと出るから、指で弾いていてもすごく楽しかったです。これを通すと、安価なアンプが高級ブティックアンプに変身するくらいの威力がありますね(笑)。
あと、ブースターは歪み系の前に入れることが多いですけど、これはコーラスやディレイを通した後、一番最後につないでもいいかもしれないです。ペダルを直列に何台か並べていくと音が鈍っていくんですが、それを補いつつパンチを加える使い方ができると思います。
スペック
●入力インピーダンス:1MΩ
●出力インピーダンス:1kΩ
●電源:9V DCアダプター(センターマイナス)
●寸法:69(W)×111(D)×46(H)mm
●230g
トランスを搭載し、良質なチューブアンプのような質感が特徴
LAAカスタム
ST81(ブースター)
オープンプライス(¥29,500前後)
問:オールアクセスインターナショナル㈱
pedal@allaccess.co.jp
http://allaccess.co.jp
このブースターは弾いていて、良質なチューブアンプみたいなサウンドと操作性を感じました。僕が学生の頃に聴いていた洋楽ロックを思い出させるようなサウンドで、ピックアップやギター本体の特性がそのまま表われます。大きなブーストのツマミが目立ちますが、背面にトレブルとベースのツマミがあるんですね。これがとても優秀で、アンプのトーンのような音質変化が得られました。これならピックアップとかの特性に合わせて、出音を微調整することも可能ですね。
あと、ギターのボリュームを下げると歪みが減るんですけど、上の帯域が落ちないから音がこもらないんですよ。しかも、おいしい中域はありつつも、ボーカルの帯域と被る余計なところがない。なので、歌のバックで弾くコードプレイを録る時に使うのもいいと思います。
スペック
●入力インピーダンス:180kΩ
●出力インピーダンス:600Ω
●電源:DC9V〜18Vパワーサプライ(センターマイナス)
●寸法:64(W)×128(D)×67(H)mm
●347g
ミッドが前に出てくるバンドサウンドにピッタリな1台
ラジアル
Regency(プリアンプ/ブースター)
¥24,000
問:㈱エレクトリ
TEL:03-3530-6181
https://www.electori.co.jp
このプリアンプは、中域がメインの音作りをしていますね。とは言えハイとローもあって、プリアンプのゲインを上げても音が潰れないので、ブースターとしても使いやすかったです。適度なゲインと広過ぎないレンジがバンドサウンドにピッタリで、ミッドがしっかりしているから歪ませなくても音がちゃんと出てくるんです。LOW-MIDのスイッチが付いているので、ギタリスト的にはオンにしたくなりますけど、ハイパワーなピックアップならオフでも十分ですし、僕ならシングルコイルみたいなパワーがないピックアップの時にオンにしますね。
あとすごいのは、どんな設定にしても、ほぼノイズが出ないんです。ハイゲインアンプ向きっていうことで、メサブギーのRectifireのモデリングでも試しましたが、それでもノイズは出ませんでした。
スペック
●入力インピーダンス:220kΩ
●出力インピーダンス:ブーストオン時150Ω/ ドライブオン時1kΩ
●電源:9V DC/60mAパワーサプライ(センターマイナス)
●寸法:108(W)×105(D)×50(H)mm
●800g
チューブアンプ的なサチュレーションが手軽に得られる
ASW
AGSS-202(サチュレーター)
¥24,000
問:A.S.W
info@a-soundworks.com
http://a-soundworks.com
サチュレーションのツマミを上げていくと確かにドライブするんですが、ブースターとも違うし、あまり歪まないオーバードライブとも違いますね。今まで僕が経験したことがないタイプのペダルです。
特に気に入ったのがコードを弾いた時の音で、少しボリュームを下げた時にすごくまとまった音になるんですね。例えるならば、いいチューブアンプを適度にドライブさせたような、70年代の洋楽ロックみたいなサウンドで、ナチュラルなサチュレーション感が得られるんです。オンにしてもローが膨らんだりハイが固くならずに、まろやかに音が前に出てきます。他の歪み系ペダルと組み合わせて使ってみたいですね。すごく良質なペダルだと思いました。音もそうですが、ツマミが木になっていたりと、見た目も個性的で印象に残りました。
スペック
●入力インピーダンス:100kΩ
●出力インピーダンス:2.7kΩ
●電源:9V〜12V DCアダプター(センターマイナス)
●寸法:65(W)×120(D)×55(H)mm
●550g
1台で幅広い歪みサウンドを得られるのが魅力
フォックスギア
Fenix(ディストーション)
¥11,000
問:㈱オカダインターナショナル
TEL:03-3703-3221
http://www.okada-web.com/
このモデルは、歪み方やトーンの変化が個性的で、とてもユニークなディストーションだと思いました。実際に色々なセッティングを試したところ、ゲインを10時半から11時半に設定したところが僕にとってのスイートスポットで、リフやコードバッキング、ソロと万能に使えるハリとツヤのあるサウンドが得られました。それよりもゲインを低くすると音質が柔らかくなって、11時半を超えると歪みが増えていきますね。で、13時を超えると音がザラついてくるんです。
面白かったのは、強く歪ませた時にピッキングの強弱で歪みの量以外に、音質も変化する点です。強く弾くとザラつきが増えて、弱いと素直な音になるんですね。トーンはトレブルを最大、ベースが11時、ミッドが14時という設定が良かったです。ディストーションだけではなく、ファズ的にも使えるペダルです。
スペック
●入力インピーダンス:1MΩ
●出力インピーダンス:10kΩ
●電源:9V〜12V DCアダプター(センターマイナス)
●寸法:60(W)×120(D)×30(H)mm
●200g
ブースターを内蔵したナチュラルなディストーション
フェンダー
Full Moon Distortion(ディストーション)
¥20,000
問:フェンダーミュージック㈱
TEL:0120-1946-60
https://fender.co.jp
これはスイッチをオンにした瞬間に「いい!」って思いました。僕はアンプの歪みが好きなのでディストーションはあまり使わないんですが、これはよく歪むオーバードライブ的なサウンドで、ゲインを上げても音がナチュラルなんですよ。Twin ReverbとかJC-120といったクリーン系のアンプの前に入れると絶対にいいでしょうね。ツマミは多いですけど、ギタリストにはお馴染みのものばかりなので、何の抵抗もなく使えると思います。2つのミニスイッチも効果がわかりやすくて、特にシングルコイルのギターでオンにすると音が厚くなります。
ブースター機能も入っていて、オンにすると3ボリュームのアンプのような感覚で音作りができるんですね。ブースターを踏んでも音がグシャッとならないので、僕ならバッキングとソロの両方でブースターをオンにして使います。
スペック
●入力インピーダンス:500kΩ
●出力インピーダンス:10kΩ
●電源:9V電池、9V DCアダプター(センターマイナス)
●外形寸法:101(W)×125(D)×62(H)mm
●540g
重さわずか4.1kgのチューブアンプ
VOX VX50 GTVの音質を検証
余計なローが出ないので音がスッキリしているし、弾いていて楽しい!
VOX
VX50 GTV(真空管アンプ)
¥27,500
問:㈱コルグお客様相談窓口
TEL:0570-666-569
http://www.voxamps.com/
まず、モデリングされた各アンプの出音の印象が、本物の音と変わらない点に驚きました。ちゃんとフェンダーやメサブギーの音がするんですよ。それと、例えばトレブルを上げていった時に、アナログのアンプに近い音質変化をするし、ノイズの帯域も変わっていったのにもビックリしました。あと、LINEっていうモードがあって、モデリングをスルーするんですが、Nutubeが入っているせいか、すごくいい音なんですよ。アナログのペダルを1つ通したら、大型のチューブアンプとの違いはたぶんわかりませんね。
でも、一番いいのは「弾いていて楽しい」っていうことなんです。余計なローが出ないので音がスッキリしているし、バスレフによってしっかりローが出ているのに、モワモワ感が全然ないんです。
スピーカーが8インチと口径が小さいので、アンプが持っているパワーを使いきれるし、家で弾くならばこのくらいがちょうどいいですね。揺らしと空間系のエフェクトも、必要なものがすべて入っていますし、ツマミを回すだけと操作が簡単なのも気に入りました。
あと、POWER LEVELというツマミが最高です。チューブアンプのマスターボリュームを上げていくと、真空管がドライブするためか、音に何かが付加されていく感じがあるんですけど、POWER LEVELは純粋にワット数を上下するものなんです。だから、このツマミを回しても音の印象はそのままで、実際に下げてみましたけど、大音量の時と音質が変わらないのがいいですね。
他にもリアパネルにキャビネットシミュレーター・アウトが付いているうえに、オーディオインターフェイス機能も内蔵していたりと、このアンプでギターを始められる今の人達が本当にうらやましいですよ(笑)。僕も小規模ライブや練習用として欲しくなりました。
内蔵のアンプモデルはVOXの他に、フェンダー系、マーシャル系、ソルダーノ系、メサブギー系、ライン専用の「LINE」を装備
音質を変えることなく、アンプのワット数だけを可変できるPOWER LEVELツマミ。自宅でマイク録りをする際も有効だ
リアパネルにはUSB Type B端子が用意されており、本機で作ったサウンドを直接パソコン内のDAWソフトに録音できる
専用エディタソフト「ToneRoom」を使うと、パソコンの大きな画面でエディットが行なえ、さらに細かい音作りができる
この製品について
【製品概要】
VX50 GTVは、小型の真空管「Nutube」を内蔵していながら規格外と言える超軽量設計により、片手で軽々持てるサイズと重量を実現したデジタル・モデリングアンプだ。有名アンプモデルを9種類とライン用のモード、さらにエフェクトも8種類搭載しており、本機だけで様々な音が作れる。また、音色を変えずに出力W数を変えられるパワーレベル機能も内蔵している。
【スペック】
●出力:最大約50W
●内蔵アンプモデル数:11(10+ライン)
●内蔵エフェクト数:8
●プリセット数:11(ユーザープログラム数は2)
●入出力端子:インプット、ヘッドホン、AUXイン、フットスイッチ、USB
●真空管:Nutube 6P1
●スピーカー:8インチ×1
●外形寸法:354(W)×208(D)×313(H)mm
●4.1kg
今回の試奏方法
今回の試奏には、フェルナンデスがYOUのために作ったカスタムモデルを使った。驚くほど軽量なボディにピックアップを2基マウント。さらにサスティナーも装備している
使用したギターは、フェルナンデスのYOUモデルです。接続に使用したケーブルはカスタム・オーディオ・ジャパンとモガミの2本で、アンプモデリングを「LINEモード」に設定したVOXのVX50-GTVにつなぎました。
チェックの方法は、ますゲインをゼロにした時の歪みのない素のサウンドで各歪みエフェクターのポテンシャルを確認した後、ゲインを上げていった際の音の変化や、ノイズの量を確認。演奏面では、ピックアップのフロントとリアを切り換えつつ、ピッキングの強弱による音の変化や指弾きをした時のレスポンス、ギターのボリュームを絞った時の動作を試して、表現力の幅をチェックしました。
VOXのVX50-GTVについては、各アンプモデリングを試しつつ、POWER LEVELツマミの性能などを検証しました。
試奏者プロフィール
最新アルバム
『ANDROMEDIA』
キングレコード/NUXUS
KICS-3744 ¥3,000
発売中
YOU(ユウ)
1986年にデッド・エンドに参加。インディーズメタル・シーンで熱狂的な人気を集め、1987年にアルバム『GHOST OF ROMANCE』でメジャー進出を果たす。その確かなテクニックに裏打ちされた個性的なプレイで、オリジナリティ溢れるスタイルを確立。なお、河村隆一(LUNA SEA)などのレコーディングやツアーサポートでも活躍している。
この記事が掲載されているサウンド・デザイナー2019年4月号のお求めはこちらから
定価¥864(税込)
【必見!】TuneGate特別企画(有名楽曲のサウンドを再現してみよう!)
◉ King Gnu「白日」風サウンド編
◉ Official髭男dism「Pretender」風サウンド編
◉ aiko「カブトムシ」風サウンド編
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