真空管機材の味が得られるモデリング機材に注目!
【徹底レビュー】Townsend Labs Sphere L22とUniversal Audio Arrowを組み合わせて使ってみた
【徹底レビュー】Townsend Labs Sphere L22とUniversal Audio Arrowを組み合わせて使ってみた!
2019/05/15
真空管機材を複数揃えるにはコストがかさみます。そこでオススメなのが様々な真空管機材をモデリングした製品です。タウンゼンド・ラボ「Sphere L22」(モデリングマイク)とユニバーサル・オーディオ「Arrow」(DSP内蔵オーディオインターフェイス)による、真空管マイク/マイクプリのモデリングの組み合わせを試してみました。
文:小川悦司 写真:小貝和夫
【タウンゼンド・ラボSphere L22】「Sphere」プラグインと、デュアルチャンネルのラージダイアフラム・コンデンサーマイク「L22」で構成されるモデリングマイク。Sphereプラグインはネイティブ版とUADプラットフォーム版があり、ユニバーサル・オーディオのApolloやArrowで使えば、ほぼレイテンシーのないリアルタイムなモニタリングが可能になる。オープンプライス(¥157,000前後)
【ユニバーサル・オーディオArrow】Thunderbolt 3接続のオーディオインターフェイス。コンパクトな筐体にUnison(プリアンプなどにおいて重要なインピーダンスやゲイン、アナログ回路のふるまいなどを忠実にエミュレートし、オーディオインターフェイスのマイク/Hi-Zインプット回路を制御する技術)対応プリアンプを2系統、ヘッドホンアウトとモニターアウトをそれぞれ1系統ずつ搭載。DSPを内蔵し、同社の人気プラグインUAD-2を使用できる。オープンプライス(¥45,000前後)
Sphereの真空管マイクモデルとUAD-2の真空管マイクプリを組み合わせるのがベスト!
最近、筆者は大手のスタジオでの作業や、エンジニアが持ち込むビンテージマイクを使ってレコーディングをする機会が多いこともあり、「Sphere L22でビンテージな真空管マイクの音が録れる」という話を聞いた時、正直「どの程度のものなのか?」という気持ちが多少はありました。しかし、実際に使ってみた結論から言ってしまえば、「これが2本欲しい!!」というのが今の気持ちです。では、その魅力をざっくりと紹介しましょう。
まず「L22」はモノラルマイクとしてもステレオマイクとしても使うこともできます。そして付属の「Sphere」プラグインを使えば、様々な高級マイクの特性をモデリングできます。
Sphereプラグイン
さらにSphere上では、指向性やアクシス(軸/角度)、近接効果までもコントロールでき、ステレオ収録の場合は2本のマイクの距離感も調整できます。ですから、これ1本でギターからボーカル、弦楽器、管楽器まで、それぞれに合うマイクアレンジが可能なわけです。最も面白いと思ったのはアクシスを変更できる点でした。例えば、仮に収録時に空調のノイズが乗ってしまっても、アクシスを変更することでノイズを緩和できます。
ビンテージの真空管マイクは高価ですし、扱いもシビアで、真空管の状態によってもサウンドが変化します。その点、L22はいつでも安定して同じサウンドで収録できるわけです。ましてや、真空管マイクをステレオペアでマッチングさせて、何組も用意するのと同じ環境をこれ1台で再現できるのですから、コスパ的にも文句なしと言えるでしょう。
【1】AKG C12のモデリング。暖かでツヤのあるサウンドは多くのエンジニアに好まれている。ボーカルやギター、管楽器向き。 【2】テレフンケンELA M251のモデリング。低域から高域までバランスが良く、女性ボーカルなどに最適。筆者がプロデュースした米澤美玖のジャズバラード・アルバムでは、テナーサックスをこの実機で録った。【3】ソニーC800Gのモデリング。多くのシンガーが愛用しているボーカル用の真空管マイクで、低域もしっかり録れるうえに、ハイもクッキリ録れる。 【4】ノイマンU87の前身とも言える60年代の真空管マイク、ノイマンU67のモデリング。力強い中域となめらかな高域が特徴だ。ボーカルやピアノ、弦楽器に向いている。 【5】1949年に登場したノイマンの原点とも言えるU47のモデリング。力強いサウンドはロックボーカルに向いている。キックなどに使ってもいいだろう。 【6】放送局でもよく使われていたノイマンM49のモデリング。暖かい低域が魅力で、キックやベース、ギターの収録に向いている。
Arrowと組み合わせて使用する場合は、Sphereプラグインをモニターした状態で録音することができます。なので、例えばボーカリストのマイクチェック時に、先に適切なマイクモデルを選定できます。しかも録音後でも、マイクモデルを変えることができることが特徴です。モデリングがどこまで本物に近いかは、使用するプリアンプも含めて個体差もあるので厳密に検証はできませんが、率直な感想としては「あっ、そうそう、こう言う感じ!!」と思わずニヤリとしてしまうクオリティを感じました。
また、UADの様々な真空管マイクプリと組み合わせて音作りができることも、特筆すべき点でしょう。せっかくL22を使うのであれば、両方共に真空管系の機材で揃えるというアプローチもあります。これによって真空管の持つ独特の暖かみや自然なコンプレッション感が得られますし、Unisonで使えば入力信号に対する挙動も、極めて実機に近いニュアンスが得られます。組み合わせ方は何を録るかによって変わりますが、下に各モデルの定番の収録楽器を記しておきます。
Manley VOXBOX Channel Strip
マイクプリ、コンプ、3バンドEQ、ディエッサーをひとつにまとめたチャンネルストリップ。EQセクションはハイとローがゲインブースト・タイプで、ミドルがダンピングタイプとなっている。ボーカル用として使うのが一般的だが、エレキベースにも向いている。$249.00
UA 610 Tube Preamp & EQ
ユニバーサル・オーディオの創始者ビル・パットナムが作ったコンソールのチャンネルストリップ。EQはポイントが固定されたシンプルなタイプながら、真空管プリアンプらしいナチュラルなサウンドが特徴。ボーカルはもちろん、アコギに使ってもいい。$249.00
Century Tube Channel Strip
オールジャンル向けのプリアンプで、ナチュラルなトーンからサチュレーションのかかったサウンドまで手軽に扱える。3バンドのEQと「オプティカルレベラー」というコンプレッサーを搭載しており、ボーカルやギターシンセなど万能に使える。$149.00
V76 Preamplifier
デッカやアビーロードスタジオなどで使われていたチューブプリアンプの名機を再現したモデル。倍音成分が豊かで、艶やかなチューブプリアンプらしいサウンドが特徴だ。コントロール部はシンンプルだが、クラシックロックをはじめ、往年のサウンドが欲しい時にとても頼りになる。$149.00
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