SEKAI NO OWARIなどのプロデューサー保本真吾氏がチェック!
ビンソンECHOREC 2を再現したストライモンVOLANTEを実機と比較してレビュー!
ビンソンECHOREC 2を再現したストライモンVOLANTEを実機と比較してレビュー!
2019/05/15
あのピンク・フロイドが使っていたビンソンECHOREC 2を再現したマグネティック・エコーマシン
ストライモン
VOLANTE
オープンプライス(¥45,000前後)
問:オールアクセスインターナショナル㈱
support@allaccess.co.jp
http://allaccess.co.jp
取材:目黒真二 写真:小貝和夫
※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2019年5月号)より抜粋したものです。
詳しくは、サウンド・デザイナー公式サイトをご覧ください。
伝説のプログレバンド、ピンク・フロイドが使っていたエコーマシン「ビンソンECHOREC 2」。今では入手が難しいこのモデルをストライモン社が徹底的に研究し、ついに完成させたのが「VOLANTE」です。SEKAI NO OWARIなどのプロデューサーとして知られ、ECHOREC 2の実機を所有している保本真吾氏に、VOLANTEの実力を診断してもらいました。
試奏を担当した保本真吾氏
ECHOREC 2は録音再生回路が
真空管で、通すだけで音が太くなる
──まずVOLANTEの第一印象は?
保本:色がECHOREC 2と同じというのがいいですね(笑)。VOLANTEは発表された時から気になっていたんです。実は僕が持っているVOLANTEは、今年の1月にNAMMショーを観にアメリカに行った時に、向こうのお店で見つけて自前で購入したものなんです。
──そのVOLANTEの元になっているECHOREC 2ですが、そもそもどのようなエフェクターなのでしょうか?
保本:イタリアのビンソンという会社が1960年代に製造したエフェクターで、その名の通りエコーなんです。ただし、 仕組みが独特で、音を記録するのがテープとかではなくて、磁気を帯びた円盤(マグネティックドラム)が回転して、その周りにある録音ヘッドと再生ヘッドでエコー音を鳴らすんです。なので、音も独特なんですよ。何とも言えない丸みのある暖かいサウンドで、弾いていても聴いていてもすごく気持ちいいんです。もう半世紀も前の製品で、もともと造られた数も少ないですし、あったとしても完動品が少なくて、状態のいいものは常に入手が困難なんですよ。世界中にファンがいて、僕も熱烈なファンの1人です(笑)。
──70年代はECHOREC 2がギタリストに大人気だったのでしょうね。
保本:もちろんギタリストにも人気だったと思いますし、ギターだけではなくて、ベースやシンセにも使われていました。中でもピンク・フロイドが使っていたことが有名で、デイヴ・ギルモア(g)以外のメンバーも使っていました。
──それはエコーとしての音が良かったからなのでしょうか。
保本:もちろんそれもありますけど、録音再生回路がすべて真空管回路で、信号レベルが上がったり、リピート音が重なると若干歪みます。なので、信号を通すだけでも音が太くなったように感じます。私の主観ですが、ヨーロッパのメーカーだからなのか、ちょっと湿ったようなトーンが、またたまらなくいいんです(笑)。
VOLANTEはクリアなサウンドも、
太く歪み感があるサウンドも作れる
──今回はVOLANTEとECHOREC 2を聴き比べてもらいましたが、音質はどうでしたか?
保本:VOLANTEは実機を忠実に再現しているように感じました。今まで「ECHOREC 2の復刻版登場!」という情報を聞くと、すぐに手に入れてチェックをしては、「やっぱり違う……」ということを繰り返していたんですけど、VOLANTEはすごくよく出来ていると思いました。ただ、現代の製品ですから、ECHOREC 2よりも音がモダンですよね。VOLANTEはクリアなサウンドも、ECHOREC 2の太く歪み感があるサウンドも作れます。REC LEVELツマミを上げて、MECHANICSや録音媒体の劣化を設定するWEARというツマミを調整すると、ビンテージ機材のテイストを作ることができました。
──具体的には、ECHOREC 2のどういうところがうまく再現されているのでしょうか?
保本:磁気ディスク特有の独特のエコー感の再現度は非常に高いですね。あと、ECHOREC 2には「SWELL」という独特なモードがあって、これを選ぶと飽和したエコーが得られるんですね。VOLANTEは、その感じもうまく再現しています。それから、ECHOREC 2ではインプットゲインを上げると音がかなり歪むんですけど、VOLANTEもREC LEVELを上げると、かなりいい感じで歪んでくれました。
──機能面はいかがでしたか?
保本:オリジナルにはない便利な機能がたくさん入っていますね。まずタイプを「drum、tape、studio」の3つの中から選べますし、それとは別にスプリングリバーブも付いているのがいいですね。これ1台でエコーのバリエーションがすごく広いんです。あと、ディレイのパラメーターを細かく設定できたりと、モダンな機能を押さえているのも好印象ですね。
──では、VOLANTEをどういう風に使うのがオススメですか?
保本:ギター以外に、例えばベースやシンセ、打ち込みのドラムとかに通してみると、きっとそれまでとはまったく違う世界が見えてくると思います。特に、ソフトシンセを使って人とは違うサウンドを作りたいのであれば、VOLANTEみたいな空気感を加える外部のエフェクターをかける必要があるんです。あと、アナログシンセを現代のデジタルサウンドに混ぜると太過ぎて、なかなか馴染みにくいのですが、VOLANTEをかけたら存在感を残したまま、オケに馴染んでくれると思います。ストライモンの製品は、そうしたレコーディングでの使用も視野に入れて開発されているところが素晴らしいと思います。だから、宅録をされている方も、一度パソコンから音を外に出して、VOLANTEを通して空気感を加えてからDAWソフトに戻してあげれば、ふくよかで立体的な音が作れると思いますよ。
VOLANTEの左後方にあるのがオリジナルのビンソンECHOREC 2。右後方にあるのは、元ビンソンの開発者がわずかな台数を製造したECHOREC 2 Super Specialという、世界的にも非常に希少なモデルだ
ECHOREC 2の上ぶたを外したところ。ワイヤーを何回も巻きつけた円盤状のマグネティックドラムが回転し、その周りにある再生/録音ヘッドでエコーを作る。VOLANTEはこのニュアンスも再現できる
VOLANTEではエコーのタイプを、ビンソンECHOREC 2を再現した「drum」、テープエコーを再現した「tape」、50〜60年代にスタジオで使われていたオープンリールのエコーマシンを再現した「studio」から選ぶことができる
こちらは『ザ・ウォール』に収録されている「ラン・ライク・ヘル」のギターにかけられといるエコーを、保本氏がVOLANTEで再現してくれたツマミ設定だ
この製品について
【製品概要】
「VOLANTE」は、ピンク・フロイドなどが使っていたことで知られる幻のエコー「ビンソンECHOREC 2」を現代に甦らせたモデルだ。磁気を帯びたディスク型のドラムが回転し、それに音声を記録してエコー効果を得るという、実機独特の質感を再現。決して他のエコーマシンでは得られない、豊かな倍音と暖かい歪み感を伴ったエコーが楽しめる。なお、playbackボタンとfeedbackボタンの組み合わせで、様々な音符のディレイパターンを手軽に作り出すことができるのも特徴だ。
【スペック】
●入出力端子:インプット×2(インスト/ライン両対応)、アウトプット×2、エクスプレッション、MIDIイン/アウト、USB
●タイプ:ドラム、テープ、スタジオ
●信号処理方式:32ビット浮動小数点処理
●周波数特性:20Hz〜20kHz
●電源:9V DCアダプター(製品に同梱)
●外形寸法:177.3(W)×114.3(D)×44.5(H)mm
●重量:640g
ピンク・フロイドとビンソンECHOREC2
1970年当時のピンク・フロイド
ピンク・フロイド、特にデイヴ・ギルモア(写真中央)のギターサウンドは、ビンソンECHOREC 2のプリアンプ部が大きな役割を果たしている。また、その独特なエコー効果は、①『おせっかい』収録の「吹けよ風、呼べよ嵐」や②『狂気』の「アス・アンド・ゼム」、③『ザ・ウォール』の「ラン・ライク・ヘル」をはじめとして、様々な楽曲で聴くことができる
①『おせっかい』
②『狂気』
③『ザ・ウォール』
試奏者プロフィール
最新関連アルバム
『I AM Ready!』
三上さちこ
SLIDE SUNSET SSSA-1002
¥2,800 発売中
保本真吾 (ヤスモト シンゴ)
「CHRYSANTHEMUM BRIDGE」の音楽プロデューサーとして、これまでに、ゆずやSEKAI NO OWARI、シナリオアート、Official髭男dism、andropなど数々のアーティストの作品を手掛ける。代名詞である「ファンタジーサウンド」を駆使して独自の世界観を構築し、アーティストの新たな魅力を引き出している。
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