エンジニア伊東大和が聴き比べ!

1〜2万円台のリーズナブルなモニターヘッドホン6選・徹底レビュー

1〜2万円台のリーズナブルなモニターヘッドホン6選・徹底レビュー

2019/07/17


初心者でも手が出しやすい比較的お手頃価格のモニターヘッドホン6機種を、エンジニアの伊東大和氏にチェックしてもらいました。

取材:本多理人(編集部)、取材協力:SUPALOVE、写真:小貝和夫

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【伊東大和 (イトウ ヤマト)】ジャンルを問わず、作詞・作曲・編曲・REC・MIXすべてに柔軟に対応できるのが売りの作・編曲家/エンジニア。プロジェクト全体のコンセプトと楽曲の世界観を理解したエンジニアリングが評判である。

今回の試聴はアビッドPro Tools(DAWソフト)に音源をインポートし、再生音をアビッドHD I/O(オーディオインターフェイス)から出して、スタジオ用のキューボックス(カレントSC8016A)にヘッドホンをつないで行ないました。

このキューボックスにはヘッドホンを4台までつなげられるので、取っ替え引っ替えしつつチェックしました。音源は僕がアレンジしたオーソドックスなアイドルソングや、僕がミックスした生楽器系のバラード、ローが多めの洋楽作品とかを使いました。なお、今回のレビューは、僕が普段使用しているソニーMDR-CD900STを基準として語っていきます。

CURRENT SC8016A

CURRENT SC8016A

AKG K275-Y3(¥22,000)

折りたたみ式で持ち運びやすくフラットなモニタリングが可能

AKG K275-Y3

密閉型でアラウンドイヤータイプのヘッドホン。同社のプロ向けスタジオヘッドホンでは初めての折りたたみ式タイプだ。リファレンス・モニタースピーカーのような高品質なサウンドを実現しながら、コンパクトに折りたたんで持ち運ぶことができる。

小さく折りたためるうえ、結構軽くて持ち運びやすいのがいいですね。装着してみると、イヤーパッドが低反発で快適です。イヤーパッドのネット部分に大きく「L」、「R」とプリントされているので、左右を絶対間違えないのもいいと思います。遮音性も悪くないですね。

サウンドの方は、音場が広めです。ヘッドホンとは思えないほどステレオイメージが広いんです。それに全体のバランスがとても良くて、表現力にも優れていますし、今回の中では一番フラットなモデルだと思いました。奥行き感もすごくあって、スピーカーの代わりとまではいかないですけど、立体的に聴こえます。

音質は柔らかいですけど、ミックスをする時に音の判断がしやすいと思います。ずっと聴き続けても疲れにくそうです。

キャラクター的には、ハイもしくはローが極端に出ることもありませんでした。ローがものすごく出るヘッドホンではないので、クラブミュージックよりはポップスのモニタニングに適しているでしょうね。

AKG K553 MKII-Y3(¥25,000)

中高域にエッジがあることでノイズチェックや演奏のモニターに最適

AKG K553 MKII-Y3

K553 MKII-Y3は、独自のハウジング構造と大型ドライバを採用し、原音の再現性を追求したプロフェッショナルな密閉型スタジオヘッドホンだ。装着感に優れているため、長時間のレコーディングでも疲れずに作業をすることができる。

サウンドのキャラクターはK275-Y3と似ているんですけど、中高域にエッジがあるんですよ。そこがスタジオ用のヘッドホンとして必要な、音を判断するための要素なので、よりモニターに適した製品だなと思いました。中高域にエッジがあることで輪郭がハッキリ聴こえるんですね。レコーディングでは「プチ」というノイズや、リップノイズに敏感にならないといけないんですけど、本機はそれがわかりやすい。奥行き感もK275-Y3とそっくりで、立体的に聴こえて非常に見えやすいです。

K275-Y3のように折りたためないので持ち運びはしづらそうですが、モニター用としては、私はこちらの方が作業がしやすいかなと。スピード感が明らかに早いですから、プレイヤーの演奏用のモニターにも最適ですね。特に宅録で、楽器を弾きながら音楽制作をしている人にオススメしたいです。定位感はK275-Y3よりやや狭く感じますが、分離はいいので、スタジオモニターとしてとても優秀なスタジオ用ヘッドホンだと思います。

フォステクス T50RPmk3g ¥22,000

繊細な演奏を表現するのに向いている柔らかくて丸みのあるサウンド

fostex T50RPmk3g

通常のダイナミック型ではないRP(全面駆動型)方式の平面振動板を採用。従来のダイナミック型とは一線を画した、広い再生帯域と優れたトランジェント特性、3,000mWまでの高い耐入力を実現。様々な音楽ソースに余裕を持って対応できる。

今回の中では、これだけ普通のダイナミック密閉型じゃなくて、セミオープンの平面振動板を採用しています。そのためか普通のヘッドホンとは鳴りが違って、音がものすごく柔らかいです。派手な音ではないんですけど、繊細というか丸っこい感じで、耳は疲れにくいでしょうね。かと言って、決して音がコモっているわけではなくて、全体のバランスはいいです。音像の重心は、今回試聴した他の機種よりも低めですね。

アタックはちょっとわかりづらいので、EDMのようなスピードの速い音楽よりは、クラシックやジャズとか、バラードといったジャンルの表現力に優れています。アーティストで言えば、ノラ・ジョーンズとかアデルとか、繊細な音を聴くのに向いていますね。セミオープンで、密閉型と比べると音が外に漏れてしまうので、演奏用のモニターに使うという感じではないですけど、バランスがいいのでミックスで使えると思います。ヘッドバンドの締め付けはちょっと強めですが、装着感はいいです。

問:フォステクス カンパニー
TEL:042-545-6111 

ローランド RH-300 ¥16,800

ダンスミュージックやEDMに合う迫力のサウンドをモニタリング可能

roland RH-300

45mmの大型ドライバを搭載し、豊かなダイナミックレンジと、大音量でも安定した再生能力を実現。デジタル機器の立ち上がりの速いサウンドや、シンセベースの重低音にも対応し、ハイレゾ音源などのクリアな高音も忠実に再生してくれる。

中低域が十分に出ているので、迫力あるサウンドでモニターすることができます。“THE密閉型”という感じの音で、音質的にはMDR-CD900STの痛い部分が抑えられた音というか、すごく聴きやすいですね。周波数で言うと3〜4kHzの間あたりでしょうか。その一方でローがふくよかに出るので迫力があります。電子楽器が多用されるダンスミュージックやEDMとかを聴くのに良さそうです。

あと、音が近くに聴こえるので楽器演奏向きですね。繊細な音楽よりも、音数が多くて空間を埋めるようなサウンドをまとまり良く聴けると思います。例えばアイドルソングであったり、そういう音楽を作りたい人にオススメです。地味に聴こえますが、これでモニターしながら派手に聴こえるように作ると、どの環境で聴いても物足りなさを感じない音に仕上がると思います。イヤーマフが深めなので密閉性があって、音漏れがほとんどありません。これなら外出先や電車の中で聴いても迷惑にならなさそうですし、リスニング用途にもいいですね。

問:ローランド㈱お客様相談窓口
TEL:050-3101-2555 

ウルトラゾーン PRO580i オープンプライス(¥18,000前後)

圧倒的な低音再生能力を誇り、キックとベースの作り込みに最適

ultrasone  PRO580i

高解像感と優れた分離性能を持つ密閉ダイナミック型モデル。特許技術S-Logic Plusにより広い空間再現能力を実現している。また、50mmマイラードライバにより、スピード感と分離性能に優れたバランスのいいサウンドを再生する。

サウンドはかなりワイドレンジです。ローがすごく出ますから、低域がかなり出ている曲も問題なく再生できました。キックとベースの分離がよくわかるので、ミックスの最初の段階で、ベースとキックを混ぜる時に打って付けですね。やっぱりローが見えるヘッドホンって欲しいんですよ。自宅では大きな音が出せないから、ローがちゃんと聴こえるヘッドホンは1つ持っておいた方がいいですよ。

キックをレイヤーするような緻密な作業にも向いていますね。1サンプル単位でイジって位相を合わせる作業も正確にできると思います。作業の最後に低域がマスキングされていないかどうかをチェックするのにもいいですね。こもっているわけではなく、ハイも出ていますから演奏用としても使えます。クラブミュージック向きですけど、ラウドロックのギターのブリッジミュートも、弾きながらのコントロールがしやすいんじゃないかな。分解能が高くてスピード感も速いので、高域もクリアに聴こえます。バランスが良くて定位感の広さも十分です。

問:㈱アユート
TEL:03-6739-3938 

ヤマハ HPH-MT8 オープンプライス(¥25,000前後)

スピーカーのようなサウンドを再生できる、バランスの取れたオールマイティな1台

yamaha HPH-MT8

原音を忠実に再生し、音色や音像定位の微細な変化も表現できる、音楽制作に最適なモデル。肌触りのいいプロテイン・スキンレザーと、余計な振動を吸収するクッションを採用した大型イヤーパッドにより快適な装着感と高い遮音性を実現した。

これはイチ推しの機種で、スピーカーに近い音の広がり方をしてくれます。定位感や奥行き感がスピーカーみたいで、平面的ではなく、立体的に再生してくれるんですよ。バランスも今回の中で一番いいです。僕はヤマハMSP5というスピーカーを使っているのですが、それと比べても違和感がないというか。外にスピーカーを持っていけない時に、これを持って行ったら作業ができます。小音量でもバランスが変わらないのもいいですね。

唯一の弱点は重さかな。他よりも重く感じたんですよ。あと50g軽かったら最強なんですけど、それを補って余りある性能ですね。音の歪んでいる箇所も見つけやすい一方で、MDR-CD900STの耳に痛過ぎるところがまろやかに処理されています。あと、ヘッドホンってブーミーに聴こえがちなんですけど、これはスッキリしています。350〜450Hzあたりが凹んでいるのかな。あと、ちょっとハイ上がりなので完全にフラットではないですけど、演奏にも使えるし、ミックスにもいいし、リスニングでも使いたいです。

コスパ抜群のヘッドホンに注目!(文:くぼっち)

ヌー HX-1 ¥9,000

neu HX-1

 

ヌーの「HX-1」は、低価格ながら人間工学に基づいて作られた、重厚かつ肌触りのいいラバー仕上げが魅力の、同社のフラッグシップモデルです。コンパクトに折りたためる携帯性や、可動式スイベル・イヤーカップによる片耳モニタリングが可能な点、さらに着脱可能なケーブルの採用により、DJ用途でも威力を発揮します。

気になるサウンドはと言うと、とにかくパワフルにガンガン鳴ってくれる印象を受けました。大音量で鳴らしても重厚なハウジングとドライバのおかげか、歪みのないサウンドに魅力を感じます。また、本体の構造が密閉型なので、装着時の外への音漏れが非常に少なく、大音量のDJ環境でも遮音性が高く、的確なモニタリングが可能です。

音質の傾向は、中低域の音が前に出てくる印象で、ドラム系や重低音のベースが気持ち良く鳴ってくれます。高域の伸びも適度な丸みがあって自然で、リバーブ音もクリアに聴こえてきました。ボーカルの帯域にやや細さを感じましたが、本機はJ-POP系のミックスなどに最適なヘッドホンだと言えます。

装着感の良さも魅力のひとつで、がっちりとホールドしてくれるのに長時間着けていてもまったく疲れませんでした。リスニングやDJ環境での使用を含めて、侮れない実力を持つヘッドホンです。

問:イースペック㈱
TEL:06-6636-0372

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