サウンド・シティのエンジニア2名がサウンドチェック

3万円以上の高品位なモニターヘッドホン5選・徹底レビュー

3万円以上の高品位なモニターヘッドホン5選・徹底レビュー

2019/07/17


中澤 智氏と秦 正憲氏

左/中澤 智 (ナカザワ サトシ)
サウンド・シティでキャリアをスタートし、フリーランスを経て現在サウンド・シティ所属。大編成のオーケストラからアーティストものまで幅広いセッションに参加。近年は劇伴などのオーケストラやバンドものに多く携わっている。

右/秦 正憲 (ハタ マサノリ)
サウンド・シティ所属のレコーディング/ミックスエンジニア。サウンドトラックからバンドまで、手掛けるジャンルは多岐に渡る。多彩なサウンドアプローチには定評があり、アーティストやプロデューサーからの信頼も厚い。

中澤:今回の試聴は、音源をコンソールに立ち上げて、弊社オリジナルのキューボックスにヘッドホンをつないで行ないました。普段作業をする時と同じモニター環境ですね。オーケストラものやリズムものなど、幅広いジャンルのセッションをアビッドPro ToolsとCDで再生してみました。

オリジナルのキューボックス

サウンドシティオリジナルのキューボックス

:僕は普段使っているモバイル用の制作環境を試聴に使いました。アップルMacBook ProとヤマハUR-RT4(オーディオインターフェイス)のセットです。他にはCDプレーヤーで市販のCDを再生してみたり、96kHzのセッションをPro Toolsで聴いてみました。

アップルMacBook ProとヤマハUR-RT4(オーディオインターフェイス)

アップルMacBook ProとヤマハUR-RT4(オーディオインターフェイス)

AUDEZE LCD-2 Closed-Back ¥99,800

低音がタイトでマスキングもなく、定位や奥行き感もよくわかる平面駆動型

audeze LCD-2 Closed-Back

ロングセラーの「LCD-2」をベースに、洗練されたモダンなデザインと密閉型ハウジングを採用した製品。優れたダイナミクス感と密閉型ならではの迫力のある低音に加え、アイソレーションが向上したことにより、歪みの少ないサウンドを実現した。

:この製品はイヤーパッドがブ厚くて、ヘッドバンドはキレイだし、ケーブルもしっかりしています。遮音性が良くて没入感が高いので、作業に入り込めますね。

中澤:サウンド的には低音がタイトで、ベースラインがよく見えました。各楽器のマスキングもないし、定位感や奥行き感もわかりやすい。それによってスピード感も出ています。重低音の物足りなさは感じましたが、むしろこれくらいが聴きやすいかもしれません。ソフトシンセとかの低音がわかりにくいパートをこれで聴くと判断しやすそうです。高域は上品な印象でした。ロック系よりオーケストラものの作業に合うと思います。

:歪み感がなくてキレイですね。スピードが速いし、高域から低域までガチャつかずストレートに耳に届く印象です。低域がタイトだから全体的にクールに聴こえます。ラウド系より、シンプルな楽器編成とかクラシック向きだと思います。

中澤:ミックスで失敗しそうな、聴こえにくい音が聴き取りやすいですね。リバーブ感や広がり感も見えやすいです。

問:㈱アスク
TEL:03-5215-5652 

Focal Professional Listen Professional ¥35,185

音数が多めのポップスやアニソンの歌処理や楽器の配置がしやすい

focal Listen Professional

スピーカーを多数発売している同社が開発した密閉型のモニターヘッドホン。サウンドはフラットかつ各パートの帯域の情報量が多く、正確なモニタリングが可能。高級感のある素材を採用したイヤーパッドは質感が良く、余裕をもって耳を覆ってくれる。

中澤:デザインがポップで、素材も軽くて装着しやすいです。コンパクトで持ち運びにもいいですね。少し高域が多くて中高域の張り出し感が強いですが、歌ものの中域がよく見えるので、歌の処理がしやすかったです。低音がスッキリしている分、定位がわかりやすいので、音数が多い今時のポップスやアニソンに向いているかなと。スピード感もあります。音像も問題ないですね。

:ソリッドでタイトな音だと思いました。歌が力強く聴こえる印象で、歯擦音やピーキーに感じる部分の処理はしやすそうです。ベースラインやビートのアタックも見えますけど、リリースが若干見えにくいところはありました。ただ、ギター、スネア、シンバル、コーラスとかがせめぎ合っている中高域の分離感がキレイですから、音数が多いアレンジでも配置がしやすかったです。

中澤:アレンジャーとかトラックメイカーにいいんじゃないかな。楽器をどうやって配置して、オケを派手に聴こえさせるかといった作業がやりやすそうです。

Neumann NDH20 オープンプライス(¥64,800前後)

今までのヘッドホンではできなかった低域の作り込みができる

neumann NDH20

精密にバランス調整が行なわれた音像に、ノイマンならではの高品質なサウンドを組み合わせた、遮音性の高い密閉型ヘッドホン。その特徴は、周囲が騒がしい場所でのモニタリングやミキシングの作業をしなければならない時にも適している。

中澤:これは低音がしっかり出ていて、リズムとかローがすごくいい感じで作れそうですね。ナチュラルで密度が高いし、レンジが大きくて全体的にリッチに聴こえます。フュージョン系を聴くとベースが曲を引っぱっていく感じとかがすごく気持ちいいですね。パワードスピーカーに近い感じがあって好きです。

:全体的にスムーズでナチュラルな音ですし、音が近いですね。ひとつひとつの音像が大きな面でくる感じで、定位の変化にビビッドに反応してくれます。エアー感はつかみづらいですけど、高域がスーと伸びていくので聴き疲れしません。クラブサウンドやオケものに合うと思います。低域の作り込みとか、今までのヘッドホンではできなかったことが、これならできそうです。土台がしっかり追い込めるとミックスでも安心感が生まれますね。あと、体で感じるような、見えないローの再現性にも優れています。だから、それを切ることもできるし、リリース感と捉えて残しつつ、アタックを出すといった音作りもできます。

問:ゼンハイザージャパン㈱
TEL:03-6406-8911 

Ultrasone Signature Studio オープンプライス(¥58,000前後)

バンドサウンドやギターサウンドにキレイにハマる元気のいい出音

ultrasone Signature Studio

ドイツを拠点とする同社のSignatureシリーズの最新モデル。上位機種のEditionシリーズ直系の40mmチタンプレイテッド・マイラードライバを採用しつつ、細部をブラッシュアップ。定評のある大型プロテインレザー・ヘッドバンドを採用した。

中澤:高域がやや多めで、低域が少なめに感じたので帯域的には軽めですが、バンドサウンドやギターサウンドには向いていますね。高域の出方がバンドサウンドにキレイにハマるので、調整がしやすいのではないかと思います。音像がスッキリしているので定位はわかりやすいですね。あと、ケースが付属するので、モバイルで使うのに便利そうです。

:最初に聴いた時、「ギターの音がいいな」と感じました。ギタリストやバンド系のトラックメイカーに合いそうです。音が元気なのでアタック感やツブ感がつかみやすくて、テンションが上がる帯域が出ています。ただ、テンポがゆっくりの曲だとリリースが物足りないので、少しだけローを出したくなりました。中域の解像度は明確にわかるし、定位感も優れています。左右に振り切っているのか、センターと振り切りの中間なのかがわかりやすくて、コーラスも聴きやすいですね。センター定位の歌やスネア、ベースが少しだけ引っ込みますが、そういう点もバンドサウンドに向いています。

問:㈱アユート
TEL:03-6739-3938

VECLOS HPT-700 ¥50,000前後

楽器とマイクの距離までわかる、エアー感や立体感の再現性に優れた1台

veclos HPT-700

自然で繊細なサウンドと広い音場感を実現したヘッドホン。チタン製真空管エンクロージャーが優れたダンピング特性を発揮し、効果的に振動を減衰。これによりドライバの揺動範囲を広げて忠実に駆動させ、優れた定位と音場感を再現する。

中澤:これは軽くてフィット感もいいですね。音の広がり感は薄いですけど、実はすごくフラットな音なんです。中域は多少引っ込んでいますけど、奥行き感が見えやすくて、アレンジ向きな明るい印象があります。誇張した感じもなくて、ナチュラルだし疲れにくい。ただ、ケーブルが少し短いから、アレンジにはいいけど、エンジニアやプレイヤーが使うには長さが足りないかもしれません。

:装着感が良くて、今回の中では一番疲れませんでした。ハイレゾ音源を視野に入れたような音で、全体的にゆとりがあるというか、全帯域に対して伸び代があります。キャンパスが大きく使えそうで、開放感もあるし、ハイがすごく伸びますね。96kHzの音源のエアー感や立体感がよく見えました。楽器とマイクの距離感までわかるから、リバーブも付けやすそうです。中域はすごくタイトで、歌やスネアは硬めに聴こえます。ですから、歌ものよりはインストとか、エアー感のあるオケとか、アンビエントのある音楽に合いそうです。

問:サーモス㈱
TEL:0570-066966 

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