ギタリストの青木征洋氏がサウンドチェック
ハイゲインアンプの爆音サウンドが自宅で録れる、Universal Audio「OX」徹底レビュー
ハイゲインアンプの爆音サウンドが自宅で録れる、Universal Audio「OX」徹底レビュー
2019/09/16
「ロードボックス」は、アンプのライン録りをするうえで欠かせない機材です。中でも、ユニバーサル・オーディオ「OX」はスピーカーシミュレーターとしても定評があります。ギタリストの青木征洋氏に、ハイゲインアンプとOXによるレコーディングの魅力を聞きました。
取材:本多理人(編集部) 写真:小貝和夫
Universal Audio OX
オープンプライス(¥148,000前後)問:㈱フックアップ TEL:03-6240-1213
アンプをマイクで録るよりもいい音がラインで録れてしまう
【青木征洋(あおきまさひろ)】ギタリスト、プロデューサー。2014年までカプコンに在籍。これまでに『戦国BASARAシリーズ』や『Street Fighter V』などの人気ゲームの音楽を手掛けてきた他に、『CHUNITHM』や「GITADORA」など、音楽ゲームへの楽曲提供も行なっている。
──青木さんが自宅でのレコーディングにOXを導入してから、ギターサウンドにはどんな変化がありましたか?
青木:一番大きいのは、キャビネットシミュレーターがそれまでにないクオリティを持っていることです。OXでライン録りをすると、アンプを鳴らしてマイク録りをするよりもいい音が瞬時に出せて、悔しいくらいハイレベルなんですよ。
──青木さんにとってはスピーカーシミュレーターの性能が大切なのですね。
青木:OXにはリアクティブロードやエフェクターも入っていますけど、僕にとっての目玉はキャビネットとマイクのシミュレーションですね。それを実機のアンプと組み合わせられるところがいいんですよ。この部屋で鳴らして大丈夫な音量までOXのリアクティブロードで下げて、キャビネットも鳴らしています。
──モニタースピーカーだけでなくキャビネットからも鳴らしているのですか?
青木:モニタースピーカーからはギターとバックトラックとクリックを鳴らして、ギターだけはキャビネットからも鳴らしています。で、フィードバックが欲しい時は、キャビネットの音量を上げて、ギターを近づけて弾きます。
──メインのアンプヘッドは?
青木:リードギターを録る時は、大体ボグナーのHELIOS 100です。これはモダンなハイゲインアンプというより、70〜80年代の改造マーシャルの範疇ですね。僕はリードの音色をあまりメタリックにしないので、これくらいのゲインで全然問題ないんです。すごく歪ませたリズムやリフを録る時は、EVH 5150 Ⅲの50Wを使います。7弦ギターと組み合わせることが多いですね。
──OXが対応可能な最大W数は?
青木:許容範囲は150Wまでで、50Wでも100Wでも違和感なく録れます。OXの専用アプリに100W/50Wを切り替えるボタンがあるので、接続するアンプに合わせます。その他のW数なら、両方試して気持ちいい方を選びますね。
──アンプを十分に鳴らしきるためのコツはあるのでしょうか?
青木:チューブアンプはマスターボリュームを上げていくと歪み方が変わるんです。上げれば良くなるというわけではないので、実際に音がどう変わるのかをOXを使って実験しました。OXのリアクティブロードで音量を十分下げた状態で、アンプのマスターボリュームを思いっきり上げた音と、そうでない音をレコーディングして比較したんです。すると、自分にとってのマスターボリュームのスイートスポットが見えてきました。大体12〜1時あたりまでは上げますね。ただ、マスターボリュームを上げっぱなしで鳴らし続けていると、真空管への負荷が高い状態を続けてしまうので、録り終えたらこまめに電源を落とします。
青木氏がメインで使っているハイゲインアンプは、ボグナーのHELIOS 100(上)と、EVHの5150 Ⅲ(下)。HELIOS 100は「落ち着いたファットなサウンド、そこそこ歪むマーシャル系という感じ」なのだとか
アンプを買うための口実としてOXを導入したらいい
──ハイゲインアンプを鳴らす際、OX側のスピーカーモデルは何にしますか?
青木:僕がメインで使っているのは、セレッションのグリーンバックと思しき「4×12 GB 25 THICK」ですね。ここに、さらにメサ・ブギーのオーバーサイズのVintage 30のBキャビがもし追加されれば、何の心配もなくなるので、今後のアップデートに期待したいですね。OXのスピーカーシミュレーションは、本当に「マイク録りの音」がするんですよ。最近のメタルコアやジェントだと、マイク録りの音は雑味が多過ぎるというか、IRののっぺりした音の方が扱いやすい風潮もあるんです。けど、80年代のメタルや、マイク録りの生々しい音を聴き慣れている人にはOXがしっくりくると思います。
──マイクモデルも多数選べますよね。
青木:メタルではリアリティを追求するよりも、よりエグい音や音圧のある音を録る傾向があるので、「DYNAMIC 57」や「DYNAMIC 421」を選ぶのが一般的だと思います。でも、僕はメタルでもリアリティを追求したいので、「RIBBON 121」を選んでいます。これはキャビネットの前に立って弾いている時の気持ち良さが録れるんですよ。リズムギターなら57で録るのがカッコいいと思うんですけど、リードは121で録りたいですね。
──アンプヘッドがある環境なら、OXを導入するメリットは多いですね。
青木:むしろアンプヘッドを買うための口実として、OXを導入したらいいと思います。多くのギタリストが「ヘッドを買っても鳴らせない……」という悩みを持つと思うんですけど、OXがあればラインですごくリアルな音が録れるし、録音をしない人も楽しく練習できます。アンプシミュレーターでは、どうがんばっても、プリアンプやパワーアンプの真空管の歪み感は出せませんから。「自分の部屋にヘッドがあって音が出せる」という満足感に到達する第一歩として、OXを持つことはすごくオススメです。実際、僕はOXを導入したことがきっかけで5150 Ⅲを買いましたし、ヘッドの情報を追うようになりました。今はメサ・ブギーのTriple Crown TC-100が欲しいんですけど、それもOXを持っていなかったら追わなかったですね(笑)。
OXに内蔵されているスピーカーシミュレーション。この中でハイゲイン系のアンプに最もマッチするのが、この4×12 GB 25 THICKだという
OXにはマイクシミュレーションも備わっている。青木氏がよく使っているRIBBON 121は、ローの実在感があり、「ゴン」と聴こえるキャビネットの箱鳴りがしっかり拾える
トップエンド(ハイ)の明るさを得るため、CONDENSER 67も組み合わせている。青木氏が尊敬するエンジニアが、90年代頭にノイマンU67を立ててギターを録っていたのだそうだ
内蔵のEQ。モコモコする場合は300〜350Hz、ベースと団子になる時は200Hz、ピッキング音が耳に刺さる時は2.4〜3.2kHz、ハイゲインのチリチリ感が気になる時は5〜5.5kHzあたりを触る
コンプは、ブリッジミュートで弾いた時に出る帯域を抑える目的で使用する。EQで処理するとブリッジミュートをしていない時にローがスカスカになってしまうため、コンプで叩いて対応する
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