エンジニア大串友紀氏と嬢メタルシンガー彩希妃がチェック
メタルシンガーのハイトーンが美しく録れる宅録環境を「Apollo Twin MKⅡ」で構築!
メタルシンガーのハイトーンが美しく録れる宅録環境を「Apollo Twin MKⅡ」で構築!
2019/09/10
メタル系のボーカル録音を成功させるには、マイクだけでなく周辺機材も整えることが肝心です。ユニバーサル・オーディオのDSPオーディオインターフェイス「Apollo Twin MKⅡ」で理想的な歌を録る方法を紹介します。嬢メタルシンガーの彩希妃さんに歌ってもらい、エンジニアの大串友紀氏にボーカルを録るためのセッティングを探ってもらいました。
取材:本多理人(編集部) 写真:生井秀樹
Universal Audio Apollo Twin MkII
彩希妃(サツキヒ):音楽集団「絶望ノ果てのクリシェ」のメインボーカル。低音から高音まで多彩な声を使い分け、パワフルで伸びのあるきらびやかな歌声が聴き手の心を貫くように響き、激しくドラマチックな楽曲に欠かせない存在となっている。最新アルバム『警告』が発売中。
大串友紀(オオグシ トモノリ):2014年に株式会社SLOTH MUSICを設立。エンジニア/プログラマーとして数々の作品に参加している。近年はライブのマニピュレーターとしても活躍しており、ステージにPro Toolsを持ち込んでのパフォーマンスもこなしている。
声量のレンジ幅があるのでUADのコンプをかけ録りする
──まず、メタル系のボーカルをうまく録るためのポイントは何でしょうか?
大串:メタルではハイトーンで歌ったり、Aメロでは落ち着いて歌いながらサビで爆発したりと、レンジの幅があるのが特徴なんです。なので録りの時にコンプをかけて、小さいところを持ち上げつつ、大きいところを抑えたりします。
──パワー感とレンジ幅をうまく録るためにはコンプが欠かせないんですね。
大串:なのでApollo Twin MKⅡなら、UADプラグインのマイクプリやコンプをかけ録りできる点がいいですね。今回はマイクプリにNeve 1073、コンプにLA-2Aを選んでかけ録りしました。
──マイクプリのモデルにNeve 1073を選んだ理由は?
大串:Neve 1073やUA 610は、とても簡単にレベルが持ち上げられるんですよ。僕は歌にNeve 1073、ギターやアコギにUA 610を使うことが多いですね。ただし、ボーカルが男性か女性かでも違いますし、マイクによっても変わります。
──Neve 1073の特徴は?
大串:声が断然太くなります。レンジが少し広がって、低音もしっかり録れる。これだけ太く録れるなら、後で低域を持ち上げる必要がありません。
──1073の実機と比べた印象は?
大串:ほとんど同じです。Apollo Twin MKⅡのノブでゲインを調整できるのがいいですよね。本当は両手で2つのノブを操作できるとうれしいですけど(笑)。
──マイクプリを扱う時は、適正な入力レベルに設定することも重要ですよね?
大串:レベルが大き過ぎると歪んでしまうので、一番声が大きくなるところでレベルオーバーしないように入力レベルを合わせます。最近はレベルを抑えめで録る風潮もありますけど、解像度を上げるためにはレベルを高めにしたいんですよ。そういう時、Apollo Twin MKⅡは本体のノブでレベルを調整できるのが便利ですね。さらにコンプを併用すれば、パワフルな声質で録ることができます。
ニーヴのマイクプリ/EQの名機を再現したNeve 1073。今回はハイを少し上げて曇りを取り、360Hzも少し上げて太さを調整し、80Hz以下をローカットした
──コンプにLA-2Aを選んだ理由は?
大串:LA-2Aにはアタックやリリースが付いていなくて、ゲインとピークリダクションだけでスピーディに設定ができるんですよ。それに、メーターの振り幅でどれくらいコンプレッションされているかがわかる。本当に手軽なのでLA-2Aはオススメです。
──彩希妃さんはNeve 1073やLA-2Aの効果をどう感じましたか?
彩希妃:歌がすごくクリアになったと思いました。モニター音が聴きやすくて歌いやすかったです。普段このスタジオで、いくつか機材をつないで歌っている時と遜色ない音だったと思います。このApollo Twin MKⅡには、たくさんの機材が収まっているという感じですね。
大串:UADプラグインは優秀なので、ヘタな実機よりもクオリティが高いんですよ。今まで僕はミックスでUADプラグインを使うことが多くて、録りで使ったことはなかったんですけど、Apollo Twin MKⅡではレイテンシーなしでかけ録りができるのがいいですね。これだけ高品質のプラグインをかけながら、遅れがないというのはすごい!
彩希妃:歌っていても、遅れを全然感じませんでした。
Teletronix LA-2A。サビの一番盛り上がるところで、ゲイン・リダクションメーターが−3〜−5dBほど振れるくらいまでピークリダクションを上げる。音量が少し落ちた分、ゲインを上げて補った
モニターにリバーブをかけると感情表現がしやすくなる
──メタル系ボーカリストにはいろんな歌唱スタイルがありますよね。それぞれ録り方に違いはあるのでしょうか?
大串:マイクのチョイスは変わりますね。今回はノイマンU87(コンデンサーマイク)を使いましたけど、人によってはハンドマイクを立てたり、ダイナミックマイクがいいという人もいます。男性だとコンデンサーマイクの高音のシャリシャリ感が邪魔な時に、ゼンハイザーMD421(ダイナミックマイク)に交換したらいい声で録れたり、歌詞が聴き取りやすくなったことがあります。確かApollo Twin MKⅡにもマイクモデルを選べるプラグインがありますよね?
──タウンゼンド・ラボから出ているモデリングマイクのSphere L22ですね。
大串:そのSphere L22でいろんなマイクモデルを試してから、気に入ったモデルの実機を楽器店で試してみるといいと思います。僕もUADプラグインのおかげで知った実機が結構ありますから。
──他にかけ録りをするエフェクトは?
大串:EQをかけています。プライベートスタジオでは、振動をマイクが拾ってしまうことがあるので、ローカットを入れたりしますね。今回もApollo Twin MKⅡ側でローカットを入れました。
──リバーブもかけていますか?
大串:かけ録りではなく、モニターにリバーブをかけています。曲にもよりますけど、残響がドライ過ぎると感情表現が難しくなるんですよ。
彩希妃:私自身はドライの声質が好きなんですけど、リバーブがないと確かに表現が難しいことがあって、リバーブに頼った方がいい時もあります。
大串:200BPMくらいの速い曲だとリバーブが邪魔になることもありますけど、ギターと歌だけのイントロとかは、ドライ過ぎると歌いにくいですからね。あくまでも、歌いやすくするためにリバーブをかけるという感じです。Apollo Twin MKⅡは、モニターだけにリバーブをかけることができるのも便利ですね。
──UADでオススメのリバーブは?
大串:Lexicon 480やLexicon 224ですね。224は負荷が軽くて使いやすいんです。万能だし、どんなボーカルにも使えます。あと、Dimension(コーラス)をかけたりもします。これをラップとか早口なパートでかけると、ボーカリストの感情が入りやすくなったりします。
──Apollo Twin MKⅡがあればボーカルのクオリティが上がりそうですね。
大串:宅録をするなら、Apollo Twin MKⅡを1台持っていた方がいいですね。彩希妃も「自分で録れたらいいな」ってさっき話していたんですよ。
彩希妃:1台で何でもできますからね。
大串:1台でプロと同じ高級機材が何台も揃ってしまうオススメのモデルです。
スタジオ定番リバーブの名機を再現したLexicon 224。画像はプリディレイを2.4秒にすることで、芯を残したままリバーブを付けている。しっかり聴こえながらも邪魔にならないリバーブ感が得られる
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
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