メタルバンドJupiterのシンガー、KUZEがデスボイスでチェック!

メタルシンガーの声量に負けないコンデンサーマイク7本を徹底レビュー

メタルシンガーの声量に負けないコンデンサーマイク7本を徹底レビュー

2019/09/15


今回、試聴を担当してくれたエンジニアの近藤圭司氏
 

ヘヴィメタルのボーカルはシャウトやスクリーモなど、大きな声を出すことが多く、歌が歪まない高耐圧のマイクが必要です。編集部がセレクトしたメタル向きのマイク7本を、メタル系バンドのレコーディングを数多く経験しているSIGN SOUND LLCのエンジニア近藤圭司さんと、Jupiterというヘヴィメタル・バンドのボーカリストであるKUZEさんにチェックしてもらいました。

取材:平沢栄司 写真:小貝和夫
取材協力:SIGN SOUND LLC(http://signsound.net/
撮影協力:FREEDOM STUDIO INFINITY

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2019年9月号)より抜粋したものです。
詳しくは、サウンド・デザイナー公式サイトをご覧ください。

 

メタル向きのマイクとは?

強く歌う部分のニュアンスやパンチ感をうまく捉えられるマイクがベスト

──ヘヴィメタルのボーカルレコーディングに向いたマイクを選ぶ時のポイントはありますか?
近藤
:声量が大きいシンガーが多いので、声が歪んでしまったり、コンプで潰れてしまうことがあるんですね。なので、強く歌う部分のニュアンスやパンチ感をうまく捉えることができるマイクが求められると思います。あとは、デス声とかスクリーモの時の声の歪み感が表現できるかどうかも重要ですし、言葉が速い歌の歌詞を聴き取りやすく表現できるかもポイントになります。

──近藤さんがメタル系のボーカルをレコーディングする場合、どんなマイクを使うのですか?
近藤
:普通にノイマンのU67ですね。と言うのも、U67は中域の密度が濃くてパンチもあるので、基本的にどんなボーカルにも合うんですよ。同じノイマンでもU47のように奥行きがあって低域がふくよかなマイクだと、逆にメタルのオケに負けちゃうんです。シンフォニックメタルのような楽曲や女性ボーカルには向いていますけど、僕の中では1stチョイスにはならないですね。多少ローが少なくても、一番大事な中域や中高域が聴こえる、ヌケのいいマイクがオススメです。あとは、今回試奏したブラウナーのPhantheraのように、弱音から強音までマイク自体でうまくコントロールしてくれるマイクも使いやすいと思います。

──ダイナミックマイクを使うこともあるのですか?
近藤
:はい。シュアのSM57で録ることもありますよ。例えば、バックトラックが歪み気味で勢いがある楽曲の時は、ダイナミックマイクの方がパンチがあって直線的な歌が録れるんです。その場合は、真空管マイクプリを組み合わせるといい結果が得られますね。

──マイクプリやコンプにもメタル向きなものがあるのでしょうか?
近藤
:コンデンサーマイクを使う場合は、真空管のマイクプリと組み合わせると、音が少し滲んでシャープさが減ってしまうかもしれませんね。コンプを使うなら、ユニバーサル・オーディオ1176が持っているパンチやザラツキは、メタル系の楽曲のボーカルに勢いを加えるのにいいと思います。



 

歌をナチュラルなサウンドで録音できる “宅録の1本目”に最適なマイク

sEエレクトロニクス
sE2300

¥43,000
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
https://www.hookup.co.jp
 

今回試した7本の中では、音が一番ナチュラルでしたね。低価格帯のマイクにありがちな高域の脚色や、低域にブーミーなところがないのが好印象です。いい意味でクセがなくて、KUZEさんからも「いいマイク」という評価をいただきました。それでこの価格というのは驚きですね。

ノイズは少ないですしバランスもいいので、メタルのボーカルなら何でもいける感じです。弱い声で優しく表現するよりは、声を張って歌った方がこのマイクのパフォーマンスが引き出せます。耐圧が高くて歪みにくいので、サビで大声で歌っても飽和する感じがないですし、低いレンジを歌っても低音が出過ぎないから扱いやすいですね。まず、このマイクでいいテイクを録ってから、ミックスで歪ませたりする際も、エフェクトのかかりが良さそうです。素の素材を録って、後で自由に調整できるイメージですね。

パッドとローカットが付いていて、指向性も選べて、この値段でショックマウントとポップフィルターも付いてくるのもユーザーに対して親切ですね。マイクに色付けを求めるなら違う選択肢もありますけど、声をそのままキャプチャしてくれるので、ありがちな言葉ですけど、“宅録の1本目”には最適なマイクだと思います。
 

スペック

●指向性:単一指向性、無指向性、双指向性
●最大入力SPL:126/136/146dB(0dB/10dB/20dBパッド)
●感度:24 mV/Pa(−32.5dBV)
●周波数特性:20Hz〜20kHz
●外形寸法:長さ=215mm/直径=51mm  
●重量:611g 
 



 

セルフノイズが圧倒的に少なく、ヌケのいい透明感のあるサウンドが持ち味

ルウィット
LCT 540 SUBZERO

¥72,222
問:㈱メディアインテグレーション
TEL:03-3477-1493
https://www.minet.jp
 

名前の“SUBZERO”って何だろうと思って調べたら、セルフノイズが少ないということを表わしていて、そのうえ他のマイクよりも出力が大きいのでS/Nがいいんですよ。膜が1枚取れたような明るい透明感のあるサウンドで、ヌケがいいので音が一歩前に出てくるような印象があります。

あと、音の立ち上がりも速くて、子音がハッキリと録れますし、今回のマイクの中では一番滑舌が良く聴こえました。デス声も何を言っているか聴き取りやすかったですね。KUZEさんも自分の歌が速いスピードで耳に返ってくるので、とても歌いやすかったそうです。ボーカリストが不安なくパフォーマンスできるという意味でも、とてもいいマイクだと思います。

耐圧も十分で、マイク自体で歪むことはないんですけど、出力が大きいのでマイクプリのゲイン調整には気を付けた方がいいですね。心配な場合は、マイク側のアッテネーターを使うのもありです。

子音が強く録れるので、ミックスではEQ処理が必要になる場面もあると思いますが、逆に“抜けないからハイを上げる”というような処理をしなくても、歌に存在感が出せると思います。あと、このマイクは高域に特徴があるので、女性のメタルシンガーの方が使うのもいいと思いました。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:136dB SPL
●感度:41mV/Pa、−28dB V/Pa
●周波数特性:20Hz〜20kHz
●出力インピーダンス:68Ω
●外形寸法:長さ=185mm/幅52mm/奥行き=36mm
●重量=371g
 



 

弱音から強音までバランス良く録れるハンドヘルドマイク

ペルーソ
PS-1

¥120,000
問:㈱エレクトリ
TEL:03-3530-6181
https://www.electori.co.jp
 

今回唯一のハンドヘルド型のマイクですね。コンデンサーマイクらしくレンジが広くて、中高域が持ち上がったパンチのあるサウンドは、ステージでの使用を考えているのだと思いますが、僕はレコーディングで使ってみたいですね。

このモデルはハンドマイクでも試したんですけど、KUZEさんが「これが一番パフォーマンスがいいな」って言っていたんです。やはりスタンドの前に立って体を動かさずに歌うのと、マイクを手で持って動きながら歌うのとでは違いますね。鎖を外されたというか、気分が盛り上がるというか、それって通常のレコーディングではなかなか引き出せない要素なんですよ。ソロにしてよーく確認すると、少しフカれてはいるんですけど、ほとんど気にならない程度ですし、マイクを振った時のハンドリングノイズも少なかったです。意外と指向性も広かったので、マイクを動かしても特性はあまり変わりませんでした。耐圧についてもまったく問題はなくて、ダイナミックマイク感覚で使ってもらえると思います。

それと、ダイナミクスをマイク側でコントロールしている感じがあって、聴感上、弱音から強音までバランス良く録れます。そういう意味でも扱いやすくて、シンガーに自由に歌ってもらえるマイクですね。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:145dB
●感度:10 mV/Pa
●周波数特性:20Hz〜20 kHz
●出力インピーダンス:200Ω
●外形寸法:長さ=203mm/直径=48mm   
●重量:418g 
 



 

シンガーの表現をそのまま取り込める太くて奥行きのある暖かいサウンド

ロズウェル・プロ・オーディオ
Colares

オープンプライス(¥156,000前後)
問:オタリテック㈱
TEL:03-6457-6021
http://www.otaritec.co.jp
 

このマイクは、一聴して音の画角の広さが他のマイクと全然違うというか、奥行きがあって、音像が大きくて豊かなのが特徴ですね。FETらしくガシッとまとまったサウンドなんですけど、真空管マイクみたいに音が立体的に聴こえるんです。今回テストした中では一番音が太くて暖かみがあって、“いいマイク”という印象です。

なので、スピード感のある激しいメタルのシャウト系やスクリーモ系よりも、ヴァン・ヘイレンあたりのLAメタル系や、エアロスミスみたいなハードロック・バラードに合うと思います。

広がりのあるオケの中にボーカルをドーンと置きたい場合、他のマイクだと顔が小さくなって「点」になりがちなんですけど、このマイクなら存在感のあるボーカルが録れます。いつものマイクでバラードがうまく録れない人が使えば、これがいかにいいマイクかということがわかってもらえると思います。ハイトーンやロングトーンで歌い上げる曲とか、女性ボーカルとの相性も良さそうですね。

ただ、マイク自体の表現力が高いので、歌の力量もそのまま出ちゃうんですよ。空気感も含めてしっかり歌を拾いますし、ニュアンスがすごく出るので、歌に自信がある人に向いているかもしれませんね。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●感度:35 mV/Pa
●周波数特性:20Hz〜16kHz
●出力インピーダンス:200Ω
●外形寸法:長さ=208mm/直径=60mm  
●重量:850g
 



 

ミックスで処理がしやすい、ありのままの音を録るのに向いているモデル

アースワークス
SV33

¥275,000
問:㈱メディアインテグレーション
TEL:03-3477-1493
https://www.minet.jp
 

このマイクは珍しくフロントアドレス型で、見た目からして指向性が狭いのかと思ったんですけど、KUZEさんの顔が動いても音の特性が変わらないので、パフォーマンスしながら歌ってもブレずに録れます。まさにボーカル用に作られたマイクという印象で、すごく表現力がありました。

最初、パンチ面で少し物足りなさを感じたので、メタルとの相性はどうなんだろうと思ったんですけど、これが意外といいんですよ。繊細な印象がありますけど、耐圧が高いので、スクリーモとかで声を張った時もそのまま収録できました。通常、声を張ると歪み成分が出てきて、それが良かったりもしますが、このSV33はクリアなまま自然に録れるのがすごいですね。クセなく全帯域を拾っているイメージで、ザラつきのあるデス声を出した時もリアルに表現してくれました。メーカーのWebを見ると、キレイに歌い上げる女性ボーカルにオススメという感じなんですけど、僕的には全然メタルでもいけると思います。

総じて言うと、ノイズや歪みがなくてクリアというアースワークスのキャラクターを継承していて、良くも悪くもクセがないです。ミックスの時に処理がしやすい、ありのままの音を録るのに向いているマイクだと思います。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:145dB
●感度:10 mV/Pa(−40dBV/Pa)
●周波数特性:30Hz〜33kHz
●出力インピーダンス:65Ω
●外形寸法:長さ=211mm/直径=50mm   
●重量:1.13kg 
 


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パンチのある存在感十分な音で録れるメタルボーカルに最適な音響特性

ブラウナー
Phanthera

オープンプライス(¥280,000前後)
問:日本エレクトロ・ハーモニックス㈱
TEL:03-3232-7601
https://www.electroharmonix.co.jp
 

このモデルはブラウナーの特徴である高域のヌケの良さを踏襲していて、かつFETらしい芯のあるサウンドが特徴ですね。今回チェックしたマイクの中では一番パンチがありました。

それと、音にいい意味でのザラツキ感があって、メタル特有のディストーションギターとも相性が良さそうです。分厚いオケの中でも存在感が出せて、わかりやすく言うならば、“簡単にいい音で録れる”マイクですね。歌の上手下手に関係なく、うまく聴こえるというか……。少しコンプがかかっているようなところもあって、そこもいいんでしょうね。
実際、録り音が安定していて、KUZEさんがどんな歌い方をしても聴きやすかったですし、デス声で歌っている感じもすごく良かったです。

実は僕もこのPhantheraをよく使うんですよ。例えば、声が弱かったり芯のないボーカリストの歌をどう録ろうかと思った時に、Phantheraを使ったらすごくいい結果が得られたんです。しかも、クリアな声のボーカルにも魅力を加えることができるんですね。今回はメタルがテーマなので、そういうゴリゴリなバッキングの中で歌の存在感を出したい時には最適なマイクだと思います。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:142dB SPL @ 0.3% THD
●感度:28 mV/Pa
●周波数特性:20Hz〜22kHz
●外形寸法:長さ=165mm/直径=49.4mm  
●重量:566g 
 


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真空管マイク特有の気持ちいい倍音成分と、歌の芯がしっかり録れる高音質な1本

マンレイ・ラボラトリーズ
REFERENCE CARDIOID

オープンプライス(¥328,000前後)
問:㈱フックアップ
TEL:03-6240-1213
https://www.hookup.co.jp
 

今回の中では唯一の真空管マイクで、シルキーで奥行きのあるリッチなサウンドが特徴的ですね。真空管タイプにも関わらずノイズが少ないので、試聴をしていても扱いやすかったです。

中域の密度が濃いので歌の芯がしっかり録れて、かつ高域と低域もしっかりと伸びています。かといって過度にファットなところがなくて、そのバランスが絶妙なんですよ。耐圧も高いので、入力が大きくても音が潰れたりしないですし、サビとかで声を張ると真空管マイク特有の倍音成分が出てきて、それがまた気持ちいい。これはバラードにもハマると思います。

音に奥行きや深みがあるマイクは、ラップとかの速い歌と相性が悪いものもあるんですけど、このマイクの場合は滑舌が良く聴こえていい感じでしたね。メタル特有のブ厚いオケの中でも歌が聴き取りやすいですし、デス声にも合っていました。要は単純にいいマイクなんですよ。デザインもシックで、見た目も説得力があります。

セッティングを手伝ってくれたスタジオのスタッフの方も「これが一番いい気がする」って言っていましたし、KUZEさんも歌った後に絶賛していました。メタルに限らず、どんなジャンルのボーカルでも、うまく捉えてくれると思います。
 

スペック

●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:150dB
●感度:17 mV/Pa
●周波数特性:10Hz〜30kHz
●外形寸法:長さ=246.4mm/直径=14.3mm  
●重量:6.8kg 
 

今回の試聴方法

今回の試聴に協力してくれたJupiterのKUZE氏。2013年4月に結成されたJupiterは、2013年にはユニバーサルインターナショナルよりデビュー。独自のメタルサウンドと華美なビジュアルで、世界中の多くのメタルファンを魅了している。http://jupiter.jp.net

今回の試奏は、Jupiterというヘヴィメタル・バンドのボーカリストであるKUZEさんに手伝ってもらい、ご自身のバンドの2曲分のバックトラックを使って各マイクの音質をチェックしました。1曲はメロディアスなナンバーで、もう1曲はデス声を含むナンバーです。マイクプリはオーロラ・オーディオのGTP8を使い、エンピリカル・ラボのDistressor(コンプ)を通した後、アビットPro Toolsで録音しました。モニターはSSLのコンソールに立ち上げた信号を、ジェネレックのスピーカーで再生しました。

試聴では各モデルの基本的なキャラクターはもちろん、KUZEさんは声量が大きい方なので、マイクの耐圧性能や歪み具合と、ボーカルのパフォーマンスやニュアンスをどれだけ拾えるかを確認しています。

それと、各マイクごとに歌い終わったところでKUZEさんにも印象をお聞きして、全機種の録音が終わった後に録ったテイクをKUZEさんと一緒に聴きながら、意見交換をしつつ再度サウンドをチェックしました。
 

試奏者プロフィール

 

近藤圭司(コンドウ ケイジ)
音楽制作集団「SIGN SOUND LLC」所属のレコーディングエンジニア。これまでにセックス・マシンガンズなどのメタル系バンドの作品に参加。また、コブクロ、銀杏BOYZ、西川貴教などの有名アーティストのレコーディングに留まらず、劇場アニメ「打ち上げ花火」、 ゲーム「NieR:Automata」、TVドラマ「ミラー・ツインズ」などの劇伴まで、幅広いフィールドの作品を手掛けている。
 

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