NOCTURNAL BLOODLUSTのシンガー、尋がデスボイスでチェック!

手軽にいい音で録れる「Aston Stealth」を、メタル特有の高音圧サウンドで検証&レビュー!

手軽にいい音で録れる「Aston Stealth」を、メタル特有の高音圧サウンドで検証&レビュー!

2019/09/16



 

マイクプリを搭載し、4つのモードを選べるユニークなダイナミックマイク

アストン・マイクロフォン
Aston Stealth

オープンプライス(¥39,600前後)
問:ローランド㈱お客様相談センター
TEL:050-3101-2555
https://www.roland.com/jp/
 

初心者がメタル系の楽曲を録るのに最適なのが、1本で様々なソースに対応できるダイナミックマイク「アストン・マイクロフォンAston Stealth」です。メタル録音のエキスパートであるエンジニアのHiro氏と、NOCTURNAL BLOODLUSTのシンガーである尋さんに協力してもらい、大音量で録音して本機の音質をチェックしてもらいました。

取材:永桶喜則(サウンド・デザイナー編集部) 写真:小貝和夫

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2019年9月号)より抜粋したものです。
詳しくは、サウンド・デザイナー公式サイトをご覧ください。

 


どんなに音量を大きくしても
余裕で音を受け止めてくれる


──メタルは大音量が特徴ですけど、耐圧の面で本機はいかがでしたか?
Hiro
:今回はメタル特集での試聴というお話だったので、ハイゲインのアンプサウンドとシャウトがどう録れるのかを中心にチェックしました。音量をどんなに大きくしても、Aston Stealthは歪みませんね。余裕で音を受け止めてくれるという印象がありました。余裕があるからかもしれないですけど、演奏のダイナミクスがコントロールしやすいんですよ。マイクに「細かいことは気にしないで演奏してください」って言われているみたいで(笑)。あと、200〜300Hzをカッコ良く聴かせてくれる印象がありました。そこを起点に高域と低域がチューニングされているのかもしれないですね。耳障りなザラツキや不要なリップノイズがまったく入らなくて、ディエッサーを使う必要性を感じないです。高域も3〜4kHzや8kHzあたりに鋭さのピークが設定されていて、ヌケ感も十分でした。ツボを押さえているマイクだと思います。

──Aston Stealthはダイナミックマイクですけど、通常、ボーカルはコンデンサーマイクで録ることが多いですよね?
Hiro
:音のスピード感という面では、むしろコンデンサーマイクよりも本機の方が扱いやすいですね。音をピックアップする反応速度が丁度いいんですよ。音が速過ぎずモタつかずで、モニタリングがしやすい。コンデンサーマイクは反応が速過ぎるものが多くて、シビアな演奏が要求されるんですけど、Aston Stealthは演奏がしやすいと思います。

──本機には「V1、V2、G、D」という4つのモードが備わっていますが、それぞれの印象を教えてください。
Hiro
:4モードともハッキリした特徴があって、こだわり抜いてチューニングされている印象ですね。あと、メタルに限らずオールラウンドで使えると思いました。「G」と「D」はエレキギターで試したんですけど、「G」はきらびやかで、押し出しとヌケが強いですね。タイトで密度が濃いサウンドで録れました。しかも、低音が整理されていて、ベースとキックの帯域が確保されているんです。なので、最近のモダンメタルにも最適ですね。最初は「抜け過ぎかな?」と思ったんですけど、オケの中に入れると丁度いいんですよ。

──では、「D」モードは?
Hiro
:「D」モードはファットかつダークな印象で、リアルな中低域の質感が得られます。スピーカーユニットが駆動している感じを捉えていて、アンプの低音の鳴りがうまく録れました。モニタリングでも低域を感じながら演奏できるので、そのタフな感じが個人的には好きです。ハイゲインアンプとの相性も良くて、アンプの良さを活かしてくれます。ゲインは少し低いんですけど、マイクプリ側で補えばまったく問題ない範囲でした。

──男性ボーカル用の「V1」は?
Hiro
:かなりいいですね。「D」のようにリアルな中低域が得られるのと同時に、高域が伸びていて、「D」と「G」のいいとこ取りみたいな感じがあります。このマイクの一番の売りは、この「V1」なんじゃないかな。中低域の密度が濃くて、パワー感もありますし、シャウトとの相性もいいですね。サウンド自体が重厚な雰囲気をまとっているので、メタルのボーカルにドッシリとした味付けをして録るのには合っていると思います。「V1」はギターで使っても良かったですね。

──女性ボーカル用の「V2」を、今回はアコギで試してもらいましたが?
Hiro:
「V1」よりも低域がスッキリしていてタイトで、まとまった音で録れるという印象でした。それでいて、ふくよかさも残っていて、絶妙な低域感を持っています。きらびやかさが「V1」よりもあるんですけど、アコギを強く弾いても音が突き抜け過ぎないというか、録り音が飽和しないんですよ。あと、演奏のダイナミクスを地均ししてくれるというか、聴きやすくまとめてくれるのも「V2」のいいところですね。演奏がうまく聴こえるというか、実際アコギの演奏に集中できました。ただ、「V2」を男性ボーカルに使ってもいいし、メーカー側の推奨はありますけど、そのへんは好みで使い分ければいいと思います。

──軽めにコンプがかかっているような感じですか?
Hiro
:そうですね。ちょっと大雑把に弾いても、ダイナミクスと帯域をうまくまとめてくれるんですよ。そこがこのマイクのポイントで、特にアコギでその特性を強く感じました。

最初から作品にそのまま
使えるサウンドで録れる


──色々な点で、宅録ビギナーにとっても使いやすそうなマイクですね。
Hiro
:最初から作品にそのまま使えるサウンドで録れるので、ゼロからミックスをしなくていいですし、我々エンジニアにとっても、作業が早くなる点はありがたいですね。とにかく完成された音で録れるので、例えばEQもカット方向で使用するよりは、欲しいところをお好みで足すというのが、このマイクの正しい使い方だと思います。あと、指向性が広めなので、口の位置が少し動いてもちゃんと拾ってくれます。そういうセッティングにシビアにならなくて済むという点でも、初心者向けだと思います。

──本機はマイクプリが内蔵されていますが、その性能はいかがでしたか?
Hiro
:ビックリしたんですけど、ファンタム電源を入れると、ものすごくゲインが上がるんですよ。マイクプリ側のゲインを絞っても、本機のマイクプリで相当ゲインが稼げます。なので、外部のマイクプリを持っていない人でも、しっかりした音で録れると思います。

──アマチュアが余計なことを気にせず、すぐに曲で使えるいい音が録れるというのが、Aston Stealthの売りなんですね。
Hiro
:コンデンサーマイクで色々苦労するくらいなら、Aston Stealthを使った方が楽ですし、その結果いい作品が作れると思います。
 

ファンタム電源のオンが感知されると、自動検出機能が作動して紫色のLEDが点灯し、クラスAの内蔵マイクプリを経由するアクティブモードがオンになる
 

マイクをマイクスタンドに素早く取り付けられるマイクスタンド・アダプターを装備しているのも特徴だ
 

エレキギターはキャパリソンのOribt customを使用した

アンプはピーヴィーの5150で、キャビネットはオレンジのセレッションVintage 30が4発入ったモデルに、「G」モードにした本機を立ててチェックを行なった
 

アコギはモーリスのモデルを使い、女声向きのきらびやかなサウンドで録れる「V2」モードで試してみた
 

本機は内部にショックマウントが内蔵されているので、このようにハンドマイクで録ることも可能だ
 

尋's VOICE

V1とV2でシャウトを試してみたんですけど、中低域がキレイに出ていて、最初から耳に痛い成分がない状態で録れているという印象ですね。

うちの楽曲は楽器隊の音圧が高いので、その中で抜けてくる歌を録らないといけないんですけど、楽器に負けない歌を録るためには、中域が一番大切なんです。Aston Stealthはその中域がしっかり録れていました。

あと、ハイシャウトをすると普通は音割れしてしまうんですけど、本機の場合は音割れもしないですし、気にせず自分が出したい声量で歌えました。
 

この製品について

【製品概要】
「Aston Stealth」は、あらゆる音源に対応しているダイナミックマイクだ。男声に最適な「V1」と、女声に合う「V2」、ギター録音に最適化された「G」、リボンマイクを彷彿とさせる「D」という、4つのボイスパターンを搭載している。

【スペック】
●指向性:単一指向性
●最大入力SPL:140dB(THD 0.5%)
●感度:1mV/Pa(プリアンプ非動作時)、150mV/Pa(プリアンプ動作時)
●周波数特性:20Hz〜20kHz
●ボイス:4パターン(V1、V2、G、D)
●プリアンプ:Class A(内蔵、ファンタム電源により動作)
●外形寸法:長さ=196mm/直径=58mm  
●重量:692g
 

試奏者プロフィール


 

Hiro(ヒロ)
STUDIO PRISONERのレコーディングエンジニア。新人、ベテラン問わず様々なアーティストの作品をプロデュースし、その妥協を一切許さない音作りが各方面で高い評価を得ている。メタルのことを知り尽くした、まさにメタルマスターだ。
 


『UNLEASH』

尋(ヒロ)
ハードコア・バンド、NOCTURNAL BLOODLUSTのボーカリスト。尋の8種類のシャウトを使い分けるボーカルワークや、プレイヤー陣の高い演奏力で多くのファンから支持を集めている。7月24日には最新ミニアルバム『UNLEASH』(写真)をリリースした。
 

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