タウンゼンド・ラボ モデリングマイク・システム Sphere L22

録音後にマイクの種類や極性を変更できるモデリングマイク「Sphere L22」の実力

録音後にマイクの種類や極性を変更できるモデリングマイク「Sphere L22」の実力

2017/09/15

SUPALOVEの敏腕クリエイター4名がSphere L22の実力をスタジオでチェック!


伊東大和、Tak Miyazawa、鈴木裕明、あらケン


実際にスタジオでSphere L22を使ってボーカルのレコーディングを行なってみました。全11種類のマイクモデリングのうち4モデルと、Sphere DSPプラグインの様々な機能を、4名のクリエイターが合同でチェックします。

吉田 博

伊東大和
MIT STUDIOのエンジニアからキャリアをスタート。これまでに携わったタイトルは数知れず。ジャンルを問わず、プロジェクト全体のコンセプトや楽曲の世界観を理解したエンジニアリングに定評がある。

Tak Miyazawa
バークリー音楽院卒業後、華原朋美のサウンドプロデュースや平井堅との共同楽曲制作の他、現在放送中のTVアニメ『セントールの悩み』の劇伴も担当。また、作家以外にギタリスト、エンジニアとしても活動しており、数々の作品に携わっている

鈴木裕明
専門学校を卒業後、本格的に音楽活動をスタートさせ、アニメ「侵略!イカ娘」をはじめ、声優ユニット「ミルキィホームズ」や「ラブライブ!」などの作・編曲を手掛ける、注目のクリエイター。

あらケン
ギタリスト/作・編曲家。及川光博やスガシカオ、秦 基博、諸星和己、 藤崎賢一、AKB48、May'n、Machicoなど、様々なアーティストのライブサポートやレコーディング、楽曲提供やアレンジなどで活躍中。

吉田 博
シンガーソングライター。2010年久保田利伸の全国ツアーにバックコーラスとして参加。またソングライターとしても、西野カナ「Dear Bride」(日本有線大賞受賞)、「Esperanza」(日本レコード大賞優秀作品賞受賞)をはじめ、AKB48、乃木坂46などの作・編曲にも関わる。

ビンテージマイクの個々の特徴をとてもよく捉えている

──まず、Sphere L22のマイク単体としての印象や特徴を聞かせてください。

伊東:ものすごく素直な音質で、まるで測定用マイクのようにクセがありません。非常にフラットで、鳴っている音をそのまま録れるマイクという印象です。

Tak:普通にプロの現場で、いろんなジャンルのレコーディングに使えるマイクだと思います。もちろん、ビンテージマイクのモデリングができるという点が“売り”なんでしょうけど、マイク単体でも、とてもよく出来ているなという印象を受けました。

あらケン:僕もこのマイクで録ったギターの素の音を聴きましたけど、すごくちゃんとした音だと思いました。

鈴木:自然なサウンドで録れるからこそ、Sphere DSPプラグインでいろんなマイクタイプに変えた時に、その違いがわかりやすいんでしょうね。

伊東:S/N比もすごくいいですしね。

Tak:-20dBのパッドも付いているし、最大SPLが140dBなので、相当広い範囲の楽器収録で使えますよ。
あらケン:それはデカい音を録っても大丈夫ということですか?

伊東:そう、ドラム録りにも使えます。普通、ノイマンU47 Tubeをドラムに立てるなんて、壊れるのが怖くてできないじゃないですか。でも、LD-47(Sphere L22)を使えば、それが気軽に試せるということも、このマイクシステムのメリットでしょうね。

──ビンテージマイクのモデリングのクオリティについてはいかがでしたか?

Tak:それぞれの実機のサウンドイメージの枠内には十分に入っていて、個々のマイクの特徴をとてもよく捉えていると思います。ビンテージのマイクって個体差が大きいから、例えばノイマンU67を何本か集めたら、厳密には全部の音が違うんですね。それと同じで、LD-67(Sphere L22)とU67を比較すると違いは感じるんですけど、U67に求める質感や欲しいサウンド自体は、ちゃんと再現されていました。

あらケン:今回用意した4モデルの実機を比較した時の印象と、Sphere L22の同じ4タイプのマイクモデルを比較した時の印象はまったく同じでしたね。

伊東:レンジが広くて、“サシスセソ”系の歯擦音が気になるソニーC-800Gの特徴とかも、LD-800(Sphere L22)はすごく忠実に再現しているし、U47Tubeの筋肉質な中低域感もLD-47(Sphere L22)はきちんと出しています。聴き比べとなると、どうしても“似ている、似ていない”という話になりがちですけど、「このマイクで録りたい」という人が求める音には、ちゃんとなっていますよね。

モデリング以上に驚いたのは録音後に極性を変えられること

──マイクのタイプだけでなく、指向性やマイクの向きを、録った後で変えられるという点については、どう感じましたか?

伊東:実はモデリング以上に、録音後にマイクの種類や極性を変えられる「リマイク・テクノロジー」に驚きました。例えば、アコギを録る時って、どうしてもプレイヤーが動いて演奏するからマイクの指向性からズレたりするじゃないですか。そうした時でも、Sphere DSPプラグインの「AXIS」というパラメーターで、マイクの向き(角度)が調整できるんです。本当に素晴らしいですね。

あらケン:アコギ録音は、マイキングによって音が劇的に変わるじゃないですか。でも、そのシビアなマイキングが、ザックリと録っておいて後から補正できるとなれば、とても便利ですよね。

Tak:部屋で録った時の空調や、パソコンのファンノイズとかの被りを軽減することもできますから、宅録環境では非常に有効な補正が可能ですよね。

鈴木:アレンジをしていくと、「この帯域がもう少し欲しいな」とか「歌の質感を変えたいな」っていうことがよくあって、その時にコンプやEQでの音作りとは別に、マイクの種類を変えられるという選択肢が手に入るのもいいですよね。

あらケン:歌を録った後で音質をイジりたくなった時でも、気持ち的に「あまりEQは使いたくない」っていうことがあるじゃないですか。そういった時でも、マイクタイプを変えていくことで、「これがいい」と決められる場面も出てきそうですね。さらに言えば、アマチュアの人で、EQやコンプの使い方がよくわからないっていう人でも、ポンポンとマイクタイプを変えていくだけで、「ああ、これこれ」って好きな音を選べるので、すごく楽しいと思いますよ。

Tak:クリエイター的な発想だと、それこそAXISパラメーターで指向性を動かすことで、従来のリバーブとは違った響きや空気感を作れそうですよね。

伊東:だから、Sphere L22の本当の意義は、「ビンテージマイクの音にできます」ということ以上に、ユーザーがイメージする音を選べることにあって、それの方がポイントが高いと思うし、そこから色々な可能性が生まれてくると感じました。

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DATA

【Sphere L22マイクロフォン】●等価ノイズレベル:7 dB-A ●最大SPL @ 0.5% THD:140dB(-20dBパッドオン) ●パッドアッテネート:-10dB/-20dB ●感度:22mV/Pa●出力端子:5ピン XLRオス ●ブレイクアウトケーブル (3m):5ピン XLRメス - 3ピン XLRオス×2 ●出力インピーダンス:200Ω ●推奨負荷インピーダンス:1k Ω以上 ●ファンタム電源:電圧=44〜52V(チャンネルごと)、消費電流=5mA (チャンネルごとティピカル、8mA @ 最大SPL) ●外形寸法:63 mm(直径)×225 mm(長さ) ●本体重量 : 770 g
【Sphere DSP プラグイン】●対応フォーマット:UAD、AAX Native、VST2、VST3、Audio Units(Mac) ●対応OS:ネイティブ(AAX、VST、AU)=Mac OSX 10.8.5 以降、Windows 7 以降、ApolloインターフェイスとUAD-2ハードウェア(AAX、VST、AU、RTAS)=Mac OSX 10.9.5以降、Windows 7以降
【システム条件】●メモリ:4GB以上 ●空きディスク容量:200MB以上 ●その他:1024×768以上の表示領域を持つディスプレイ、インターネット接続(ソフトウェアのダウンロードに必要)、ファンタム電源を供給可能な2チャンネル以上の入力を備えるマイクプリ、AAX、VST2、VST3、AU および UAD プラグイン形式に対応するホストアプリケーション(DAWソフト)

¥157,000
問:㈱フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp

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