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【秋のイチ押し宅録ギア徹底試奏レポート】ズームLiveTrak L-12

【秋のイチ押し宅録ギア徹底試奏レポート】ズームLiveTrak L-12

2017/11/16


LiveTrak L-12

最大14chのマルチ録音が可能で、9通りのミックスバランスが保存できる

ズーム
LiveTrak L-12

オープンプライス(¥68,000前後
㈱ズーム
TEL:0570-078206
https://www.zoom.co.jp/
 

試奏・文:篠崎恭一(エンジニア)
写真:小貝和夫
撮影協力:メーザーハウス

※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2017年11月号)より抜粋したものです。詳しくは、http://www.sounddesigner.jp/をご覧ください。


独立したミックスバランスを
設定できる5系統の出力を装備


非常に豊富な機能を備えているズームのデジタルミキサーLiveTrack L-12(以下L-12)ですが、まずはミキサーとしての音質を確認してみました。

マイクを接続し、歌を歌ってヘッドアンプを含めた基本的な音質をチェックしてみると、音質は非常に現代的でソリッドなサウンドという印象です。内蔵のEQをかけてみると、ツマミの動きに対する反応が早いうえに元音のレンジが広いので、PAで使用する際にも非常に使いやすいのではと思いました。あらかじめ16種類の空間系エフェクトが用意されているので、楽曲や環境により最適なサウンドを手元で素早く作ることができます。また、センド量をキープしたまま別の空間系プリセットに切り変えられるのも非常に便利です。

次にHi-Z端子にエレアコを接続してラインの音をチェックしてみましたが、こちらの音質もマイクを接続した時と変わらず、非常に素直な印象です。ピッキングのニュアンスなどもしっかりと拾ってくれるので、ライブでエレアコやベースをライン接続しても十分に使えます。

また、L-12はメインアウトとは別に、独立したミックスバランスを設定できる5系統のヘッドホン出力を備えているので、例えばリハスタなどでバンドレコーディングをする際に、メンバー5人それぞれの好みに合わせたミックスバランスを出力することも可能です。そして、それらはすべてツマミではなく、フェーダーで視覚的に確認できます。

A〜Eのバンクを切り替えて5系統のバランスを作るのですが、別のバンクを呼び出してフェーダーをイジってから元のバンクを呼び出すと、元のフェーダー位置をLEDで表示してくれるので、バンクを頻繁に行き来しても、それぞれのバランスを見失うことがないのもありがたい点です。このあたりの使い勝手からも、本機は小規模なPAシステムを構築するのには非常に便利なミキサーです。

音響的な専門知識がない人でも
簡単にセッティングすることが可能


このL-12はオーディオインターフェイス機能も備えており、 単独で12チャンネル+マスター2チャンネルの計14チャンネルを、同時にパソコンなどに録音することができます。

さらに本機は、SDカードを使用することで、14チャンネルの同時録音ができる単体のレコーダーとしても機能します。今回は音質のチェックをしながら、同時にSDカードにレコーディングしたサウンドも聴いてみました。ソースは音質チェックの時と同じく歌とエレアコです。SDカードに録音したものをパソコンにインポートして、DAWソフト上で音を確認してみたところ、音質のキャラクターの印象は大きく変わりませんが、録音した音の方が、モニタリング音に比べてすっきりした印象を受けました。

これは、SDカードやパソコンを使用した際に録音される音はフェーダー通過前の信号なので、録音中にフェーダーを操作しても影響を受けず、通る回路も少なくなることが理由でしょう。

ミックスなど後々の加工もしやすい音なので、ライブ中は会場に流す音とミュージシャンに返すモニター音のバランス調整に集中し、ライブ終了後にマルチ録音したトラックを改めてミックスして、ライブレコーディングの音源を作成するという使い方が考えられます。
さらにL-12のすごいところが、フェーダー位置やEQのセッティングなども含めた「シーンメモリー」を9個まで保存できる機能を有している点です。つまり、複数のバンドが出演するイベントなどで、リハーサルの時点で各バンドのミックスバランスを作って保存しておけば、ボタン操作ひとつで瞬時に各バンドの設定を呼び出すことができるうえに、簡単に上書きや呼び出しも可能です。

このL-12は、音響的な専門知識がない人でも簡単にセッティングすることができ、ライブPAからレコーディングまでシチュエーションを選ばずに使うことができます。軽音部やバンドマンに特にオススメしたいミキサーです。

モニター出力部は、ヘッドホンを接続できる5系統の標準ステレオフォーンに加え、モニターアウトAには標準モノラルフォーン×2(L/R)が用意されており、それぞれ独立してツマミで音量を調整できる

EQとエフェクトのセンド量、パンは、各トラックのSELボタンを押すことで、それぞれの調整を行なう仕様になっている。ちなみに、EQのミッドはパラメトリック式になっており、任意の中心帯域を選択可能だ

各トラックのフェーダー位置やEQ設定などを含めた計9つのシーンをメモリでき、ボタンを押すだけで瞬時に呼び出せる(96kHzサンプリング時には、3バンドEQおよび内蔵エフェクトは使用不可)
 

モードスイッチを一番右にすると、本機がオーディオインターフェイスとして機能する。ちなみに、左のUSB HOSTにすると本体にUSBメモリを挿してデータのやり取りができ、CARD READERにすると本機がSDカードリーダーとして機能して、パソコンなどとデータのやり取りができる

SDカードスロットにSDカードを挿すと、本機だけで最大14チャンネルのレコーディングが同時に行なえる。ちなみに、SDカード、SDHC規格対応カード、SDXC規格対応カードのいずれにも対応
 

【製品概要】
「LiveTrak L-12」は、小規模なライブやイベントなどで快適に使用できる12チャンネルのミキサーに、レコーダー機能とオーディオインターフェイス機能を統合した画期的な製品だ。最大14チャンネルのマルチ録音が可能な他、フェーダーを通過する前の信号が収録されるため、ライブ中のミックス操作の影響を受けずに演奏を記録することができる。また、9通りのミックスバランスを保存することが可能だ。
 

スペック

●入出力端子:インプット×8(モノラル、XLR/TRSコンボ)、インプット×2(ステレオ、標準フォーン、RCA)、モニターアウト×5(標準ステレオフォーン)、マスターアウト(XLR)、USB ●音質:最高24ビット/48kHz(オーディオインターフェイス使用時)、最高24ビット/96kHz(レコーダー使用時) ●消費電力:最大17W ●電源:ACアダプター(DC12V/2A) ●外形寸法:445(W)×282(D)×70.5(H)mm ●重量:2.53kg
 

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