プロ御用達 最新デジタルアンプの実力検証
フラクタル・オーディオ・システムズAxe-Fx III、ケンパーProfiling HEAD、ポジティブ・グリッドBIAS Rackをレビュー!
フラクタル・オーディオ・システムズAxe-Fx III、ケンパーProfiling HEAD、ポジティブ・グリッドBIAS Rackをレビュー!
2018/11/15
「プロファイリング」によって、超リアルなサウンドがどこでも鳴らせる人気モデル
ケンパー
Profiling HEAD
¥290,000
問:㈱コルグお客様相談窓口
TEL:0570-666-569
http://www.korg-kid.com/kemper/
文:野村大輔 部分写真:小貝和夫
リアパネルには豊富な端子が用意されているので、レコーディングやライブなどのあらゆるシチュエーションに対応できる
ドイツで生まれたケンパーProfilingシリーズは、今やプロアマ問わず、世界中のギタリストから絶大な支持を集めている新時代のデジタルアンプです。
デザインは個性的ですが、ギタリストが通常のアンプを触るのと同様に、基本的な操作はフロントパネルのツマミだけで行なえるので、直感的に扱えます。また、ページ階層も浅いため、細かいエディットなども素早くできます。
一般的なアンプシミュレーターは、アンプのサウンドを電気的に解析しているので、音色は似ているものの、チューブアンプ特有の質感などは、どうしても本物と同じにはなりません。しかし、ケンパーの場合は、アンプのサウンドを取り込んでそのモデルの挙動をすべて解析し、それをファイル化して内部に取り込む「プロファイリング」という斬新な方式を採用しています。これが一番のポイントで、ギター側のボリューム操作や、弾き手の微妙なタッチなどに対して、本物のアンプと同じ反応を示します。
ビンテージアンプはコンディションの問題などでツアーに持ち出せないことがありますが、ケンパーに一度サウンドを取り込んでしまえば、世界のどこにでも高価なビンテージアンプを持っていくことが可能です。また、ケンパーにはUSB端子が搭載されているので、ツアー先でケンパーをレンタルして、自分のアンプデータが入っているUSBメモリだけを持ち運ぶというプロも増えています。プロファイリングは自分で行なうこともできますが、あらかじめ膨大な数のプロファイリングデータが入っていますので、まずはこれらを使ってみるといいでしょう。
現在ラインナップとしては、ここで紹介している「Profiling HAED」に代表されるヘッドタイプ以外に、ラックタイプもあり、どちらもパワーアンプ搭載型と非搭載型を選べるようになっています。
多くのプロが本物のアンプと区別が付かないと大絶賛し、実際に双方をランダムに切り替えるブラインドテストを行なったことがありますが、いつ切り替えたのかがわからないほどリアルでした。このサウンドを、ぜひ体験してください。
ポイント①:新旧の有名アンプをキャビやマイクの特性も込みで忠実に収録したサウンドを収録
ケンパーには、ビンテージアンプからモダン系のハイゲインアンプまで、世界中のスタジオで収録した300種類以上ものアンプのプロファイルデータを内蔵しています。そのどれもが、一流のエンジニアがレコーディングスタジオで丁寧にプロファイリングしており、アンプだけでなく、キャビネットやマイクの特性も一緒に取り込んでいます。
工場出荷時に入っているプリセットでは、アンプ名、キャビネット名、マイク名などの細かいデータもディスプレイで確認でき、同じアンプを異なるマイクで収音したファイルも多数収録されています。また、パソコンとUSBで接続すれば、リグマネージャーという専用アプリケーションで膨大なデータをリスト表示することができ、自分が鳴らしたいサウンドをすぐに見つけることができます。
ケンパーを購入した時点で、ハイクオリティなアンプのプロファイルデータが多数収録されているので、すぐにプロレベルのサウンドでギターをレコーディングできる。なお、専用アプリでファイルを選択すると、アンプやマイクなどの機材だけでなく、プロファイリングで使ったギターのピックアップのタイプや、スタジオなどの情報が右側の欄に表示される
1つのアンプに対して、歪み量やチャンネル、マイクなどを変えて収録したファイルが入っているので、どんなジャンルにも対応することができる(画像はマーシャル系のアンプを呼び出したころ)
こちらはフェンダー系のアンプを呼び出したところ
キャビネットに立てたマイクも表示されるので、音色を選ぶ際に便利だ(画像はシュアSM57を使用)
こちらの画像では、右はSM57とロイヤーR121を使用
本体のディスプレイには、セレクとしているアンプ名やツマミのパラメーター値だけでなく、エフェクトのルーティングも表示される
ポイント②:本物のアンプとキャビの音をプロファイリングして寸分違わぬ音が鳴らせる
ケンパーの最大の特徴が、本物のアンプとキャビネットの音をマイクで収音して内部に取り込む「プロファイリング」ができる点です。その方法ですが、プロファイリングするアンプ、キャビネット、収音に使うマイクの特性を調べる特別な信号をケンパーから送り、アンプを鳴らします。すると、マイクを通して信号がケンパーに送られ、そのアンプの挙動をケンパー側が解析してIRファイルを生成します。これがプロファイリングの仕組みです。アンプやマイクの種類、マイクのポジションを変えることで、様々なタイプのサウンドを取り込んで使うことができます。
アンプをマイクで録音するのと同じように、ケンパーからキャビネットを通して鳴る特殊な信号を収音するだけと、作業自体は意外と簡単だ
プロファイリングを行なっている最中は、ディスプレイにこのような絵が表示される
ポイント③:世界中のユーザーが作ったアンプのIRファイルを本体に取り込んで使える
ケンパーは、専用アプリケーションである「リグマネージャー」を使うことで、パソコンから様々なコントロールすることが可能です。その中に「リグ・エクスチェンジ」というフォルダがあり、そこで世界中のケンパーユーザーが作ったリグファイル(IRファイル)を閲覧して、無料でダウンロードすることができます。アンプ名、キャビネット名、マイク名、製作者名、歪みの量など細かいデータが書いてあるので、ファイルを選ぶうえで非常に参考になります。また、それぞれ5段階の評価が付いているので、人気のIRファイルをすぐに見つけることができます。
各ファイルには、プロファイリングで使ったアンプやキャビなどが詳細に書かれているので、目的のものを見つけやすい
ポイント④:ギターレコーディングで必要な質が高いエフェクターを多数搭載
ケンパーは、もともとVirusなどの名器を開発した、世界的に有名なシンセメーカー「アクセス」のギターブランドであり、その技術を活かしたハイクオリティなエフェクトも売りになっています。ディレイやピッチシフター、リバーブ、ディストーション、ブースター、モジュレーション、フェイザー、フランジャー、ワウ、コンプレッサー、ノイズゲートなど、あらゆるエフェクターが65種以上内蔵されています。また、それらがカテゴリーごとに色分けされており、パネル上のLEDと液晶ディスプレイが、各カテゴリーの色に光るので、今、自分がどのカテゴリーのエフェクトを選んでいるのかが一目瞭然です。
本体のパネルは、左から「かけ録りエフェクター→アンプ+キャビネット→後がけエフェクター」というレイアウトになっており、信号の流れる順番が把握しやすい
歪み系エフェクターを表示させたところ
揺らし系エフェクターを表示させたところ
こちらは空間系エフェクターを選んだところ。このように、カテゴリーごとにカラーが分かれており、上写真のパネル上にあるLEDも連動して同じ色が光るようになっている
ポイント⑤:リアンプボックスを使わなくてもケンパーだけでリアンプができる
最近では、宅録とスタジオを問わず、ギターのレコーディングでリアンプをする機会が多くなっています。ケンパーのリアパネルには、ギターの素の音が出力されるダイレクトアウト端子が付いています。通常、リアンプではリアンプボックス(逆DI)を使いますが、ケンパーの場合は必要ありません。マスターアウトからはアンプサウンドを、ダイレクトアウトからはギターのドライ音を出力して、DAWソフトに同時に録音することができるのは便利です。もし納得がいかない場合は、ドライ音をケンパーに戻せば、アンプを何台も試して理想の音でリアンプできます。
左のダイレクトアウトからはギターのドライ音を出し、右のメインアウトからはケンパーのプロファイルを通した音を出力してオーディオインターフェイスに送れる
下はダイレクトアウトから送ったドライ音のトラックで、上はドライのトラックをケンパーに送って、プロファイルを通した音で録音し直したリアンプ後のトラック
スペック
●音質:最高24ビット/96kHz
●入出力端子:インプット×2(標準フォーンアンバランス、標準フォーンバランス)、リターン×2(XLRバランス、標準フォーンバランス)、メインアウト×4(XLRバランス×2/標準フォーンバランス×2、ステレオ)、モニターアウト(標準フォーンアンバランス)、ダイレクトアウト/センド(標準フォーンアンバランス)、スイッチ/ペダル(標準フォーン)×2、ヘッドホン、S/P DIFイン/アウト、MIDI イン/アウト/スルー、USB
●外形寸法:378(W)×173(D)×217(H)mm
●重量:5.32kg
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