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フラクタル・オーディオ・システムズAxe-Fx III、ケンパーProfiling HEAD、ポジティブ・グリッドBIAS Rackをレビュー!

フラクタル・オーディオ・システムズAxe-Fx III、ケンパーProfiling HEAD、ポジティブ・グリッドBIAS Rackをレビュー!

2018/11/15


回路レベルでカスタマイズして自分だけのアンプが作れる驚きの機能を搭載

ポジティブ・グリッド
BIAS Rack

¥164,815
問:㈱メディア・インテグレーションMI事業部
TEL:03-3477-1493
http://www.minet.jp/
 

解説:小林信一
協力:目黒真二 部分写真:小貝和夫

 

 

ポジティブ・グリッドというメーカーは、もともと真空管アンプのモデリングからスタートした、ギターアプリの開発メーカーだったんです。BIASも最初はソフトウェアだけだったんですけど、最近はハードのBIAS HeadとBIAS Rackが発売されて、特に600Wのパワーアンプ付きのバージョンが出たことで、ステージ上でBIASを使うプロが一気に増えました。ソフトウェアからスタートしたからか、ハードとコントロールソフト「BIAS Amp professional」との相性がとても良くて、パソコンやタブレットからパラメーターが詳細にエディットできるのも特徴です。

最初にBIAS Rackを試奏した時は、とにかく真空管のモデリング技術の高さにビックリしました。僕は「チューブマニア」なんですけど、それまでのアンプシミュレーターでは全然満足できなかったんです。でも、BIASはピッキングの強弱や、ギターのボリュームの上げ下げによって変わる挙動が真空管そのものだったんです。他のアンプシミュレーターが、アンプの回路を丸ごとザックリ再現しているとしたら、BIASは真空管そのものを精巧に再現しているという感じなんです。

それに加えて、様々なセクションのエディットが細かくできるのもポイントです。キャビネットやマイクは当然として、BIASの場合は、プリアンプやパワーアンプ、トランスを回路レベルまで詳細に調整できるんですね。アンプを構成している要素は、すべて満たしていると思います。
実を言うと僕は、本物のメサブギーRectifierに苦手意識を持っていたんですが、BIASのRectifierのシミュレートはかなり緻密な音作りができるので、今はそれをメインアンプとして使っています。
それと、コントロールソフトの中にある「ToneCloud」から、他のユーザーが作ったファイルをダウンロードできたり、サードパーティ製のIRファイルを追加することができるという点で、拡張性も優れていると思います。
今はレコーディングとライブの両方で使っていますし、どこでも常に同じ音で演奏できるので、僕にとっては絶対に欠かせない機材になっています。
 

ポイント①:様々なジャンルに対応するアンプ+キャビ+マイクを5タイプ×5モデル計25種類収録

BIASには古今東西の名アンプが収録されており、クリーンからクランチ、メタルなど、5タイプ×5モデルの合計25のプリセットが用意されています。

キャビネットも口径やスピーカーの数など、多数のバリエーションが用意されているのですが、面白いのはキャビネットのオープンタイプとクローズタイプが変更できる点です。例えば、マーシャルのキャビネットをオープンタイプにしたり、フェンダーTwin Reverbをクローズタイプにするなど、現実にはあり得ない設定にすることもできます。
また、マイクはダイナミック/リボン/コンデンサーが用意されており、最大2本をセットして、距離や位置、両者のバランスなどを自由に変えられます。

アンプタイプは「CLEAN、GLASSY、BLUES、CRUNCH、METAL」の5つがあり、それぞれ5種類ずつモデルをセレクトすることができる
 

 

こちらはクリーンタイプのアンプをセレクトしたところ。小林氏が名前を「REC Clean」と付けたのだが、それがパネルに反映されるというユニークな機能も持っている

メサブギーRectifier系のアンプモデルには「REC Mesa」という名前を付けて、ザクザクとしたリフを奏でる際などに使用する
 

キャビネットセクションでは、キャビネットと2本のマイクのセレクトと、マイキング(距離と位置)の調整が行なえる。なお、すべてのキャビネットをオープンかクローズに自由に変えることができるのは、BIAS独自の機能だ
 


 

ポイント②:プリアンプ、パワーアンプ、トランスという各セクションをアンプビルダーのように調整可能

これまでのアンプシミュレーターのように、たんにギターアンプの音をシミュレートしているのではなく、プリアンプとパワーアンプに挿す真空管の種類や本数、真空管の動作に影響するバイアスなどを徹底的にカスタマイズできるのもBIASシリーズの特徴です。プリ部では、真空管を通過する前と後にEQを配置したり、どれくらいオーバーロードさせるかをツマミで調整できます。パワー部ではビンテージとモダンといったキャラクターを選択可能と、まさにアンプにおける真空管による音作りの重要さを、しっかりと組み入れているのがわかります。

また、真空管のこだわりだけではなく、TOPOLOGY(パワーアンプ回路の仕様)や、コンプレッション感を左右する電源トランスのタイプまでも変更できるなど、とことんカスタマイズすることが可能になっています。ここまでくると、「アンプシミュレーター」ではなく、「アンプデザイナー(アンプ設計)」と言うべきかもしれません。

TUBE STAGESとDISTORTIONで、本物のチューブアンプの真空管にかかる電圧や挙動を調整するようなイメージで歪み量を変えられる

プリアンプには6種類のモジュールと5種類の真空管が用意されている
 

パワーアンプにもモジュールが6種類あり、演奏のニュアンスが変えられる

トランスでは、真空菅アンプ特有のコンプレッション感が調節できる
 

ポイント③:世界中のギタリストが作ったサウンドのデータを取り込める

専用コントロールソフト「BIAS Amp professional」からWeb上のToneCloudへ行くと、ポジティブ・グリッドやBIASユーザーが作成した膨大なアンプトーンが用意されており、自由にダウンロードできます。「最近アップされたトーン」、「人気のトーン」、「CLEAN」や「METAL」などのカテゴリーといった様々なページがあるだけではなく、「ブルース特集」や「ベースコレクション」などのトピック的なものもあり、検索機能も付いています。

音色別に、おおまかにカテゴリー分けがされているので、目的のアンプタイプを探しやすくなっている
 

ポイント④:自分の好きなギタリストの音をBIASに取り込むことができる「アンプマッチ機能」を搭載

憧れのギタリストの音を簡単に作成できる、夢のような機能が「アンプマッチ」機能です。

これは対象のギタリストのトーンと、自分が弾いているギターのトーンをBIASが比較解析して、BIAS側で自動的にトーンなどのパラメーターをマッチングさせて同じ音になるようにしてくれるというものです。

手順としては、①まずトーンマッチ機能を立ち上げます。②次に、好きなギタリストのギターだけが鳴っているイントロ部分などを、CDやオーディオプレーヤーからオーディオファイルとして読み込みます。③ギターとBIASをオーディオインターフェイス経由で接続します。④自分である程度の音作りをします。この際、好きなギタリストに近いアンプタイプを選ぶのがポイントです。⑤その状態でギターを弾いてレコーディングします。⑥あとは、マッチングが完了するのを待つだけです。

今回は、メタルバンドであるホワイトスネイクの「バッド・ボーイズ」のオーディオファイルを取り込んで実際にアンプマッチをしましたが、ほんの10分くらいの作業でそっくりなサウンドを作り出すのに成功しました。

他にも、今は手放してしまったアンプの音を使いたい時などにも、録音したデータが残ってさえいれば、アンプマッチ機能で再現することができます。


 


 

スペック

●出力:600W(8Ω)、300W(16Ω)
●入出力端子:インプット(標準フォーンアンバランス)、センドリターン(共に標準フォーン)、ヘッドホン、ラインアウト×4(XLRバランス×2、標準フォーンアンバランス×2)、スピーカーアウト(標準フォーン)、フットスイッチ×2(標準フォーン)、MIDI イン/アウト/スルー、USB
●その他:Bluetooth接続対応
●外形寸法:483(W)×89(D)×343(H)mm  
●重量:6.8kg
 

プロフィール

小林信一
(コバヤシ シンイチ)
1995年からTVやCMソングのギターレコーディングに参加し、作曲・編曲や採譜、スタジオワークをきっかけにプロとして音楽活動を開始。自身のヘヴィロック・バンド“R-ONE”での活動を機にESP・SCHECTERギターのモニターとして7弦ギターの開発に協力。2018年10月5日にはソロアルバム『科学者の真実』をリリース。ギター教則関係の著作を数多く手掛けている。

 

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