真空管内蔵モデル試聴レポート

【エンジニア飛澤正人氏がレビュー】レトロ・インストゥルメンツRetro 176

【エンジニア飛澤正人氏がレビュー】レトロ・インストゥルメンツRetro 176

2017/06/30


ビンテージな筐体に便利な機能を多数内蔵し主役パートを引き立てる1台

コンプ
レトロ・インストゥルメンツ
Retro 176

オープンプライス(¥409,000前後)
問:M.I.D.
http://miyaji.co.jp/MID/

レトロ・インストゥルメンツRetro 176

 

定番の「ウーレイ1176」の前身に、真空管を搭載した「176」というコンプがあったんですが、本機はそれを再現したモデルです。スイッチ類のサイズや感触も含めて、よく出来ていると思います。
さすが真空管を使っているだけあって、かかり方がとても自然で、真空管らしい色を感じます。「音の大小の間にある溝が自然に埋まる」という印象を受けました。例えば、ベースで速いパッセージを弾くと音量がバラつきますが、これを使えばキレイに揃えてくれます。アタックとリリースも用意されているので、アタックの強い打楽器系などは特に重宝するでしょうね。それと、「アシンメトリー」というスイッチがあって、「正相」と「逆相」のどちらの信号にコンプをかけるのかを選べるんです。ベースで「逆相」にして使ってみたら、所々で逆相になっている音だけにコンプがかかって面白い効果が得られました。とにかくオケ中での存在感を強調することができるので、主役にしたいパートに使ってみてほしいですね。

【製品概要】
「Retro 176」は、ユニバーサル・オーディオの「176」をベースに開発された真空管コンプだ。厳選されたNOSチューブを搭載しており、1960年代に多くのエンジニアに愛された、特徴的なコンプレッションを実現。また、真空管コンプでは珍しく、可変式のアタック/リリースタイムを採用しているのも特徴だ。

【SPEC】
●入出力端子:インプット(XLR)、アウトプット(XLR)、ラインインアウト(XLR)、リンク(RCA) ●コントロール:インプット/アウトプットボリューム、レシオ、アタック、リリース、ハイパスフィルター(サイドチェイン)、アシンメトリースイッチ
 


飛澤正人

【試奏環境】
今回はDAWソフトにアビッドPro Tools、オーディオインターフェイスにデジグリッドのIOSとIOXを使ってチェックを行なった。マイクの試奏では、クセの少ないアバロン・デザインAD2022(マイクプリ)を通してPro Toolsに録音。コンプの試奏ではPro Toolsのセッションファイルを開き、すでに録音済みのドラムやベースなどのソースにかけて試聴を行なった。DIは、パッシブのシングルPUとハムバッキングPUのエレキギター、パッシブタイプのエレキベースを接続して音質を確認している。ちなみに、モニタースピーカーはB&Wの805シリーズで、ヘッドホンはシュ アSRH1540を使用した。

【プロフィール】
飛澤正人(トビサワ マサヒト) Dragon Ashなどの作品を手掛けている敏腕エンジニア。空間表現や奥行きの作り方に定評があり、時間軸に音を刻み込むようなミックスはアーティストから厚い信頼を得ている。近年は作・編曲家としても活動を展開し、藤本 健氏とのコラボ企画『DTMステーションEngineering』もスタートしている。


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