真空管内蔵モデル試聴レポート

【エンジニア飛澤正人氏がレビュー】アバロン・デザインVT-737SP

【エンジニア飛澤正人氏がレビュー】アバロン・デザインVT-737SP

2017/06/30


全パートの音作りに使える味付けのない素直な音質

チャンネルストリップ
アバロン・デザイン
VT-737SP

オープンプライス(¥275,000前後)
問:M.I.D.
http://miyaji.co.jp/MID/

アバロン・デザインVT-737SP

 

アバロン・デザインらしい堅牢なルックスがいいですね。音はクリーンそのもので、ゲインを上げても音が割れるような歪みがまったく起きません。実際の録音時にはダイナミックレンジを稼ぐために、マイクプリのゲインを上げていくんですけど、本機は入力段で自然なリミッティングがかかっているみたいで、安心してゲインを上げられました。味付けがなくて素直なんですけど、明るい倍音が加わってパワー感も出ます。
コンプの効きは柔らかくて、ジェントルな感じですね。パツパツとした感じではないので、軽くピークを抑えるのに向いています。EQの効きはすごく良くて、欲しい帯域がパキっと持ち上がってくれました。それと、本機はEQとコンプのルーティングを変えられるので、音作りの幅がすごく広いのも特徴です。例えば、EQを使うことでハイだけにコンプをかけたりできるのは便利です。本機はボーカルから楽器までオールマイティに使える、頼もしいチャンネルストリップです。

【製品概要】
「VT-737SP」は、高品位なクラスAプリアンプと、100%ディスクリートのクラスA高電圧トランジスタを採用した真空管チャンネルストリップだ。ペアクラスA三極真空管を搭載したオプトコンプや、調整する周波数帯をそれぞれ選択できる4バンドEQなど、本機1台で様々な処理が行なえる。

【SPEC】
●入出力端子:インプット(標準フォーン)、ラインインアウト(XLR)、マイクイン(XLR)、リンク(標準フォーン) ●コントロール:プリアンプゲイン、アタック、リリース、スレッショルド、レシオ、4バンドEQ(ベース、ローミッド、ハイミッド、トレブル)、ハイパスイルター。アウトプットボリューム ●電源:100V ●外形寸法:533(W)×457(H)×203(D)mm ●重量:10kg
 


飛澤正人

 

【試奏環境】
今回はDAWソフトにアビッドPro Tools、オーディオインターフェイスにデジグリッドのIOSとIOXを使ってチェックを行なった。マイクの試奏では、クセの少ないアバロン・デザインAD2022(マイクプリ)を通してPro Toolsに録音。コンプの試奏ではPro Toolsのセッションファイルを開き、すでに録音済みのドラムやベースなどのソースにかけて試聴を行なった。DIは、パッシブのシングルPUとハムバッキングPUのエレキギター、パッシブタイプのエレキベースを接続して音質を確認している。ちなみに、モニタースピーカーはB&Wの805シリーズで、ヘッドホンはシュ アSRH1540を使用した。

【プロフィール】
飛澤正人(トビサワ マサヒト) Dragon Ashなどの作品を手掛けている敏腕エンジニア。空間表現や奥行きの作り方に定評があり、時間軸に音を刻み込むようなミックスはアーティストから厚い信頼を得ている。近年は作・編曲家としても活動を展開し、藤本 健氏とのコラボ企画『DTMステーションEngineering』もスタートしている。


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