DTMの世界にイヤホン時代到来!

【エンジニア林 憲一氏がレビュー】音楽制作向きのイヤホンを徹底チェック

【エンジニア林 憲一氏がレビュー】音楽制作向きのイヤホンを徹底チェック

2017/08/15


イヤホン


 

街中や電車の中などで音楽を聴く際に便利なイヤホンですが、近年では音質や性能が大幅にアップしており、音に対しての正確な判断が要求されるプロの現場で使われているモデルも多数リリースされています。この特集では、レコーディングやミックス、音楽制作に向いている機種を厳選して、プロエンジニアの林 憲一さんにチェックしてもらいました。

取材:目黒真二 写真:小貝一夫
※本コンテンツは音楽雑誌「サウンド・デザイナー」(2017年8月号)より抜粋したものです。
詳しくは、http://www.sounddesigner.jp/をご覧ください。

 

イヤホンの基礎知識

形状
イヤホンの形状には大きく分けて「カナル型」と「インナーイヤー型」があります。カナル型は、イヤーピースを直接耳の穴に入れるタイプで、耳栓のような装着感を持ち、密閉性や遮音性に優れています。音漏れが少ないため、電車の中や静かな環境でも十分な音量感を楽しむことができ、ボーカルなどの録音時にも使用できます。

一方、インナーイヤー型のイヤホンは、ミュージックプレーヤーなどに付属しているタイプで、耳の穴の周りに引っかけるように装着します。軽い装着感が魅力ですが、遮音性は良くなく、音量を上げると音漏れが生じます。
なお、ハウジングに穴が空いている「開放型」と、穴が空いていない「密閉型」があり、前者は空気を通すので音に自然な広がりがあります。後者は音をダイレクトに聴くことができるうえに遮音性も高く、音質の確認などに最適です。

カナル型 イヤホン

カナル型

インナーイヤー型 イヤホン

インナーイヤー型

密閉型 イヤホン

開放型

開放型 イヤホン

密閉型


ドライバの種類
イヤホンの内部には音を鳴らす「ドライバ」というパーツが内蔵されています。タイプとしては、まず最も一般的で、昔からあるのが「ダイナミック型」です。片耳にドライバが1個ずつ搭載されており、低音再生能力に優れていてパワーがあるのが特徴です。
それに対して、最近ポピュラーになってきたのが「バランスドアーマチュア型」で、ダイナミック型よりもさらに高い出力が得られます。モデルによって搭載されているドライバの数は様々で、複数のドライバにそれぞれ周波数を割り振ることで、原音に忠実な再生を実現しています。音質は特に中高域の再生に優れており、レスポンスがいいのですが、その反面やや歪みやすく、低域の再生は得意としていません。

また、ダイナミック型とバランスドアーマチュア型のドライバを両方搭載し、それぞれの利点を融合させた「ハイブリッド型」のイヤホンも発売されています。

 
ダイナミック型            バランスドアーマチュア型
 
ダイナミック型

 

バランスドアーマチュア型

 

ダイナミック型は、電気信号を受けたコイルがダイアフラムを前後に振動させて音を鳴らす構造になっている。写真はオーディオテクニカのATH-E40

バランスドアーマチュア型は、「アーマチュア」というパーツでダイアフラムを振動させて音を作り出している。写真はオーディオテクニカのATH-E50


●​イヤーピースのサイズと材質
イヤーピースとは、イヤホンのノズルに装着するためのカバーのことです。サイズにより、音質が大きく左右されます。また、素材にはラバー、シリコン、スポンジ、低反発ウレタンなどがあり、それぞれ通気性や柔軟性、密着感が異なり、音質にも関係します。例えば、低反発のウレタン素材では密閉感とフィット感が高くなり、低音の再生率も高くなります。ですが、サイズが小さいと密着感が薄れて、低音が弱くなってしまいます。

最近はイヤーピースの専門メーカーもあるので、自分の耳にフィットするイヤーピースを探してみるといいでしょう。

イヤーピース

一般的にはサイズはS/M/Lがあり、標準の出荷時はMサイズが装着されているが、まずは音質を確認しながら、SとLを試そう

イヤーピース

左から、低反発ウレタン、ラバー、シリコン。イヤホンやミュージックプレーヤーの音質に合わせて変えて、カスタマイズするのもありだ


フィルターが交換できるモデルもある!
音の出口であるノズルの先端に付いているフィルターを交換できるモデルも発売されている。写真のAKG N40は、「BASS BOOST」、「REFERENCE SOUND」、「HI BOOST」という3種類のフィルターが付属していて、環境や再生ソースに合わせてイヤホンのキャラクターを変えることができるというユニークなモデルだ。

 

今回の試奏環境


林憲一

林 憲一氏

【試奏環境】
今回の試聴で使ったDAWソフトはアビッドPro Tools 12で、オーディオインターフェイスは同じくアビッドのHD Omniを使ってチェックをした。Pro Toolsで林氏がミックスを行なったプロジェクトを再生する以外に、そのファイルを2ミックスに書き出して、第4世代のiPod touthとスマートフォンのXperiaで再生してのチェックも行なっている。
なお、バランスドアーマチュア式のモデルは歪みやすいものもあるため、大音量ではなく、適度な音量で試聴した。

【プロフィール】
林 憲一(ハヤシ ケンイチ)  ビクタースタジオ在籍時に、10年以上に渡りサザンオールスターズのチーフエンジニアとして活動。フリー転向後も様々なアーティストの作品のレコーディングやミックスの他、THE BACK HORN、藍坊主、ジャパハリネットなどのプロデュースを手掛ける。近年ではmiwa、WEAVER、石崎ひゅーいなどの作品に携わっている。

サウンド・デザイナー2017年9月号


サウンドデザイナー

サウンド・デザイナー2017年9月号
8月9日(木)発売
¥864


【表紙巻頭】
UVERworld
新作『TYCOON』完成記念ロングインタビュー

【ノウハウ特集】
カリスマクリエイター大集合!
「アニソン作曲術」最前線
・独自の進化を遂げるアニメソングの魅力
・神前 暁×田中秀和対談/大石昌良/Tom-H@ck/Elements Garden
・エンジニアが明かすアニソンのレコーディング&ミックス
・ヒゲドライバー直伝! はじめてのアニソン作曲教室

録音や打ち込みの基本手順を紹介
アイディアを素早く曲に仕上げる方法

【機材特集】
マイクやエレアコでいい音で録るための必須ギア
コギ専用・録音アイテム10選

ボーカル録音&エレキライン録音で音質を徹底チェック
3万円以下で買える最新オーディオインターフェイス

【注目アーティスト】
indigo la End
a crowd of rebellion
OKAMOTO'S
□□□
Goodbye holiday
Special Favorite Music

この記事の画像一覧

(全14枚) 大きなサイズで見る。

試奏製品ラインナップ

オーディオフライ
AF1120
オープンプライス(¥72,000前後)

オーディオフライAF1120

オーディオテクニカ
ATH-E70

オープンプライス(¥48,000前後)

オーディオテクニカATH-E70

ドゥヌ
DK-3001

オープンプライス(¥53,800前後)

ドゥヌDK-3001

フィッシャー・アンプス
SYMPHONIE

¥74,800

フィッシャー・アンプスSYMPHONIE

ウェストン
UM1 J

オープンプライス(¥11,800前後)

ウェストンUM1 J

シュア
SE425

オープンプライス(¥28,800前後)

シュアSE425

 

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